プロメテウスの政治経済コラム

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G20首脳会議閉幕 規制強化と改革は当然だが、なぜあんなバカなことをしたかの解決にはならない

2008-11-17 20:55:10 | 政治経済
日米欧に新興国を加えた主要二十カ国・地域(G20)がワシントンで開いた金融サミット(金融市場と世界経済に関する首脳会議)は15日、「宣言」と、当面(来年3月31日まで)および中期的に実行する「行動計画」を採択し、閉幕した。金融規制の強化、新興国の声を反映する国際金融体制改革の方向性などで合意した。アメリカ発の金融危機が途上国を含め世界を混乱に巻き込んだのだから当然の方向である。それにしても、アメリカの金融業界は、なぜあんなバカなことをしたのか。われわれは、今回の金融危機を第二次大戦後の米国経済の蓄積構造の矛盾=金融資本主義的発展の歴史的帰結と考えるのが妥当である。

第二次世界大戦後の米国経済の特徴は、軍産複合体と大企業の多国籍企業的発展であった。
国内製造業は空洞化し、つねになんらかの景気支持策または戦争による効果がなければ不況である。GMやフォードなどの低落ぶりにみられるように、金融バブルを取り除くと、アメリカ経済の本来の姿は確実に衰退傾向のなかにある。このような中で、金融を主力産業とする「金融立国」が試みられた。日経」08年7月29日付によると、国内総生産(GDP)に占める金融業及びそれに付随する事業サービスの比率は、80年から07年にかけて11・6%から20・2%へと拡大した。他方、製造業の比率は、この間、20・0%から11・7%へと低落した(工藤晃の経済教室「世界金融危機を考える」「しんぶん赤旗」11月14日)
連邦準備制度の金融政策と銀行、投資銀行などの金融テクニックによる住宅バブルは、一定期間、景気支持策として大いに貢献した 金融サミットで、欧州諸国がより強い規制を打ち出したのに対し、米国は「自由市場原理」を掲げて抵抗したのは、実体経済の低迷を戦争か金融資本のテクニックでカバーする以外にないアメリカ資本主義の蓄積構造の矛盾を反映したものだ。「カジノ資本主義」の陰の立役者であるヘッジファンドに対する規制について、ファンドが「私的」との理由であくまで抵抗したのもそのためである。規制を強化しても国際金融体制を改革してもこの矛盾は解決されない
かくして、ブッシュ大統領が新自由主義経済続行の発言を繰り返し、漢字もろくに読めない日本の麻生首相が「ドルの基軸通貨としての地位の維持」を新興国との首脳会談で主張し、米を側面援助するいつもの構図が繰り返された

資本主義のもとでの金融(信用)制度は、現実資本の蓄積と再生産過程を基礎とするのが本来の姿である。貸付期間の満期になるまで、銀行は生産的資本の循環に束縛される。これが銀行資本と産業資本との相互依存関係であり、それ自体が銀行信用の節度である。ところが、銀行が本来の業務パターンを捨てて、債権証券化パターンへ移行するとどうなるか。この節度が失われ、証券化の利益を増やすために、貸し付けを増やしていく。怪しげな証券、ハイ・イーグル債(低格付け高利回り債)の需要に応え、投機のための銀行信用を増やしていくことになる。そして、ローンを買い取った巨大複合金融機関は、それを証券化、再々証券化して、最終投資家に売る。形は利子生み証券でももはや直接的には、資本主義的生産の担い手である現実資本に対する請求権ではなくなる。こうして、信用の世界に構築されたバーチャルカンパニー(架空会社)を発行体とする証券が次々と肥大化し、世界にばらまかれた。なぜ、こんなことになったのか。実物経済が低迷するもとでは、金融資本も低迷するほかなかったからである

戦後の通貨・金融・貿易の国際経済体制は、アメリカの覇権のもとで、IMF、世界銀行,GATT(WTOの前身)をその軸としたいわゆるブレトンウッズ体制として構築された。IMFや世界銀行は大国中心で途上国の発言権を保障せず(出資比率による発言権)、米国流の規制緩和と金融自由化を各国に押し付けてきた今回の米国発の金融危機はブレトンウッズ体制の改革を不可欠なものとしている。途上国が今後大きな発言権を持つことが確認されたことは、これら国際金融機関の改革においても先進国だけの意向を押し付けることが困難となっているということだ。

今後世界的な金融規制の強化が進めば、アメリカは、世界経済における需要の中心を形づくるほどの繁栄を取り戻すことは不可能だろう。これからは一国で世界経済全体を牽引することは不可能である。ドル支配体制もユーロ圏、中東統一通貨圏、人民元、円圏などに多元化することになるのであろう。アメリカ経済依存型の日本は、産業・貿易・為替政策を全面的に転換することが必要なのだ。

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