プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

米国産牛肉輸入再開 BSE検査をしない米国とは折り合えない

2006-05-30 13:57:29 | 政治経済
6月下旬の日米首脳会談を前にして小泉政権は、米国産牛肉輸入再開策動を再び強め始めました。しかし、もともとBSE感染牛は食卓に乗せないという考えのない米国と折り合うことには無理があります。

BSE(牛海綿状脳症)の病原体が蓄積しやすい特定危険部位の脊柱(せきちゅう)の混入をめぐり、今年1月20日に、米国産牛肉の輸入が停止されてから4カ月余がたちました。日本側は脊柱混入は約束違反だと騒ぎ立てていますが、米側は食の安全に関係ないと涼しい顔です。「月齢30か月未満」は無条件に安全とみなす米国の基準では危険部位を取り除くなどまったく必要ありません。問題の牛の月齢は4・5月でした。

BSE感染牛を食卓に乗せないという考えのない米国では、出荷前に食肉用牛のBSE検査はしません。BSE感染牛は絶対に食卓に乗せてはならないと考え、出荷前にBSE全頭検査をする日本と折り合うはずがありません。
BSE検査をしない米国産牛肉をどうやって輸入できるようにするか。そこで日本の官僚が考えたのは、「月齢20か月未満」は検査がなくてもまず大丈夫だろう。それに加えてブリオン感染の危険度が大きい脳、脊髄、眼球等の特定危険部位を除去するという条件を付けようということになりました。
さらに日本国内でも公式には「月齢20か月未満」は全頭検査からはずし、ダブルスタンダードの批判をかわそうとしたのです(実態としては全都道府県が国の予算で全頭検査を続けています)。

アメリカのBSE安全基準は米畜産業界のコスト計算と危険発生確率との兼ね合いで決められています。米政府はアメリカ国民ではなく、畜産業界の方を向いています。イラクで若者を何人も死なせる国です。交通事故より低いと考えられるBSE感染牛の発見のために全頭検査のコストをかけるのは馬鹿馬鹿しいというわけです。
そこで「月齢30か月未満」は無条件に安全、月齢がそれ以上の牛はBSEに感染していようがいまいが、特定危険部位を除去すればいいでしょうという米国基準ができました

米政府が真剣にBSE牛を食卓に乗せてはならないという気がないので業界も杜撰になります。月齢30か月以上の特定危険部位(SRM)除去という米国基準について、2004年1月から05年5月までの約1年半で合計1036件もの手続き違反が見つかったと米農務省食品安全検査局は平気で発表しています。SRMの除去によって全頭検査をしなくても牛肉の安全性が確保されると主張しながらこの状況です。

米国基準がグローバル基準だと考える米国民と、全頭検査や特定危険部位の除去、飼料規制など、食の安全に遺漏があってはならないと考える日本国民と折り合うことは不可能です。小泉首相の政治詐術によって、輸入再開をしても早晩、破綻することは目に見えています。危険を承知で米国産牛を食する人は「自己責任」を覚悟しなければなりません



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