韓国の陸空両軍は23日、北朝鮮との軍事境界線に近い京畿道抱川市で、大規模な合同演習を実施した。南北軍事境界線から約１００キロ離れた南側の海域でも、韓国海軍の射撃訓練が行われている（ロイター2010年 12月 23日）。韓国軍は２０日にも延坪島で実弾射撃演習を実施したが、北朝鮮が挑発に乗らなかったので、再び酢を買ったようだが、今回も北朝鮮は報復を示唆せず、相手にしなかった。軍事演習は、言うまでもなく戦争のための準備である。南朝鮮（韓国）は、本気で北朝鮮と戦争するつもりなのだろうか。南朝鮮（韓国）は、東西ドイツのような「再統一」の形式をとるかどうかは別にして、いずれ北朝鮮と「統一」する運命にある。戦争は、常に政治経済上の目的があって行うものであるが、「統一」相手と戦争してどのような政治経済上の目的を果たそうというのか。南朝鮮（韓国）の負担が大きくなるだけではないのか。阿呆につける薬はないとはこのことだ。
冷戦が終わって２０年近くもなるのに南北朝鮮が、未だに、いがみ合っているのは異常である。米国と米国の手先、韓国、日本が、北朝鮮を包囲し、それぞれの役割を担いながら、酢を買っては、北朝鮮の蛮行を引出し、それを口実に和平を遠ざけてきたからである。北朝鮮の蛮行を批判するのは、簡単である。米国には、特別の政治経済目的があるから、「冷戦」が続けば続くほど有難い。だから、表向きの言説にかかわりなく、北の蛮行は歓迎である（「ならず者国家」がいなくなったら、ならず者の米国も存在価値がない）。理解できないのは、南朝鮮（韓国）の振る舞いである。米国の手下になることで、自己の権力を維持してきた軍事独裁政権時代はともかく、冷戦が終われば、南も北もない。北が米韓日同盟に包囲されて、「体制転換」まで気が回らないで苛立っているとすれば、過去は、過去のこととして、南朝鮮（韓国）が手を差し伸べ、宥めてやらねばならない。金大中大統領がやろうとしていたことは、そういうことでないのか。米国の尻馬に乗って、軍事演習にうつつをぬかし、軍事境界線に近い北東部・江原道の陸軍部隊を訪問し、「奇襲攻撃を受けたら容赦なく対応しなければならない」と見得を切る李明博大統領は、最低の道化者である。
米韓日同盟に包囲されて、常に脅されていると思っている北朝鮮の体制転換は、なかなか難しい。ソ連、東欧でも２０世紀社会主義体制の体制転換は簡単ではなかった。北朝鮮の体制は、基本的に２０世紀社会主義が「戦時共産主義体制」として成立した当初からあまり変化していない。中央指令型分配・経済システムも、個人崇拝に近い共産党一党独裁体制もすでに、歴史的な遺物である。その意味で、2000年6月15日に、金大中大統領と金正日国防委員長との間で調印された南北共同宣言で、ベトナム方式（武力統一）でもなく、ドイツ方式（吸収統合）でもない、段階的・漸進的な過程としての統一を確認し合ったことは、賢明な選択であった。北の２０世紀社会主義システムは、平時では通用しない。米国の干渉を跳ね除け、たとえ平和的に統一できたとしても南朝鮮（韓国）の負担はかなりのものとなるだろう。北朝鮮は、「改革・開放」を通じて市場経済に慣れるとともに、民主主義の訓練を受けなければならない。
私は、朝鮮の人々にもう一度、「6・15南北共同宣言」を思い出し、立ち返ってもらいたいと思う。アメリカの経済は、軍産複合体への公共投資なくしては成り立たなくなっている。そして、東アジアでの存在を正当化し、韓国や日本から収奪しないでは、この公共投資を維持することが困難になっている。北朝鮮にしてみれば、アメリカに付き従う韓国や日本が歯痒く、腹立たしくて仕方ないであろう。しかし、日本国民の水準は押しなべて低い。国際問題の専門家で、日本のインテリゲンツァであるはずの超左翼おじさんのブログでは、「今回の北朝鮮の問題をめぐっても、北朝鮮と韓国に対して、もう軍事演習はやめろといっても、なかなか聞く耳を持たないと思う。実際、合法な演習をやるんだったら、やめさせる道理がない。」というのが、せいぜいのレベルである。北朝鮮の指導部は、米国、韓国、日本のバカどもがつけ入るようなバカな真似は、やめるべきだ。一方、韓国ももっとしっかりしなければならい。米国や日本の介入を許さないように、南北の平和共存と将来の統一のために、イニシアティブを発揮すべきだ。米国や日本政府は南北朝鮮が争うことに、政治経済的メリットがあるからあの手この手で周りからいろいろ介入する。しかし、南北争っても、いずれ北朝鮮の面倒をみなければならない南朝鮮（韓国）には、なんのメリットもないはずだ。「南と北は国の統一問題を、その主人である我が民族同士で互いに力を合わせ、自主的に解決していくことにした」（6・15南北共同宣言）のではなかったのか。
