プロメテウスの政治経済コラム

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沖縄・宜野湾市  「普天間」で国を提訴方針  伊達判決の先見性

2010-07-03 21:15:41 | 政治経済

菅直人首相が国民の前で所信を明らかにするより前に実行したのが、アメリカのオバマ大統領への電話だった。官邸入りしたその夜に、辺野古「移設」の日米合意を「しっかりやる」と誓ったのだった。
大マスコミは、あたかも鳩山政権時代に騒がれた「普天間基地の県外国外移転」は1件落着、過去の話となったかのように普天間問題を報じなくなった。しかし、問題はなにも解決していない
沖縄の仲井真弘多知事は2日の定例記者会見で、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を明記した日米共同声明に関する説明を菅首相に求めていることについて、「可及的速やかにと申し入れている」と述べ、県外移設を断念した検討作業の詳細や、日米合意に至る経緯の説明を早期に受けたいとの考えを示した。その上で、日米両政府が8月までに代替基地の具体的な位置や工法の検討を終えるとしていることについて、「両政府が勝手に決めていることだ。沖縄県の知事として、決めてもまったく実行不可能だと思っている」と強調し、県内移設は極めて困難と重ねて強調した(「琉球新報」2010年7月3日)。

 一方、米軍普天間飛行場の閉鎖・撤去に向け、国を相手に訴訟が可能か調査していた宜野湾市の伊波洋一市長は2日、同市役所で会見し、同飛行場を米国に提供することを定めた合意の無効確認と、市への損害賠償を求めて憲法訴訟を起こす意向を明らかにした。地方自治体が国の基地提供政策の是非を問う訴訟は初めて。学識者や市民でつくる市基地対策協議会に諮問し、市議会で予算が可決されれば本年度中に提訴したい考えだ(「沖縄タイムス」2010年7月3日)。
市が委託した訴訟可能性調査報告は、同飛行場の使用を無効とする「無効確認訴訟」と、騒音被害などの賠償を国に求める「国家賠償請求訴訟」によって同飛行場の違憲性を国に問うことは可能だと結論づけた。
「無効確認訴訟」は、飛行場の提供が自治権と平等権を侵害している点を追及。「国家賠償請求訴訟」は「損害賠償金を得るためのものではなく、米軍提供施設の違憲性や普天間飛行場を提供し続ける行為の違法性を問う」(新垣勉弁護士)ことを最大の目的とする(「琉球新報」2010年7月3日 )。

 日米安保条約に基づく日本政府の基地提供を憲法違反だと明快に断じた「伊達判決」が出たのは、約50年前の1959年3月のことだった。これに周章狼狽した米国政府が当時の駐日大使ダグラス・マッカーサー2世に日本政府が最高裁への跳躍上告を行うよう指示し、最高裁判所・田中耕太郎長官と密談したことは有名な話である
以来、「日米安全保障条約のように高度な政治性をもつ条約については、一見してきわめて明白に違憲無効と認められない限り、その内容について違憲かどうかの法的判断を下すことはできない」といういわゆる“統治行為論”が幅をきかせ、日本国民は、安保条約の違憲性について思考停止に陥り、現在に至っているのである

 東京地裁・伊達秋雄裁判長の判決の要点は次の2点である
①「安保条約に基づく駐留米軍は米国が戦略上必要な際にも出動するので、日本が自国と関係のない武力紛争に巻き込まれるおそれがあり、米軍駐留を許容する日本政府の行為は『政府の行為により再び戦争の惨禍が起きないようにすることを決意』した憲法の精神に反する」
②「米軍は、日本政府の施設区域の提供、費用の分担その他の協力によって駐留しているのだから、憲法9条で禁止される『陸海空軍の保持』に該当する」
特別の工夫をしないで、素直に憲法の精神を貫けば導き出されるであろう画期的な違憲・無罪判決であった

 自公政権以来、「日米合意」は、住民及び自治体に情報を知らせることもなく、国会の正式審議にもかけられることもなく、政府のごく少数の軍事、外交の実務担当者レベルで交渉を進め、政府間の合意だからといって、住民、自治体に押し付けるものであった。主権在民の原則、戦争放棄・戦力不保持の第9条、平和的生存権、環境権等の基本的人権の保障、議会制民主主義、地方自治の原則に違反するものである。
今回の訴訟の意義について新垣弁護士は「国策について一地方自治体が憲法の視点から是非を問うことは前例がない。先例を開く大きな意味を持つ」と述べるとともに、「市民や議会の中で積極的に議論されることを期待する」と語った(「琉球新報」2010年7月3日 )。


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