プロメテウスの政治経済コラム

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臨時国会閉幕 早くも見えてきた民主党政権の限界と危険な反動性 ポイントは民主党政権に対する運動

2009-12-05 19:16:46 | 政治経済
民主党中心の新政権が成立して最初の本格論戦の場となった第173臨時国会が4日、40日間の会期を終えて閉幕した。自公政権を退陣に追い込んだ国民は当然、鳩山内閣で、政治が変わることを期待した。国民は、雇用、社会保障、農業、財源、米軍基地など自公政治のもとで行き詰まった諸問題を国民の立場にたって打開してくれることを期待した。構造改革と改憲で行き詰まった結果、政権交代が行われたわけだが、早くも見えてきたのは、民主党政権の限界と危険な反動性である。今一番大事なポイントは、民主党政権に対する国民運動である

 今回の臨時国会では、肝炎対策基本法、原爆症基金法が成立した。これらは、何よりも原告団、弁護団の命がけのたたかい、運動が政治を動かしたと言ってよいだろう。民主党が、議員立法を制限・禁止するという方針をうちだし、肝炎対策基本法の今国会での成立が危ぶまれる局面が生まれたとき、共産党が、与党に働きかけ、全党が歩み寄れる状況にあるのだから、全会派がテーブルにつく協議の場をつくり、何としても今国会での成立をと主張し、その結果、各党協議の場が設けられ、成立に至った。国民が声をあげれば政治は変わるということを、第一歩ではあるが、示したと言えるだろう。

 鳩山首相の所信表明演説は、“政治を変える”“歴史を変える”という言葉は繰り返さたが、転換すべき要の問題では抽象的な言辞に終始し、具体的方策に踏み込むことについては注意深く回避された。新政権の動きのなかで、公約からの後退が早くも次々と現れる状況も生まれている。
雇用問題をめぐっては、首相は、失業者問題がこれだけ深刻になっているのに、その対策は旧政権の延長線上、労働者派遣法改正については一言も言及しなかった。共産党の追及で、「派遣法改正案を通常国会に提出する」、「非正規切り」問題では、「企業に申し入れたい」と答えたが、失業保険の「全国延長給付」問題では、財源問題を持ち出して、消極的態度に終始した。
後期高齢者医療制度をめぐっては、新政権は、「新制度ができるまで廃止を先送り」するという態度である。共産党が「先送り」を厳しく批判したのに対して、政府は、「時間がかかる」「混乱する」という旧自公政権と同じ弁明に終始した。
沖縄・普天間基地問題では、鳩山首相は、総選挙前のマスコミの党首討論で、「県外、国外」への「移設」を明言しながら、ゲーツ米国防長官が来日して、辺野古への新基地建設を強圧的態度で迫ると、「年内決着」を「先送り」し、「新しい移設先の基地を探す」と言ったかとおもえば、「辺野古は当然生きている」と答えたり、動揺を続けている。鳩山首相の根本は、日米安保の抑止力ということを考えたとき、海兵隊の代替地が必要だという自公政権となんら変わらないのだ。

 鳴り物入りで行われた「事業仕分け」もひどいものである。“本当に削られるべきムダ遣いが温存されている”一方で、“削ってはならない暮らしにかかわる大事なものが乱暴な形で切られた”。構造改革政治にノーという審判が下ったにもかかわらず、小泉「構造改革」を推進してきた人物が平気で仕分け人のなかに入ってきた。象徴的なのは、26日にあった軍事費や米軍への「思いやり予算」の扱いだ。「仕分け」の議論は、「思いやり予算」の中の在日米軍基地従業員の給与が「民間と比べて高いかどうか」だけに集中し、日米地位協定上、日本が負担する必要がないという根本問題には触れようともしなかった。小泉・竹中レベルとまったく変わらない。小泉・竹中にひどい目にあわされた国民は、今度こそ、こんなパフォーマンスには騙されないと思いたいのだが。

 今度の国会で、民主党の危険な反動性もすでに明らかになった。政権についた民主党は、横暴な国会運営を重ね、野党に転じた自民党が機械的に審議ボイコットで応じる事態が繰り返された。国会運営における民主党の横暴は、小沢「国会改革」の強権的国家づくりの動きとも一体のものであり、たんに「自民と同じ」というだけですまない危険性がある。小沢幹事長は、90年代初めの第一次政権交代で果たせなかった野望を今回の政権交代で実現すべく虎視眈々と狙っている。湾岸戦争のとき、自民党の幹事長だった小沢氏は、自衛隊の海外派兵を内閣法制局長官に阻まれた恨みを忘れていない。小沢氏がすすめようとしている「官僚答弁の禁止」の真の狙いの一つは、憲法解釈を「政治主導」の名で自由勝手に変え、彼の特異な憲法解釈をおしつけることである。彼の狙いは、鳩山おろし、社民党おろしなのだ。

 民主党の大勝利は、改憲・構造改革政治打破の第一歩に過ぎない。この第一歩は第二歩に進むどころか、早くも後退の危機にある。「朝日新聞」は、選挙の次の日の社説ですごいことをいった。「豹変する勇気を持て」というのだ。民主党は選挙公約で国民受けすることをいろいろ言ったが、それに縛られないでいい、気にすることなく変える勇気を持ってほしいというのだ
いまこそ私たちの統一した運動が求められている。個々に闘うと同時に、反対の運動から、事態を変えていく運動に発展させることが必要である。政治を変える第二歩の運動は、支配者階級の抵抗を跳ねのけるものでなければならないのだ。

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