プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

福田首相の「温暖化」講演   世界を「先導」する…?!

2008-01-27 18:49:42 | 政治経済
地球温暖化問題で世界を「先導」する―こう見得を切ってダボス会議に臨んだ福田首相。ブッシュ米政権や日本の大企業、新興主要排出国、それぞれに目配りは必要だが、自分はどう考えるかの理念がない。皆の顔色をうかがうだけの小心な「足して二で割る」式の提案(「しんぶん赤旗」1月27日)をいくら積み重ねても、温暖化防止で世界を「先導」することは不可能だ。「福田環境構想―第1打席は出塁できた」という朝日社説の評価は(他のメディアも総じて)おお甘ではないか。

福田首相は26日昼(日本時間同日夜)、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席し、7月の北海道洞爺湖サミットの議長として特別講演した。13年以降の温室効果ガス削減の国際的枠組み(ポスト京都議定書)づくりで、新たな「国別総量目標」を掲げると述べた。しかし、今回も国際的に強く期待されている2020年までの中期目標に関しては、世界全体としての目標設定の必要に言及せず、日本の目標数値も示さなかった(「しんぶん赤旗」同上)。

いま急いで求められているのは、国際世論となりつつある「50年までに世界の温室効果ガス排出を半減」という目標を達成するための先進各国の具体的な中期目標なのだ昨年12月の気候変動枠組み条約第13回締約国会議(COP13)では、「先進国が20年までに90年比で25―40%削減する」目標が提起された。しかし日本は米国とともにこれに反対し、この数値目標は決定文書に盛り込まれまれなかった。
世界の科学者を結集したIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が昨年発表した報告は、温暖化の破局的影響を回避するには、▽工業化以前からの温度上昇を二度以内に抑える▽そのため先進国全体の20年までの排出量を1990年比で10―40%削減する―などの必要があることを確認した。気温上昇を二度以内に抑えるには、大幅な総量での削減数値目標を掲げ、そこから逆算方式で中期目標を設定し、その実現にあらゆる手段を尽くすべきだというのが欧州連合(EU)の主張であり、世界の流れである(「しんぶん赤旗」同上)。

かわりに福田首相は何を提案したのか。
福田首相がダボス会議で提起したのは、エネルギー効率などをセクター別に割り出し、技術開発に基づき削減可能量を積み上げて目標を設定する方式である。これは、産業界の「自主計画」任せにし、総量削減目標の達成に責任を負わない日本国内でのやり方を「世界標準」にしようとするものである。それでは、世界全体と各国で総量規制の数値目標を義務化する京都議定書の方式の放棄につながらざるをえない(「しんぶん赤旗」同上)。

日本は、京都議定書により、排出量を6%削減する義務を負っている。ところが京都議定書の国ごとの数値目標方式には、財界が強く反対している。米国は条約から脱退してしまった。「自主計画」積み上げ方式(分野ごとに削減可能な量を積み上げる方式)から離脱できない日本は、京都議定書の6%削減さえ達成のめどが立っていない。サミット議長国のリーダーシップ以前の問題である。首相は、公約の実現へ官邸主導で国内調整に全力をあげるべきだ(「読売」社説1月27日付)。

地球温暖化対策をめぐる国際会議を「読売」のように一種の駆引きと考える立場があることは確かである。「地球温暖化対策は、各国の産業・エネルギー政策に直結する。その交渉は、先進国や新興国、途上国がそれぞれ国益をかけるパワーゲームの場でもある」(「読売」同上)。
地球環境保護の問題を人類共通の問題としてどれだけ真剣に認識し、損得抜きにそれぞれ自国の役割を最大限果たそうと努力する方向に企業活動、国民運動をまとめることができるかは、リーダーの資質、文化水準をはかる尺度である。ダボス会議でデ・ブア枠組み条約事務局長は、各国政府は「小さな積み上げ的措置」を捨て、30年までに温室効果ガス排出ゼロを目指すと表明したノルウェーのように「大胆になれ」と訴えた。大胆な決断なしに、ブッシュ米政権や日本の大企業の顔色だけをうかがう姑息な福田首相は、地球温暖化問題で世界を「先導」するなどと大法螺を吹かないことだ。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。