プロメテウスの政治経済コラム

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小沢氏不起訴  ゼネコンの肩を持つわけではないが悪いのは政治家

2010-02-05 19:02:01 | 政治経済
民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で、東京地検特捜部は4日、政治資金規正法違反(虚偽記載)罪で元会計事務担当の衆院議員、石川知裕容疑者と後任の会計事務担当で元私設秘書の池田光智容疑者を起訴し、元会計責任者で公設第1秘書の大久保隆規容疑者=公判中=を追起訴した。小沢氏については、疑いは残るものの十分な証拠が見つからなかった場合の処分である「嫌疑不十分」として不起訴とした。小沢氏は角栄・金丸・小沢と特捜部との30年戦争に負けなかったと安堵していることだろう。しかし、今回の不起訴処分によって決して“一件落着”となってほしくないと一番悔しい思いをしているのは、小沢氏に金を貢いだ当のゼネコンだろう。公共事業は確かにおいしい仕事である。それだけに競争も激しい。談合システムがあるからとって決して楽なことはない。業界仲間と談合仕切り屋をどう説得して自社を本命と認めてもらうか――営業担当者は、あの手この手で苦労する。小沢氏は角栄・金丸のもとで、この業界の談合システムのからくりを知り尽くした
西松建設から小沢氏側への違法献金事件で、政治資金規正法違反の罪に問われた小沢氏の公設第1秘書大久保隆規被告の初公判が昨年12月18日、東京地裁であった。検察側は、小沢事務所が公共工事受注でゼネコン談合への決定的な影響力を持っていたと指摘。大久保被告がゼネコン側からの工事受注の陳情に「天の声」をあたえる一方で、清水建設、鹿島、大林組など複数のゼネコン担当者の供述調書を一部読み上げ、ゼネコン側に多額の献金や選挙での支援をさせていた実態を詳細にのべた。西松の東北支店幹部は、大久保被告から「お宅がとった胆沢ダムは小沢ダムだ。忘れちゃ困るよ」といわれた。ゼネコン業界とは不思議なものである。業界自治で談合システムを完結すればよいものを話し合いがつかないものだから、「天の声」に頼る。小沢事務所にたかられるのは自分たちの自治能力が足りないからだ。それだけに小沢氏の不起訴処分によって“一件落着”となることほど悔しいことはない。といって、特捜部に小沢事務所をチクルこともできない。談合破りとして、業界からの放逐を覚悟しなければならないからである。

 大方の司法関係者が予測したとおり、小沢氏は不起訴になった。佐倉奏記者は、『週刊 金曜日2010・1・22 783号』で過去の「政治とカネ」にまつわる事件と同様、今回も、疑惑が全容解明されることは、ないと断言していた。政治資金収支報告書の虚偽記載で小沢氏を起訴しようとすれば、小沢氏が石川秘書らの収支報告書への不記載を承知して提出させたこと=小沢の故意の存在が起訴するための構成要件となる。小沢氏は否認するに決まっているのだから、石川秘書らがこれを認めるか、又はこの不記載に小沢個人が関与していた客観的な物証(たとえばパソコンの履歴とかメモなど)がない限り立件は不可能である。案の定、3人の秘書は、今後のこともあるので、検察の思惑通りには供述しなかった。
小沢氏疑惑の核心は、ゼネコンの公共事業談合システムと不完全な自治を食い物にした小沢事務所のたかりである。しかし、収賄罪を問うとすると、いまの法律では、小沢氏の職務権限が問題となる。当時野党だった小沢氏には職務権限はないとなりかねないからである。斡旋収賄や斡旋利得処罰法違反も立証が難しい。政治資金は課税されないので脱税の事実をつかむのも容易でない。裏金・表金の資金の流れを追跡すためには、相当数のベテランの国税調査官が必要である
小沢事務所が東北地方の談合の仕切り役と言われている鹿島の談合担当者と連絡をとりながら、本命企業決定に影響を及ぼし、限りなく贈収賄に近い金銭を徴収していたことは明らかなのだが、いまの法律体系で小沢氏を逮捕することは難しい。司法というのは法と証拠にもとづいて対応するほかなく、限られた期間内で、その範囲で起訴にいたらなかったのは残念だが仕方ないのだろう。しかし、司法・検察の手が及ばなかったからといって、3人の現・元秘書が起訴されたわけだから、小沢氏の政治的道義的責任がなくなったわけではない。今回の不起訴処分によって決して“一件落着”にすることなく、国会が小沢氏の政治的道義的責任の有無について、しっかりと究明する必要がある。そのためには、小沢氏を国会に招致して、集中的な審議を行う必要がある。3人の元・現秘書については、起訴になったわけだから、証人として国会に招致して真相を究明することが必要だ(政権に就いた民主党がすんなりと同意するともおもえないが・・)。小沢と民主党を懲らしめるのは、参議院選挙でけっして民主党を勝たせない有権者の世論と行動である。

 私は、公共工事の談合を遠くから見ていただけで、当事者としての経験はない。世間では、談合システムは工事受注にとって簡便な手段のように思われがちだが、談合の仕切り役を出せるような大手は別として、それ以下の中小業者にとっては、自社を本命と認めてもらうための営業担当の努力は涙ぐましいものがある。時には、自薦他薦のフィクサーにすがることもある。だから「お宅がとった胆沢ダムは小沢ダムだ。忘れちゃ困るよ」という小沢事務所の秘書とその親分である小沢を許せないのだ。小沢捜査の検察の強引さ・それに迎合するマスコミを批判する論調に私が同調できないのは、営業担当の苦労を遠くで見ていたからである

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