プロメテウスの政治経済コラム

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戦争のアウトソーシング 増殖する民間軍事請負会社(PMC) 日本の基地にも

2007-11-25 19:17:09 | 政治経済
国連人権理事会の「雇い兵の使用に関する作業部会」報告によれば、イラクやアフガニスタンで「民間警備・軍事会社」の名の下で活動する「雇い兵」が急増しているという。「戦争請負会社」の著者のペーター・シンガーは最新号のアームド・フォース・ジャーナル(電子版)で「2007年、米国防総省による調査で、イラクでの民間軍事請負関係者は、30カ国以上から18万人に上る」と書いている。2月以降増派されて16万5千人に増えた駐留米軍より多い(朝日新聞編集委員・川上泰徳「増殖するイラクの傭兵会社」『DAYS JAPAN』2007年12月号Vol.4No.12)。
9月中旬、米軍事請負会社「ブラックウォーターUSA」社による銃撃事件でイラク人17人が殺害されて以降、「テロとの戦い」を影で支えてきた“戦争の民間委託 (戦争のアウトソーシング)“という問題が改めて問われている日本の基地でも米民間軍事会社が警備を請け負っており、そのあり方が問われている。


民間軍事会社 "Private Military Company, PMC"は、90年代の初め冷戦の終了後増殖した“新しい形態の傭兵組織”である。主な業務としては軍隊や特定の武装勢力・組織・国に対して武装した戦闘員を派遣しての直接戦闘業務に加え、兵站・警備・訓練など旧来型の傭兵と異なる多様なサービスを提供する。ヘリコプターや特殊車両、火器、通信機などその装備は正規軍と比べて遜色ないといわれる。冷戦の終結により、アメリカを中心とした各国は肥大化した軍の人員削減が進められ、数多くの退役軍人を生み出した。優秀な軍経験者、軍隊のコスト面での効率化、そして低程度規模の紛争への対応。これらの要素が民間軍事会社を生み出す土壌となった。まさに“戦争のアウトソーシング”化である“現代の傭兵”は、軍と共に作戦行動を共にする事が多いにも拘わらず、戦争犯罪に関しては軍の法令の適用外である。民間軍事会社所属の社員は正式な戦死者数としてカウントされることもない。その活動はジュネーヴ条約などの戦争法規に規制されることもないことから、しばしば戦争犯罪的な行為が助長される(『ウィキペディア(Wikipedia)』“民間軍事会社”)。

9月中旬の米軍事請負会社「ブラックウォーター」社による銃撃事件とは、駐イラク米大使館員の車列を護衛していたブラックウォーターの武装警護員が銃を乱射してイラク市民17人を射殺したというものである。ブラックウォーターの車両が道路を封鎖していたのでUターンした市民に後ろから無差別に銃撃したという。ブラックウォーター側は「車列に向かって銃撃があった」と正当防衛を主張するが、イラク内務省の調査では、攻撃はなかったとしている。マリキ首相は「犯罪行為だ」といい、「この会社がかかわる同種の事件は7件目だ」とも語った(川上泰徳 同上)。
イラク政府には外国人警護員を逮捕したり、裁判にかける権限がないイラク戦争後の米占領当局命令17号で、「占領当局や駐留国際部隊関連、外国の外交施設、外国の復興業者などを護衛する民間軍事会社は、イラクの国内法廷の刑事、民事、行政のあらゆる面で、逮捕も法的な手続きからも免責される」となっている(川上泰徳 同上)。

米国の民間軍事会社が航空自衛隊車力(しゃりき)基地(青森県つがる市)で、米軍の「ミサイル防衛」用レーダーの警備を請け負っていることが判明した。車力基地には昨年6月、在日米軍再編合意に基づき、弾道ミサイルを探知する「Xバンドレーダー」と呼ばれる「ミサイル防衛」用レーダーが配備された。米軍準機関紙「星条旗」10月7日付によると、同レーダーを運用しているのは第94陸軍防空・ミサイル防衛コマンドの分遣隊約100人であるが、このうち同分遣隊所属の米兵は2人だけ。残りは、米軍が外注委託したシェネガ社と、もう一つの米民間会社「レイセオン」の要員である(「しんぶん赤旗」11月22日)。
つがる市によれば、シェネガ社の要員らは「軍属」扱いになっているとのこと。これら要員は、事件や事故を起こしても「公務中」であれば日本側に一次裁判権がないなど、在日米軍の特権を定めた日米地位協定が適用されるというわけだ(「しんぶん赤旗」同上)。


イラク政府はブラック社の銃撃事件を機に、軍事会社の警備員に認められた刑事免責を見直し、イラク法の下で裁かれるべきだと表明。連邦議会に先月、免責を解除する法案を送付した。イラク治安部隊は11月19日、バグダッド市内で女性1人を銃撃、負傷させたとして、民間軍事会社(PMC)の米国人警備員2人を含む計43人を逮捕した。議会での法案可決はまだだが、現行犯逮捕に踏み切ったという(「毎日」11月20日10時48分配信 )。
改めて日本の地位協定の不当性が問われなければならない。

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