プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

小泉路線―大本のところで破綻が進む

2006-01-08 18:50:27 | 政治経済
小泉政権は、数の面では威勢がいいように見えますが、大本のところで、基盤が崩れはじめています。日米両政府が昨年10月末に合意した在日米軍再編計画に反対している自治体の数が、首長の反対表明と議会の意見書・決議をあわせて昨年末現在で103にのぼることが「赤旗」の調査で分かりました(同紙06.1.8付)。政府は昨年、再編計画の対象となる米軍・自衛隊基地に隣接する55自治体に説明して廻りましたが、賛成してくれたのは、かの石原慎太郎都知事一人だけでした。小泉路線は従来の自民党支持基盤を確実に壊しはじめています。
靖国問題では小泉首相をまともに扱うアジア諸国はどこもありません。頼みのアメリカすら懸念を表明しています。1月1日付毎日新聞は、「米政権『靖国』に懸念 日本に見直し要求」という記事を一面に大きく載せました。元駐米大使、栗山尚一氏からも「政府の責任ある立場にある者が靖国神社に参拝することは、(靖国神社の)『大東亜戦争』肯定の歴史観を共有しているとの印象を与える結果となりかねないので、控えるべきである」と批判されるありさまです。
小泉内閣がつき随うアメリカは、いまイラク侵略戦争で、先のみえない泥沼に落ち込み、国内外からの批判が強まり、どう打開するかの展望を見いだせないでいます。アメリカの覇権主義は、東アジアでも、ラテンアメリカでも足場を失いつつあります。どちらでも従来のアメリカのやり方が通用しなくなっているのが、いまの世界の状況です。こういう世界の中にあって、突出してアメリカいいなりの政治をつづけ、その覇権主義の足場となっている小泉政権は、世界で明らかに孤立しつつあります。
小泉首相がかろうじて好き勝手をやれているのは、国内経済問題です。日本の大企業支配の強さとあまり自分の頭で考えないバカな国民に支えられて昨年は、郵政民営化法の強行など、小泉内閣の「構造改革」の名による規制緩和万能論、市場原理主義、弱肉強食の経済路線──「新自由主義」の経済路線が、荒れ狂いました。しかし、この経済路線もほころびが見え始めました。昨年四月におこったJR西日本の大事故は、民営化によってつくられたもうけ最優先、安全後まわしの体質に、事故の根本原因があることを、示すものでした。11月に明るみにでた耐震強度偽装事件の根源にも、1998年の建築基準法改悪によって建築確認を民間まかせにした「官から民へ」の路線がありました。小泉応援の読売新聞まで「『小さな政府』『官から民へ』と、時代の旗が振られている」「だが、『官から民へ』で、規制や規律が緩み、『安心』や『安全』が手抜きになってはならない」(12月24日社説)と言わざるを得なくなっています。小泉「構造改革」路線が、貧困と社会的格差の広がりをつくり、国民のくらしと安全を奪うものであることが、事実をつうじて明らかになれば、「改革」の幻想にとらわれた国民も、その本質に対する批判を強めざるを得なくなるでしょう。
小泉路線の三つの異常―①過去の侵略戦争を正当化する異常②アメリカいいなり政治の異常②極端な大企業中心主義の異常は、いま深部において破綻しはじめています。憲法問題では、自民・民主の両党が、憲法改定の具体案の策定を競いあうという状況がうまれ、両党の狙いが共通して、憲法九条を改定し「海外で戦争をする国」づくりをめざすものであることが明りょうになりました。反動勢力は、国会では確かに圧倒的多数です。しかし、最終的に国の進路を決めるのは、国民自身です。一昨年六月に発足した「九条の会」は、昨年一年間で大きな成長をとげ、全国の地域、職場、学園、各界でつくられた草の根での「九条の会」は、一年間で約1千から4千へと、4倍になりました。憲法の完全実施を目指す国民運動は小泉路線の三つの異常と真っ向から対立します。今年を、新しい政治の流れを広げる画期的な発展の年にしていこうではありませんか。


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