プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

政治革新の可能性  青年の日本共産党への共感のひろがり

2008-10-20 20:31:06 | 政治経済
戦後の民主化の影響のもと、高度経済成長期にも企業社会支配に反発し、日本共産党に共感を寄せる青年が少なからずいた。しかし、日本共産党に共感し、企業社会支配に逆らうことは、長期安定雇用、年功処遇という日本的労使関係のもとでは明らかに生活上の不利益を覚悟しなければならなかった。思想を堅持することは、企業社会の中での競争に劣後することを意味したからだところが、相対的過剰人口を利用したムキだしの搾取強化のもと長期安定雇用、年功処遇という日本的労使関係が特定のエリートだけの話となってしまったいま、圧倒的多数の青年労働者にとって、生活を守るためには「共産党と一緒に政治を変えよう」が現実的なスローガンになりつつある。企業にしがみついておれば、ある程度の水準の生活が保障された時代は明らかに終わったのだ

いま、青年のなかで日本共産党への共感が広がり、入党してくる青年が増えているという。インターネット上に、「CGJ(志位グッド・ジョブ=よくやった)」の三文字が再び飛び交っている。7日の衆院予算委員会で派遣労働問題を取り上げた日本共産党の志位和夫委員長の質問への反響だ。志位委員長は7日の衆院予算委員会で、トヨタやキヤノンなどの日本を代表する大企業が、労働者をモノのように使い捨てにする一方で、違法行為によって派遣労働を永久に続けさせようとしている実態を生々しく告発し、違法行為の一掃と労働者派遣法の抜本改正を迫った。インターネット動画(志位質問ムービー)の再生回数は増え続け、総数が約九万回に達した。トヨタの関連会社などで実際に派遣労働に従事する人たちから、「もう希望は共産党しかない」と、会社の行為に関する告発と日本共産党への激励のメールが党本部に何通も寄せられている(「しんぶん赤旗」10月19日)。

90年代までの日本社会は、ある種の安定と貧困問題を見えなくする社会構造をもっていた。長期安定雇用、年功処遇という日本的労使関係は、企業内での昇進、昇格を目指して頑張れば、結婚、出産、育児、教育や介護の費用がかかる頃、年功賃金で賃金は上がっていった。また、定年まで滅私奉公すれば退職時には、相応の退職金をもらえた。欧米に比べて老齢年金や社会保障要求が強く起こらなかったのはそのためである。労働者党政権をつくって福祉政策で生活を守ろうとしたヨーロッパの労働組合と違って、日本の労働組合は、企業内の成果配分にのみ関心を持ち、自民党政権の企業優遇政策を容認した。思想を捨てて従順に体制にしがみつくことが、生活安定への道であった自民党政権は、農村とか、中小企業者のような企業社会に入らない人びとに対しては、企業の繁栄で増える税収を使って、大量の公共事業や補助金散布という利益誘導型政治で自民党支持に抱え込んだ(渡辺治「今日の政治情勢の特徴と改憲策動」『月刊憲法運動』2008年11月号)。

グローバル資本主義のもと、製造業多国籍企業が財界の主流になるとともに、日本的企業社会は一気に切り捨てられ、貧困問題が劇的に顕在化した。高コスト体質の破壊と企業の社会的負担の軽減を目指す財界の意を受けて「自民党をぶっ壊す」といって登場したのが、小泉元首相であった。小泉政権は、官僚や、それとつながる自民党内の「守旧派」を敵にすることで、日本社会としてのまとまりを破壊することに対する国民の抵抗を阻止することに成功したしかしいまや、財界の要求による企業社会、利益誘導型政治、貧弱な社会保障まですべてを切り捨てる自公「構造改革」政治と圧倒的多数の国民の利害の対立は、誰の目にも明らかになった。とりわけ青年労働者や老齢者にその矛盾が集中している。これらの人びとの間で、生活を守るために「共産党と一緒に政治を変えよう」が共通のスローガンとなりつつある現実的根拠はここにある。
日本的企業社会のなかでは、日本共産党への共感は、生活を不安定化する道であった。しかし、資本主義の古典的階級対立が剥き出しとなったいま、日本共産党への共感=政治の民主的変革こそが労働者階級と圧倒的多数の国民の生活を守る道なのだ。その意味で、青年の日本共産党への共感のひろがりは、政治革新の可能性を示すものだ。

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