プロメテウスの政治経済コラム

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NHK台湾番組  NHKに対する左右の批判とその違い  台湾統治の真実を学ぼう

2009-07-08 20:39:54 | 政治経済
メディア研究者やジャーナリスト、市民団体でつくる「開かれたNHKをめざす全国連絡会」(世話人=松田浩・元立命館大教授ら)は7月7日、NHK番組が攻撃を受けている問題で、NHKの福地茂雄会長や経営委員会などに対し、激励のメッセージと「圧力」に毅然と対処するよう求める要望書を提出した(「しんぶん赤旗」2009年7月8日)。
日頃は、NHK番組になにかと手厳しい問題提起と批判をする市民団体であるが、今回の森喜朗、安倍晋三両元首相や中川昭一前財務・金融相らと右派勢力動員によるNHK攻撃は、一般的な番組批判ではなくサンケイ「意見広告」に見られるように特定の政治目的をもった「威嚇的な動き」として、NHK擁護に立ち上がった。権力をもつ者が、NHKディレクターを「中共の息がかかっている」と慢罵したり、番組関係者の辞任を要求するのは、もはや尋常な批判でない。
連絡会の世話人の一人、松田浩さん(メディア研究者)は提出後に開いた記者会見で「今回のNHK攻撃の構図は、2001年のETV番組改変よりはるかに大掛かりになっている。NHKだけの問題ではなく、日本の言論活動そのものへの攻撃だと考えてもらいたい」と語った(「しんぶん赤旗」同上)。

日本の台湾統治問題を扱ったNHKスペシャル「シリーズJAPANデビュー第1回『アジアの“一等国”』」(4月5日放送)に対し、「皇国史観」の危機と感じた右翼勢力が、大量動員され、NHK攻撃に決起した。安倍、中川ら自民党の政治家は、2001年のETV番組改変事件に関する放送倫理・番組向上機構(BPO)の報告書を受けて、放送前の番組を国会議員に事前説明することは「今後は一切しない」と態度表明したNHK側に危機感を感じている。台湾番組を利用した「公共放送のあり方について考える議員の会」の結成は、今後も政治家がNHKに「政治介入」を続けるという意思表明である

NHKは、視聴者の自主的な契約と受信料で成り立っているという意味では、一種の「公の社団」である。そして視聴者は受信料を支払って、この公の社団に参加する社員的性格をもつものと考えられる。しかし、これまでのNHKは事業の費用を負担する視聴者の事業への参加・関与をまったく認めず、経営委員の任命や予算承認権をもつ国会の多数党=政府の方ばかりを向いてきた。「みなさまのNHK」は、単なる建前で、視聴者が持つ参加と発言の権利は、まったく顧みられてこなかった。これまでNHKの番組・報道が問題になる場合は、つねに政府・自民党の政治介入ばかりであった。言論・報道機関であるNHK幹部が、与党の有力政治家に事前に特定番組について説明に赴くというような世界の非常識が罷り通っていたのだ。

NHKという“公の社団”に参加する社員=視聴者には、当然右翼もいれば左翼もいる。NHK番組の評価について意見が分かれることもあるだろう。しかし、左翼の批判と右翼の批判とには決定的な違いがある
NHKを「われわれのNHK」、市民的公共放送として再生させ、育てていこうとする左翼に対して、ただ自己の偏狭なナショナリズムの主張や支配層に都合のよい「国益」を振りかざして権力を使ってでもNHKを従属させようとするのが右翼の批判である。NHKがこれまで、視聴者・国民と正面から向き合うのではなく、権力と距離を置くべき公共放送の理念を投げ捨て、政府・自民党への政治工作や裏取引で、その地位や権益を確保してきた最大の弱点が、右翼側からの批判に乗じられる隙を与えることになっているのだ

今回の問題は日本による台湾統治の評価が係わっており、ただイデオロギー的批判の応酬に終始するのではなく、こうした問題の背景について私たち自身が理解を深めるとともに、NHK番組が伝えようとしたことを多くの視聴者に広げる努力をすることが必要だNHK番組の評価について意見が分かれる場合、いずれが妥当かをきめるのは、事実にもとづく真理であるからである。
1.「日台」戦争と呼ぶのは適切か?
日清戦争後、日本が台湾を統治した時期、「台湾」という国はなかった、というのが批判者の言い分である。しかし、現在の台湾という地域に居住した人々が日本の統治時代にどのような仕打ちを受けたかが問題であって、名称の国か地域かは、直接の本質的な問題でない。
2.日台「戦争」と呼ぶのは適切か?
台湾国内での内乱(北部山岳地帯のいわゆる高砂族の)を日本が鎮圧したのであって、国と国との戦争、侵略戦争ではないというと主張するものである。台湾総督府の樺島総督が台湾に派遣された文武諸官吏を「外征従軍者」とするよう伊藤首相に要請し、これを受けた本国政府は閣議決定で台湾における戦闘を「外征」すなわち、対外戦争として扱っていた。
3.日本の台湾統治には産業振興や教育水準向上の面で積極的に評価すべき点があったのではないか?
これもよく持ち出される議論である。「植民地に善政なし」が古今東西の真理なのだ。

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