プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

新テロ法案 今国会成立へ これで一番ホッとしたのは民主党

2008-10-09 20:04:21 | 政治経済
安倍政権下での昨年の参議院選挙のころから、民主党は突如、あたかも反構造改革政党であるかのように変身した。テロ特措法、イラク特措法も反対だと言い出した。保守政党としてのスタンスを逸脱してしまったのだ。小沢代表一流の政局運営で、給油支援の継続をスムーズに進ませないことが、安倍、福田両政権が途中で政権投げ出す大きな要因となったことは、間違いない。自公政権にとって、「テロとの戦い」の対米公約を守り、外交上の体面を保てるかどうかは死活問題であり、「ねじれ国会」のもと来年1月に期限が切れる新テロ特措法の延長問題は、麻生新政権にとっても「鬼門」となっていた。これは、自公政権だけではなく、保守政党としてのスタンスを逸脱してしまった民主党にとっても重い課題だった。というのは、民主党が総選挙に勝って政権につくようなことがあれば、テロ特措法、イラク特措法反対のままでは済まないからである。麻生政権時代に政権の鬼門を片付けたかったのは、実は民主党の方だったのだ。
明日10日から、エジプト・トルコへ旅行します。10日間ぐらいブログの更新を休みます】

衆院テロ対策特別委員会は9日の理事会で、インド洋での給油活動を1年間延長する補給支援特別措置法改正案について、10日の同委で趣旨説明を行い、17、20両日に審議することで合意した。採決の日程は審議経過をみて改めて協議するが、20日中にも委員会採決される見通しだ。衆院通過後、参院では野党の反対多数で否決されるが、与党は衆院の3分の2の多数で再可決し、今国会で成立の見通しである(「朝日」10月9日12時23分)。
衆院本会議を省略し、委員会で早いとこ片付けようというのは、民主党の要求である。昨年秋からの臨時国会では、衆院約41時間、参院約46時間の粘り腰をみせた民主党であったが、今回は一転して「審議は衆院1日、参院1日でいい」とまで言い出した(「朝日」10月9日)。いまさら反対の旗を降ろせないので、麻生政権時代に衆院の3分の2再可決で早く成立させてしまってくれ、というわけだ。

インド洋での海上自衛隊の給油活動を1年間延長するための新テロ特措法は、臨時国会に提出されても、参院第1党の民主党が給油活動の継続に反対し、衆院解散となれば、廃案になる見通しだった。しかし、給油継続のみならず、米側からのアフガンの米軍支援の圧力はきわめて強い。法案が廃案となると、その責任はあげて野党(民主党)の責任ということになる。民主党の小沢代表は、国連安保理決議に基づく集団安全保障活動に日本の自衛隊が参加することは憲法との矛盾を生じないというのがかねてからの持論である。政権に就いたときには、ISAF(国際治安支援部隊)に自衛隊を参加させるということも表明している。選挙が終われば、民主党はアフガン支援策の具体化をはからねばならないし、はかるだろうというのが大方の見方であった。麻生政権時代に衆院の3分の2再可決で速やかに成立させてくれれば、自分が傷つきかねない「鬼門」に手を付ける時間稼ぎとなることは確かであり、それだけ助かるのだ。

反構造改革党に変身したはずの民主党は、補正予算案にも賛成した。衆院本会議は8日、政府提出の補正予算案を採決し、自民、公明、民主、国民新の各党の賛成で可決、参院に送付された。16日ごろ成立の見通しである。補正予算案は、衆院予算委員会で、6、7両日に基本的質疑を、8日に締めくくり総括質疑をおこなっただけでのスピード採決となった。早期の解散・総選挙を求める民主党は、この日程を容認するとともに、討論に立つこともなく補正予算案に賛成した。民主党は、結局、政治の中身の議論はどうでもよく、“政局大事”ということなのだ。
このような民主党の姿勢に対しては、自民党の閣僚経験者から「(民主党と)パーシャル(部分)連合ができて政権の目的である予算、法案がどんどん通っていく。これなら解散する必要はない」と歓迎の声が上がっている(「しんぶん赤旗」10月9日)。
民主党のある衆院議員は、補正予算に「賛成」すること、新テロ特措法の延長が通ることは、「政府案には反対するが、(結果として)法案が成立することで争点を消していくこと」が狙いだという。「『景気対策に反対する民主党』『テロとのたたかいに反対する民主党』と言われないようにするためだ」というのだ(「しんぶん赤旗」同上)。

「構造改革」に反対する民主党、「テロとのたたかい」に反対する民主党は、本当はやめたいのだ。しかし、世論に押されて保守政党としてのスタンスを逸脱してしまったことを選挙が近づくいま後悔しておれない。政治の中身の変革を願う国民には、民主党を支持できないことだけは、確かなようである

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