プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

橋下主義(ハシズム=ファッシズム)をどう考えるか   民主主義と独裁(その1)

2011-11-07 20:33:01 | 政治経済

大阪では、橋下知事の辞職に伴い1127日、ダブル選挙(府知事・市長同時選挙)が行われる。その狙いは言うまでもなく、橋下・維新の会が大阪府に続いて大阪市の乗っ取りをめざすものである。大阪府知事に松井一郎・維新の会幹事長を当選させ、橋下の傀儡政権をつくれば議会はすでに維新の会が過半数を占めているので、府は完全に橋下支配下に入る。自らは大阪市長となり、市議会をリコールしたうえで、現在は少し足りない維新の会の議席数を過半数にすることができれば、大阪市も完全に橋下支配下に入る。橋下の氏素性については最近、一部週刊誌が明らかにしているが、要するに彼は、大阪府も大阪市も橋下独裁のもとに置きたいという、単純な動機なのである。橋下知事は早くも9月12日の維新の会合で、自らが提唱する「大阪都構想」などに反対する大阪市幹部職員を降格させると脅しをかけ、その上で、大阪都構想実現に参画させる大阪市の幹部候補者を10月初旬をめどにリストアップするよう指示したという。「職員基本条例案」では相対評価最下位5%の者は減給、免職の脅迫を受けることになる。 

このような橋下独裁体制(ハシズム)確立の動きに対抗して、大阪市長選挙に立候補を予定していた渡司(わたし)考一氏(59)=日本共産党推薦・前大阪市議は、橋下前知事によるファッショ的な独裁政治を許さないために、立候補を辞退すると表明。「橋下氏の独裁政治や教育基本条例案の成立を阻止するため、現時点での最善の判断」と、不出馬の理由を説明し、「橋下氏は今のやり方を全国に広げると言っている。ファシズムの台頭を大阪で止めるには、(平松氏への)支援を表明した方が一番すっきりする」と述べた。かたや、平松大阪市長も「もともと、あらゆる人たちからの応援をもらわないと橋下さん相手には勝てる見込みはないと思っていたので、もっと
もっと多くの人に大阪市をつぶすとどういうことになるのか訴えていきたい。大阪維新の会は政党相乗り批判をしているが、私の場合は多くの大阪市民を守るという戦いなので、どんな批判をされようと『市民を守る戦いのどこが悪いんですか』という覚悟は決めています」と述べた。さらに、平松市長を支援する11月3日の集会には、大阪府知事選に出馬予定の同府池田市の倉田薫市長が飛び入り参加し共闘をアピールした。まさに、反ハシズム統一戦線の様相である。 

橋下氏の政策は、政治家としての思想や経験に基づいて練られたというよりも、財界や経営コンサルタントなどのアイデアをそのときどき借りてくるか、あるいはその場での思いつきや気分で吹聴する類のものが多い。但し、彼は、他人の書いた台本は誰よりもうまく読み、かつ上手に喋ることができる。おまけにその場その場の気分に合わせて話に尾ひれ背びれをつけ、気の利いたアドリブを連発する。これはお笑い芸人やテレビタレントにとっては欠くこと出来ない才能だ。橋下氏がその才覚に長けていることは確かである。
「大阪都」構想について橋下・維新の会は、「究極の成長戦略・景気対策」と言い、そのためにすることとは、空港、港湾、高速道路、鉄道などのインフラ整備、高度医療施設など呼び込み型の大型開発である。そして、挙句に言うことは、「(大阪のような)こんな猥雑(わいざつ)な街、いやらしい街はない。ここにカジノを持ってきて、どんどんバクチ打ちを集めたらいい。風俗街やホテル街、全部引き受ける」である。呼び込み型の大型開発をやろうと思えば莫大な財源がいる。だから、大阪市、堺市を廃止して、大阪市や堺市の財源・資産・権限を奪い取り、集権的な大阪都を創るというわけだ。

 

橋下知事が2008年、知事選に立候補するときの最大の公約は大阪経済の活性化と財政赤字削減であった。以来、3年8ヶ月、大阪経済は活性化したか。福祉、教育、文化施設の切捨てや公務員の削減・賃下げは実行したが、財政赤字の削減どころか、この3年間に物凄い勢いで、大阪の公債(府債すなわち負債)は増えた。府民の中には、橋下さんは予算を黒字化したと誤解している人もいるようだが、借金で歳入を増やせば、予算はいくらでも黒字になる。経済を活性化して、税収を増やして初めて財政を健全化したと言えるのだ。そもそも、橋下府政(平成20年~)において、大阪府の借金は、平成19年度は計6692億円だった府債発行額が、平成22年度は計8235億円と1500億円以上も増え、府債残高は2500億円も増えて6兆円を突破したのだ。この財政赤字拡大の原因はなにかというと、弱者にしわ寄せをするだけで、肝心の大阪経済の活性化が全くできなかったということだ。

橋下流のインチキは、少し冷静に調べてみればすぐわかる。しかし、橋下は強気である。橋下の強気な、強引ともいえる府政運営を支えてきたのは、彼に対する府民の圧倒的な支持だという事実がある。だから、彼にとっては、「民意」は「大阪維新の会」を圧勝させ一気に過半数の議席を与えたのだから、自分の価値判断が大多数の府民の価値判断なのだ。橋下に、自分の考えこそ民意そのものだと開き直られても、ともかく、それが、「民主主義」の結果である。1933年に、ドイツでヒトラーが首相の座についたとき、彼は、革命やクーデターといった暴力的手段で政権を奪い取ったのではなかった。ヒトラーが国民の支持を集め、その率いるナチス党(国家社会主義ドイツ労働者党)が選挙で勝利して、彼が首相に任命されたのであった。つまり、これも「民主主義」の結果だったのである。私たちは、反ハシズム統一戦線を組むという限り、“民主主義が民主主義を滅ぼす(浦部法穂・神戸大名誉教授)” という「民主主義と独裁」の問題の解明を避けて通れない。

<続く>


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。