プロメテウスの政治経済コラム

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民主党が仕掛けた党首会談   政権取りを前にしての民主党の支離滅裂ぶりはなぜか

2008-11-19 20:31:02 | 政治経済
民主党側の申し入れで民主党の小沢代表と麻生首相とが17日夜、首相官邸で約30分間会談した。小沢代表は政府の追加経済対策を裏付ける第二次補正予算案を今国会に提出するよう求め、そうでなければ、自民、民主で18日に行うことを合意していた参院外交防衛委員会の新テロ特措法延長案の採決に応じないと表明した。結局、18日には、外交防衛委員会のほか、日程が組まれていた総務、財政金融、厚生労働、経済産業、国土交通の各委員会すべての審議がストップした。空気も読めず、漢字も読めないといわれている麻生首相だが、民主党の支離滅裂ぶりも相当なものだ。

民主党は19日、1日審議を止めただけで、国会に復帰したようだが、民主、社民、国民新の野党3党幹事長は同日、東京都内で会談し、政府に対し、30日の会期末までに2次補正案を提出するよう求め、提出されるまではインド洋での給油活動を延長する補給支援特措法改正案の採決を留保する方針で一致したという(「朝日」11月19日13時43分)。
自衛隊のインド洋派兵を延長するための新テロ特措法改定案は、国際貢献でもなんでもなく、日本のアフガンや中東世界での立場を孤立化させ、本当にアフガン国民を支援しているペシャワール会や国際協力機構(JICA)の活動を困難に陥れるものである。それにしても、2次補正予算案の提出とどんな関係があるというのだろうか。

ペシャワール会の中村哲現地代表は、11月5日の参院外交防衛委員会の冒頭陳述で、アフガンでの治安が最悪の事態になっていると述べ、「『対テロ戦争』という名で行われている外国軍の空爆が治安悪化に拍車をかけている」と強調。もともとアフガン人は親日的だったのに、「米国の軍事活動に協力していることが知れるにつれて、身辺に危険を感じるようになった」と述べ、海自派兵が人道支援の妨げになっている実情を語った。JICAの力石寿郎広報室長も「復興支援」を口実にしたアフガン本土への自衛隊派兵が盛り込まれている民主党案について「民生支援を中心にやってきた日本までが、ついに軍隊まで送ってきたのかというとらえ方を(アフガン人に)されてしまう恐れは否めない」と述べた。

次期総選挙で政権交代を狙う民主党は、もともと新テロ法の延長を自公政権にやらせ、アメリカからの圧力を当面回避する腹であった(10月9日付ブログ参照)。だから、15日に米国ワシントンで開かれたG20首脳会議までに改定案を成立させるために、13日の委員会採決、14日の参院本会議での採決・否決後の衆院本会議での再議決という政府・与党側のスケジュールに「総理出席、テレビ入りでの質疑が実現すれば、採決の前提が整う」などと協力する予定であった。この予定を狂わせたのが、田母神「論文」問題であった。自衛隊の根幹にかかわる問題であり、その自衛隊をひきつづき派兵することの是非を徹底して議論せよという国民世論を無視できなくなったのである。
今度は、政府が08年度第2次補正予算案を提出するまで当面採決しないという。首相が訪米中に、解散・総選挙を来春以降に先送りする考えを示唆したことに小沢氏が「完全に頭に血が上った」(幹部)だかららしい。日本と世界の政治に重大な意味をもつ法案をとにかく補正予算案を提出させる駆引きに使う。この党には、政策を党内で民主的に討議する習慣がないのだろうか

政権取りを前にしてのこの民主党の支離滅裂ぶりはなぜなのか。昨年の参院選で「対決」姿勢をとってみたものの、アメリカと財界の圧力が強まれば、その姿勢を維持できず、本来の保守政党に戻ってしまったようだ。現在の日本の政治は、自公政権への対抗軸を貫けば、保守政治の枠を超えざるを得なくなる。国民の声を代弁する共産党が存在するからである。だから、支配階級はマスコミも動員して、国民の関心が「構造改革」や自衛隊の海外派兵という問題の根本に向かうことを避けながら「政権交代によって日本の政治が変わる」という方向に誘導しようと必死なのだ
民主党の支離滅裂は、この党と自民党の根本政策には違いがないこと、だから政府を追いつめようとすれば、もっぱら政局の駆引きに頼るほかないことを端無くも証明しているのだ

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