プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

Xバンド・レーダーとは一体なにもの?

2006-04-12 16:32:24 | 政治経済
米国防総省のオベリング・ミサイル防衛局長は4日、ミサイル防衛(MD)用の米軍早期警戒レーダー(Xバンド・レーダー)を青森県つがる市の航空自衛隊車力(しゃりき)基地に数ヶ月以内に配備し、年内に試験運用を開始する意向を表明しました。Xバンド・レーダーとは一体なにものか?

Xバンド・レーダーとは、「X」と呼ばれる周波数帯の電波を放射し、敵の弾道ミサイルを発射段階から探知できるレーダーのことです。車力基地に配備されようとしているのは「前方展開移動型Xバンド・レーダー」(FBX―T)です。ユニットで構成され、車両や航空機、艦船による移動が可能です。

ブッシュ米政権が進める「ミサイル防衛」計画は敵の弾道ミサイル攻撃に対して「防衛の盾」をつくり、反撃の心配なく核兵器の使用を含む先制攻撃ができるようにするのが目的です。
しかも、Xバンド・レーダーは弾道ミサイルを探知するため他国の領域内にも電波を放射するため、配備自体がアジア近隣諸国に軍事的脅威を与えるもので、地域の緊張をいっそう高めることにつながります

車力基地が狙われているのは、敵の攻撃からXバンド・レーダー自体を防衛するのに必要な空自の地対空ミサイル部隊(高射隊)が配備されているからとの指摘もあります(「しんぶん赤旗」06.2.24)。

米国防総省・ミサイル防衛庁の2007会計年度(06年10月―07年9月)の予算資料は「最初の前方展開移動型Xバンド・レーダー(FBX―T)を06年に日本に配備する」と明記。海外初となる日本への配備を今年行うことを明らかにしていました。
米ミサイル防衛庁のブックレットは「多目的の前方展開移動型Xバンド・レーダーは大陸間弾道ミサイルと中距離ミサイルの脅威から米国を防衛するという国家目標にかなうように開発され、配備される」と明記し、“米国を防衛するための配備”であることを強調しています。
日本側は「日本に向かうミサイルを迎撃する能力、及び、日本の国民保護や被害対処のための能力を支援する」とし、“日本防衛のため”と言っていますが、主要目的が「米本土防衛用」であることは間違いありません

防衛庁の説明によると、Xバンド・レーダーが発する電波は熱を発し、立ち入り制限区域が必要になるとする一方、テレビやラジオなどへの電波障害はないとしています。しかし、米ミサイル防衛庁のXバンド・レーダーに関する説明資料では「家庭のテレビ、ラジオへの影響」について「可能性はある」と認めています。
米軍は昨年十二月、車力基地周辺の「電波環境調査」を実施しましたが、結果は公表していません。

政府は昨年12月の安全保障会議で、日米両国が共同技術研究を進めているミサイル防衛(MD)システムの次世代型迎撃ミサイルについて、2006年度から共同開発に入ることを正式に決めました。ミサイル防衛(MD)システムは完成されたものではありません。実戦で迎撃できる保証がなくても、まず配備するということです。とりあえず配備し、その後、実験・改良していけばよいという考え方です。相手国が新たな回避技術を開発すれば、それを上回る攻撃技術を開発し、配備する―。先の当てのない、ばく大な無駄遣いに突き進んでいこうとしています。喜ぶのは軍需企業です。日本国民の生活悪化をよそに、政府は、今年度の防衛庁予算に「ミサイル防衛」(MD)として、約1399億円を計上済みです。

米軍はかつて、弾道ミサイル探知という点でXバンド・レーダーと同じ機能を持つレーダー(OTHレーダー)を日本にいったん配備しながら「撤去した実績」があります。このレーダーが1960年代に配備された埼玉県所沢市では、核戦争のための弾道ミサイル探知レーダーだとして市をあげて反対運動に取り組み、75年に撤去が実現しました。世論と運動を大きく広げれば配備を食い止められることを示すものです。
つがる市を3月6日に訪問した日本共産党の高橋千鶴子衆院議員は福島弘芳市長との懇談で「レーダーが配備されれば、車力基地の役割は日本防衛と関係のないミサイル攻撃への対処へと大きく変わる。全国で自治体が米軍再編に対して声を上げているので孤立を恐れずおおいに声を上げてほしい」と話しました。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。