プロメテウスの政治経済コラム

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「思いやり予算」特別協定協議   財政難をいうなら「思いやり予算」を真っ先に全廃するべきだ!

2007-11-26 19:18:29 | 政治経済
日米両政府が交渉中の在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)に関する新特別協定締結協議が難航している。政府は年内に協議を決着させ、新協定案に基づく経費を来年度予算案に計上する方針だが、本来日本側に負担義務のない巨額の思いやり予算を存続させること自体が納得できない。削減交渉に矮小化できる問題ではないのだ(「しんぶん赤旗」11月26日)。

来年3月に期限切れとなる在日米軍駐留経費の「思いやり」予算特別協定をめぐって、日米間および国民との矛盾が激化している。「思いやり」予算として現在、日本政府が負担しているのは、(1)基地建設費(2)日本人従業員の人件費(福利費など)(3)光熱水費(4)「訓練移転」費―である。これらはすべて、在日米軍の特権を定めた日米地位協定上も負担する義務がないものである。地位協定を盾に傍若無人の振る舞いをしながら、アメリカが思いやり予算に口出しする資格などない。アメリカが結んでいる他の軍事同盟諸国には、思いやり予算などという卑屈なしくみはない。思いやり予算は世界の笑いものなのだ(「しんぶん赤旗」同上)。

来年1月の新協定締結に向けた交渉は大詰めを迎えているが、政府の財政制度審議会は、「思いやり」予算の大幅な見直しを要求。これに基づいて、日本政府は光熱水費と人件費の削減を求めている。人件費について日本側は百億円以上の削減を目指している。具体的には、基地従業員の基本給に10%をかけて上乗せする「格差給」や語学手当、退職手当などを廃止する方針である。これは、日本人基地従業員の給与が下がるだけで米側の腹は痛まない。光熱水費については、米兵が住宅のエアコンをつけたまま一時帰国するなど、電気・ガスの「使い放題」といった不明朗な実態が問題視され、2001年度以降は引き下げざるをえなくなった経緯がある。そこで米側は光熱水費の大幅な増額を要求しているらしい(「しんぶん赤旗」11月14日)。

1978年に始まった米軍への「思いやり予算」の総額は5兆1千626億円に上る(11月2日衆院外務委員会での日本共産党・笠井亮議員への外務省答弁)。アメリカ軍は日米安保条約に基づき沖縄をはじめ全国各地に基地を持ち、駐留し続けている。1977年まではアメリカ軍施設の新築費・維持費や基地内で働く従業員の給料は全額アメリカの負担であった。ところが、1978年からこれらの費用の一部を日本側が負担するようになった。ベトナム戦争のあおりを受けて70年代初めからアメリカ経済が行き詰まり、アメリカは在日米軍駐留経費の負担を日本側に露骨に要求した。当初の思いやり予算はアメリカ軍で働く日本人たちの給料だけを対象としていた(その負担割合は、1978年当時は6.3%・1982年には二分の一・1990年からは全額負担することになった)。 ところが、アメリカの要求はエスカレートし、維持費や施設の新設費などにも及ぶようになり、金額は次第に増加していくことになる(1980年ころから米軍家族住宅の新築等施設の整備・1991年ころから光熱水費等・1996年からは訓練移転費の負担も加わる)。当初労務費の一部(約六十二億円)が1990年代には二千七百億円を超える水準になったのだベトナム戦争後のアメリカ経済が不振だった時代に創設された制度だったにも拘わらず、日本経済がバブル崩壊で苦しむ一方で、アメリカは「戦後最大最長の好景気の時代」といわれた1992~2000年のクリントン時代でさえ増額され続けた。日本は「世界一気前のいい同盟国」ということは、「世界一のバカ」だということだ。

日米両政府が現在交渉中の特別協定というのは、「思いやり」予算のなかでも特にひどい、労務費の一部と光熱水料、訓練移転費の負担を対象とするもので、07年思いやり予算二千百七十三億円のうち特別協定分は約千四百億円である。
政府は、米軍が「日本防衛」の任務にあたっているからということを思いやり予算を正当化する理由にしてきた。そんなことはもはや通用しない。在日米軍は今何をやっているか。イラク戦争やアフガニスタンへ出撃することを最大の任務としているではないか!日本の思いやり予算で浮いた米軍予算が無法な戦争にまわされイラクやアフガンの罪無き人びとを苦しめている。かたや政府は社会保障費や教育費など生活予算を削減するとともに、増税につぐ増税で国民に大きな痛みを押し付けている(「しんぶん赤旗」11月26日)。

なぜ米軍ばかりを思いやるのか!国民をこそ思いやるのが当然でないか!財政難をいうなら、条約上なんの義務もない、「思いやり」予算を真っ先に全廃するべきだ!

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