プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

長崎平和推進協会 被爆体験講話に自主規制要求

2006-05-29 17:55:07 | 政治経済
憲法九条や環境・人権、イラク問題など「政治的問題についての発言は慎んでほしい」。長崎市の外郭団体「平和推進協会」(推進協)が同協会に所属する被爆の「語り部」に出したこんな要請に、被爆者や市民から戸惑いと怒りが広がっています。マスコミにも広く見られる政府批判の自主規制。日本がアメリカとともに海外で戦争する日が政府によって着々と準備されつつあるいま、戦争が生みだした最も悲惨な原爆被害を語ることから「政治をはずせ」という自主規制要求はきわめて重大です。

事の発端は、今年1月20日、被爆継承部会の総会で「政治的な発言は自粛を」との文書が協会事務局から配布されたことです。総会の配布資料では「政治的問題」として①自衛隊のイラク派遣、②憲法(9条等)改正、③天皇の戦争責任、④有事法制、⑤原子力発電、⑥歴史教育、靖国神社、⑦環境、人権などの問題、⑧一般に不確定な内容の問題(劣化ウラン弾)の8項目を挙げ、証言活動のなかで言及しないように自主規制を要請。実質上の「言論統制」を行おうとするものです。

長崎平和推進協会は、行政と市民が一体となって核兵器廃絶運動を進めようと1983年に設立。継承部会に登録している協会会員の被爆体験講話は年間千件前後に上ります。長崎で、推進協や被爆者団体に所属・登録しているいわゆる「語り部」は約60人ほどいます。推進協所属の「語り部」(30数人)は、市内外の小中学生への被爆講話を担当し、推進協全体は、被爆講話のほか平和学習、講演会などで、平和意識の高揚を図るために活動しています。

協会の自主規制要求を「語り部」はどう受けとめているか、「赤旗」田中康記者がレポートしています(「赤旗」06.5.29)
羽田麗子さん(70)は推進協には入っていませんが、教職を辞してから十年近く「語り部」活動を続けています。小学三年のとき、爆心地から二・六キロの自宅玄関先で被爆し、爆風で家の奥まで吹き飛ばされました。
この十八日も、修学旅行生を前に、「爆心地付近から背中いっぱいガラスを背負って帰ってきた近所のお兄ちゃん。全身やけどでどこに目があり耳があるのか分からないほど膨れ上がったおばちゃん。翌日二人の姿はもうありません」と体験を語りました。
被爆前の町並みと被爆後の写真を見せ、「すべて破壊されまともな建物はありませんね。あなたの家がここにあったら…想像できますか」と問いかけます。続けて「イラクではいまも戦争が続き子どもたちがたくさん犠牲になっています。劣化ウラン弾も使われています。原爆はいまも世界に三万発も残されています」。

推進協が自主規制の対象とした憲法やイラクの問題も、話の流れのなかで自然に出てきます。

語り部六百回を超した羽田さん。悲劇を二度と繰り返させないために、どう伝えたらいいのか。工夫と苦心の連続です。「子どもたちは正直です。『原爆はこんなにひどかった』と語るだけでは、『かわいそう』『涙が出た』『そのときに生きていなくてよかった』という感想になるんです」と自らの経験を振り返ります。そしていつも考えます。「どう語れば子どもたちが自分のこととして、いまの現実の問題として考えてくれるだろうか」と。
「言論統制」文書問題についても、「憲法九条までが慎むべき項目と知り、ビックリです。核兵器も戦争もない世界をつくるために、自ら体験してきたことや思っていることを言うなという『平和推進』って何だろうと思ってしまいます」。

教育基本法「改正」法案、改憲国民投票法案が国会で審議中です。憲法9条改悪の外堀が確実に埋められつつあります


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