プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

派遣法改正  口先だけが目立つ民主党政権  労政審答申どおりの立法化は許されない

2010-02-08 19:01:11 | 政治経済
日本の二大政党制はアメリカと違って、小数とはいえ、確固とした綱領をもち草の根で民衆と結びつき活動する日本共産党が存在し、いまやほとんど頼りにはならいとはいえ、戦後民主主義のなかでかつて大衆の支持を得た社会党の流れを引き継ぐ社民党が存在する。だから、アメリカのオバマは、ただ「チェンジ」と言っておればよかったが、日本の民主党は、選挙に勝つためには、反「構造改革」の具体的なマニフェストが必要だった。そうしないと共産党や社民党に票が流れるからだ。7月の参院選挙が終わるまでこの姿勢は崩せない。しかし、所詮は選挙の方便なので、あちこちでボロが出る。民主党が財界やアメリカからの圧力が強い政策ほど腰砕けになるのはそのためである
派遣法改正もその典型例である。財界の声を聞くために設けた労働政策審議会の答申を錦の御旗に法改正を骨抜きにしようとしている

 登録型派遣の原則禁止などを内容とする旧野党3党(民主・社民・国民新)の派遣法改正案は政権交代後、厚生労働省の諮問機関である「労働政策審議会」(労政審)で審議され、労政審は昨年12月28日、厚労大臣に「答申」を出した。財界委員の圧力を受けて、●登録型派遣を原則禁止(「専門業務」などは例外)としながらも、施行には3年の猶予を付け、問題が少ない職種はさらに2年適用を猶予する=登録型派遣の禁止は少なくとも3年後、職種によっては「禁止」が5年先になる。●旧野党3党案では明記されていた「派遣先の責任」(派遣元労組との団体交渉応諾義務や、未払い賃金に関する派遣先の連帯責任強化)が欠落するなど、旧野党3党案からさえ大きく後退させている。

 最近、私は、派遣法抜本改正を求める緊急集会に参加し、派遣労働者の生の声を聞いたが、改めて派遣制度は原則として全面禁止すべきだと思った労働力を購入する派遣先が雇い主でないという制度はやっぱり基本的におかしい。資本主義システムにとって相対的過剰人口の存在が必然であることは、経済法則だから誰も否定できない。しかし、労働者を物品納入と同じ会社同士(派遣元会社⇔派遣先会社)の契約とする必然性はない。派遣労働者に何が一番悔しいか聞いたところ、皆一様に、一生懸命労働力を提供している派遣先から、「あなたはよその会社の労働者、私はあなたの雇用主でない」と言われることだそうだ。短期の不安定雇用であっても、労働条件が劣悪であっても、派遣先会社が雇用主なら組合を作って人間同士の話し合いもできる。一生懸命働いているのに、あなたとは雇用関係がないのだから、私には関係ない、聞く耳持たぬといわれるぐらい惨めなことはない、というわけだ。お前は、数多く調達する物品のひとつ、モノだといわれているようなものなのだ。

 労働政策審議会の答申で、「原則禁止」とした製造業派遣のうち、常用型派遣を「雇用の安定性が比較的高い」と「例外」扱いにしていることほど欺瞞的なことはない。登録型は勿論、常用型であろうが、派遣先から調達中止となれば、派遣元会社は、売り上げゼロである。物品なら倉庫に保管することもできるが、生きた人間である労働者には衣食住が必要である。売り上げゼロの派遣元会社が労働者を抱えておれないのは当たり前だ。常用型といっても、短期契約を繰り返すほかなく、調達中止から時間をおかずに首をきるほかないではないか。厚労省のデータでも、派遣契約が中途解除されたときに87・2%が離職しており、うち87・9%が強制解雇である。

 また、仕事があるときだけ雇用される登録型派遣は「原則禁止」といいながら、約100万人もの派遣労働者が働く「専門26業務」を「例外」扱いにして抜け穴を作っている。「専門26業務」は、およそ専門とは名ばかりで、実際は女子労働力を補助業務に体よく使うものであることは、実績が示している。
短期雇用、不安定労働契約を可及的に禁止すること、労働力を調達する限り、雇用主としての責任を持たせることは、資本主義システムにおいても守るべき原則である。

 いま全国各地で、労政審答申は改正を骨抜きにするものであるとして、大企業の傍若無人な派遣切りに対し裁判闘争を続ける労働者や弁護士・支援団体などを先頭に「今こそ政治主導で不安定雇用の温床となっている派遣制度を抜本的に見直す法改正を行うべきだ」という運動が巻き起こっている。7月の参院選挙が終わるまでの民主党は、日本共産党や社民党の存在を意識せざるを得ず、運動の高揚によっては法案の内容を見直す可能性も秘めている。まさに今、労働者階級と財界との階級闘争が民主党政権を間に挟んで繰り広げられている。いまこそ労働者階級のがんばりどころだ。

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