緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

ご夫婦(1)

2014年02月09日 | 医療

とても、素敵で、優しくて、
ああ・・見習わなければ・・
と思う方がいらっしゃいます。

最近、話しの流れの中で、
その方のご家族に
障害を持った方が
いらっしゃることを知り、

ああ・・それで、こんなにも優しい方だったのか・・と腑に落ちました。

今まで、出会った方で、
強くて、優しくて、しなやかな方に
同じような方が何人かいらっしゃって、
そんな方々が決まってお話し下さるのが
「この人に育ててもらいましたから・・」

障害を持った方は、
回りの方をこんなにも
素敵に成長させてくれるものなのか・・と
思うことがありました。

結婚や育児も、
そこまでではないかもしれませんが、
同じようなことが言えるのかもしれません。

思うようにはならない子供達を
カッとして、手を挙げてしまいそうになることを
我慢し、辛抱しながら、長い間生活しているうちに、
出来きこそは、よくないですが、
少しずつ変えてもらったような気がします。


ふと思い出した患者さん。

2008年ごろ出会った患者さんでした。



一部再掲です。






とても素敵なご夫婦でした。
受診されるときは いつも一緒。

在宅と病院とでチームをつくり
診療体制ができていました。

治療医や在宅医が症状緩和ができる間は
任せていました。
徐々に難しくなってきたようで
再度私に依頼がありました。

イライラする。

高カルシウム血症と制吐剤の副作用と診断しました。
制吐剤の副作用はアカシジアでした。


高カルシウムから来る便秘にはずっと悩まされていました。
カルシウムを下げ

制吐剤を中止し
スタビライザー(心の安定)と神経障害性疼痛の両面に
クロナゼパムを処方し
緩下剤で便秘のコントロールを行いました。


ちなみに、カルシウム血症の診断には、
アルブミン補正が必要です。

(4-血清アルブミン値)+血清カルシウム値
10.5以上で注意が必要です。

低アルブミン血症がある患者さんは、
採血データで記載されている数字は、
正常でも、この補正をしてみると
実は、高カルシウム血症だったということもあります。

臨床実習の学生さん達には、
よく、この補正値のことは質問します。

そんなこと、当たり前の知識~と思う方も
いらっしゃるかもしれません。
が・・・外勤先で受ける某大学病院からの患者さん、
見落とされていたことがあります。





そんなこんなで、

患者さん、
とても、落ち着かれました。

イライラ? 大丈夫ですよ
という言葉を聞いたときは、ホッとしました。

症状は外来で、毎週微調整をしていきました。

疼痛が強くなりそうな時は、
事前に、オピオイド増量や補助薬の併用開始など
予測して対処していきましたので、
1~3/10位の疼痛以上にはなることはありませんでした。


しかしながら、症状がとれても、
病状は進みましたので、衰弱され、

次第に、最期の時が近づいてきました。



通院はこの先は難しくなりそうですね。
ご自宅の近くの在宅の先生を中心としていきましょう。

検査は?

治療に結びつく検査が必要になったときは
いつでも、一緒に考えますよ・・

わかりました。


在宅の医師に、直接外来から電話をしました。

今日中に在宅酸素を入れる必要があること
看護を含めて連日訪問が必要になること
その他、色々・・・
DNARであること、点滴のこと

それまで、話し合ってきたことを
在宅医に、
患者さんと奥様の前で、伝えました。

私が伝えていることが間違いないことを確認したかったこと、
これからお願いしようとしている在宅医に何が伝わっているか
知ってほしかったからでした。

その日の外来が私がお目にかかった最後の日でした。
(つづきます)


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