緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

ある在宅医療の風景

2009年03月25日 | 医療
ある患者さんの奥様は、もう、お若くはありませんでした。
在宅での、老々介護の域です。

訪問看護師さんから、薬の管理をお願いするには、難しいです・・
下剤を毎晩患者さんに渡し忘れているようですと聞いていました。

便秘でした。
後、2週間くらいで、食事ができなくなるかもしれないというようなお腹でした。




ある時、訪問に出向きました。
奥様が言われました。

「下痢したので、お薬やめました」

トイレに間に合わず、下着の取り換えが大変だったようでした。
それを、下痢と表現されていました。
そして、どれが下剤がしっかりわかって、抜いているようでした。


薬を飲ませていただけなかったことを指摘するのではなく
今度は、できたことを認め、褒めるように私の方をスイッチしました。

その上で、次のように付け加えました。
1週間に1回下剤を渡すと、貯めて、一度に出そうとお腹は動くので、
一週間分一杯に出てしまいます。
奥様も大変でしょう。
だから、毎日少しずつだせるときっと、うまく行きますよ。


その時から、本当にキチンとお薬を渡して下さるようになりました。

その後の訪問時・・

「すごく硬い卵みたいお通じが、出てきて、びっくりしました。 
 なんだか、変じゃないですか?」

そう言われたので、
「やっと栓がはずれましたね。奥様のおかげですよ。
 出口をふさいでいたものが出たのですから、これで、もう心配ありません。
 下剤は少し減らしてやっていけると思いますよ」

「あら~卵うんじゃったんですか」

皆で、大笑いしました。

「他に、気がかりなことは、ありませんか」

「そうですねえ。痛いとか辛いとか言わなくなったのが 気がかりですねえ・・」

「いえいえ、眉間にしわがよっていなくて、 
 こんなに笑ってくださるのですから、大丈夫ですよ」



不安で一杯だった方が、こうして、大笑いしてくださると
本当に、よかったなあって、思います。
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2 コメント

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訪問診療 (レンコン)
2009-03-28 19:13:15
先生は訪問診療もしているんですね。少しでも家にいる時間を長くするためには、また在宅での看取りを希望されている方のためにも訪問診療は大切ですものね。私も外来にくる患者さんと話をした時に、私達がもっと患者さんのおうちへ出向いていけるシステムがあればいいなって思った時がありました。訪問看護を受けるほどではないけどちょっとした症状も我慢している時があって、でも病院にいくほどでもなくて、なんてことがあるみたいなんですよね。会話の中に笑いがあるっていいですよね。
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そうなんです。 (aruga)
2009-03-29 16:23:46
今の職場は民間なので、外勤ができるのです。
所属の大学病院からは訪問診療は体制として訪問診療はできないのですが、外の病院に週1回出向き、そこから、在宅医療にかかわらせて頂いています。
もともと緩和ケアは、アメリカの在宅ホスピスが学びの第一歩だったので、私の原点なのです。大学病院にはないこのひとときは、とても楽しいです!
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