プロメテウスの政治経済コラム

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ホンジュラス・クーデター コスタリカ大統領仲介へ 世界の変化の流れを読み誤ったクーデター派

2009-07-09 21:13:12 | 政治経済
6月28日、中米のホンジュラスでクーデターが起こり、軍部がセラヤ大統領を国外追放した。注目されたのは米政権の態度であった。中南米の民主的な変革の動きを軍部のクーデター支援などで押しつぶすのが、歴代米政権のお家芸であったからである。対米自立と新自由主義の克服を目指して相互協力を強める中南米諸国は、世界の構造変化を象徴する流れの一翼を担うものである。オバマ米政権は、世界の変化の流れをよく理解しているようだ。クーデター派は、流れを読み誤ったそして、「積極的永世非武装中立宣言」を掲げるコスタリカのアリアス・サンチェス大統領がいよいよ登場する。事態が収まるところに収まることを期待したい

中米ホンジュラスの軍部隊は28日、同国のセラヤ大統領を拘束、軍用機でコスタリカへ連行して国外追放した。同大統領は28日夜には、ベネズエラのチャベス大統領が手配した飛行機でコスタリカからニカラグアへ向かうことになる。中南米各国の首脳や政府代表は29日、中米ニカラグアの首都マナグアで緊急会合を開き、ホンジュラス情勢を討議。各国は、クーデター派が据えたミチェレッティ暫定大統領の政権を承認しないことで一致。また、国連総会は6月30日、セラヤ大統領を招き、同国で進行しているクーデターを非難する決議を全会一致で採択した。

ホンジュラスは16世紀からのスペイン支配を経て、1821年に独立。軍政後、1981年に民政移管の大統領選挙が行われた。日本の3分の1の面積で人口は710万人余り。「バナナ共和国」といわれるように、バナナの輸出に依存し、経済も政治も米国に握られていた。いまでも米国と結びついた特権富裕層が軍と政治を支配し、人口の60%以上が貧困層だ。4年前に就任したセラヤ大統領は、中南米の左派政権でつくる米州ボリバル代替構想(ALBA)に加盟するなど、新自由主義と対米従属からの転換を図っていた

このようななかで注目されたのは米政権の態度であった
オバマ米大統領は政変の翌日の29日、「クーデターは合法ではなく、セラヤ氏が依然として、民主的に選出されたホンジュラスの大統領だ」と言明。「もし、政権交代が民主的な選挙ではなく、軍事クーデターによって行われるという時代への後戻りとなるようなことがあれば、今回の事態は、その恐ろしい前例となるだろう」、「われわれは、暗い時代への逆行を望まない」と述べた。米国の歴代政権は中南米に起きた自主的、民主的な改革の動きを、しばしば右派勢力や軍部を後押ししたクーデターで転覆するのが常だった。中南米諸国で、米国の介入をまったく受けなかった国はほとんどないと言っていいくらいである。2002年にはブッシュ前政権がベネズエラのチャベス大統領を追放するクーデター(未遂)を背後で支持したと批判されている。
米政権が「クーデターは違法だ」「暗い時代への逆行を望まない」と言明したことの意味は大きい。ミチェレッティ国会議長を暫定大統領に選出したことについて、中南米諸国は即座にクーデター非難で一致したが、オバマ政権もこの流れを支持し、合流するということだ。

米州機構(OAS=南北米州35カ国で構成)は4日、クーデターで国外追放されたホンジュラスのセラヤ大統領の復職を「暫定政府」が拒否したことを受けて、ワシントンで特別会合を開き、同日深夜にホンジュラスの加盟資格を即時停止する決議を採択した。米国も入って南北米州諸国全体が反クーデターで一致した
クリントン米国務長官は7日、国外追放されたホンジュラスのセラヤ大統領とワシントンで会談し、今後の解決策について協議。中米コスタリカのアリアス大統領にセラヤ氏とホンジュラスの暫定政権との間の折衝の仲介を依頼することになった。この提案が、クリントン国務長官の方からの発案だとすれば米国務省も、なかなかのものだと思う

昔1980年代の初め、アメリカはニカラグアのサンディニスタ政権を打倒するべく、コントラ(反サンディニスタ武装連合)に肩入れしていた。イランに武器を密売し、コントラに資金援助した「イラン・コントラ事件」は有名だ。軍隊を持たないことを決めていたコスタリカは、ニカラグアとの国境付近でのサンディニスタとコントラの武力衝突が自国領内にまで越境して被害が民間人まで巻き込むことになり、対応に苦慮していた。米国はコントラの訓練センターをコスタリカ領内につくることを公認せよと要求するし、そうかといいってサンディニスタ政権と敵対することはできない。窮地に陥った当時のコスタリカのルイス・アルベルト・モンヘ大統領がとったのが、「積極的永世非武装中立宣言」である

誰かと誰かが争っていた場合、永世非武装のコスタリカは軍事的にどちらにも味方しない。ただし、ただ眺めているだけではなく、仲介者として積極的に介入する、というのだ「積極的永世非武装中立宣言」が国際的世論の支持を得て、結局、米国も、ニカラグアもコスタリカの中立を認め、コスタリカが戦場となる事態は避けられた。その後、「積極的永世非武装中立宣言」を掲げて、ニカラグア、エルサルバドル、グアテマラなどの中米和平を主導してノーベル平和賞を受賞したのが、今回クリントン国務長官が仲介者に指名したアリアス大統領である。いよいよ真打ちの登場である。事態が収まるところに収まることを期待したい。

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