プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

ウィキリークス イラク戦秘密文書暴露  国際法違反の常習者との同盟を「深化」する愚かさ

2010-10-26 20:07:31 | 政治経済

匿名の内部告発サイト「ウィキリークス」は、7月のアフガン駐留米軍の機密文書約9万点に続いて今度は、イラク駐留米軍に関する機密文書約40万点をネット上に公開した。「ウィキリークス」の創設者と言われるジュリアン・アサンジ氏は23日、ロンドンで記者会見を行い、「戦争の真実に対する攻撃は、戦争が終わってからも続く」と述べ、存在が否定されてきた死者数の記録や、イラク当局による虐待を米軍が無視してきた実態を明らかにした今回の文書公開の意義を訴えた(共同ニュース20101026日)。

グローバルな軍事介入を生業とする米軍は、国際法違反の常習者である。菅政権は、このならず者との「日米同盟」を「深化」つまり強化するという。アメリカ軍との軍事一体化を強化し、自衛隊がアメリカ軍とともに海外で戦争するということは、日本自身にとって何を意味するか。愚かなことだ


今回、公開されたのはイラク戦争開戦から約9カ月後の2004年1月~10年1月までのイラク駐留米軍関連の文書計39万1832点で、大部分は米軍兵士が現地で得た情報だった。「ウィキリークス」は22日の公開を条件に米紙ニューヨーク・タイムズ、英紙ガーディアン、仏紙ルモンド、独誌シュピーゲルに文書を渡していた。 ガーディアン(電子版)によると、米国はイラク治安当局が組織的にイラク人捕虜を虐待しているとの報告を多く受けながら、詳細な調査を実施しなかったことが示されているという。また、約1万5千人の新たなイラク市民の犠牲者の存在が明らかになり、04年1月から09年末までの死者は計約10万9千人で、うち6割に当たる約6万6千人が非戦闘員だったという(「産經」2010.10.23 11:18)。

米英両政府はこれまで、市民の犠牲者に関する公式な記録は存在しないとしていた。

 

イラク戦争の残虐・無法は心あるジャーナリストや内部のイラク人、良心的なアメリカ帰還兵らによって、これまでも断片的に明らかにされてきたが、その残虐性が改めて軍の機密文書によって明らかにされた。

「この大量殺戮は、専制からイラク国民を解放し、民主主義を確立するという名の下に行われた。これは偽善であり、残虐行為である」。「アフガニスタン戦争に関する7万点以上の文書とともに、イラクに関する文書は歴史の価値ある証言である。一つの文明国が他の文明国に対し、富への欲望とどん欲さ、拡張主義のために犯した犯罪の証言である」「この権力の乱用を裁かないわけにはいかない」(アラブ首長国連邦(UAE)の英字紙ハリージ・タイムズ―「しんぶん赤旗」20101026日より引用)。

「国際社会はこの暴露を歴史のごみ箱に放り投げて済ませることを許してはならない」。「上院議員時代、この戦争に強く反対したオバマ大統領は(犯罪を犯した)責任者の追及にイニシアチブを発揮すべきだ」「ナチスの戦争犯罪者が裁判にかけられたように、今イラクで犯罪を犯した者たちを被告席に立たせる時だ」(サウジアラビアの英字紙アラブ・ニューズ―「しんぶん赤旗」同上)

 

そもそも、イラク戦争は米英による国際法違反の先制攻撃から始まった。ファルージャ総攻撃やアブグレイブ刑務所での捕虜虐待は明らかに国際法違反である。

グローバルな軍事介入を生業とする米軍は、しばしば国際法を超越した行動をとる。アフガン・パキスタンで反米感情を煽っているリモコン操作による無人機爆撃もそうだ。無人機の性能をいくら高め、もっと精密なピンポイント爆撃ができるシステムを開発しても、民間人の巻き添え死傷率をゼロにすることはできない。なぜなら「水(民衆)のないところに魚(ゲリラ)は住めない」(毛沢東)からだ。

 

「日米同盟の深化」という場合の「日米同盟」とは、いうまでもなく軍事同盟のことだ。共同の仮想敵に対し、アメリカ軍と一体になって戦争する体制をつくるということは、日本自身が、国際法を、あるいは他国の主権を侵害する行動に踏み込んでいかざるをえないということだ。そんなことは、日本の安全保障のためには、米軍の駐留がやむを得ないと思っている人々でも簡単には認められないだろう。民主党・菅政権は明らかに日米安保体制を超越する道に踏み出そうとしているのだ。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。