プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

沖縄新基地受け入れ迫る大手全国紙の異常

2006-04-11 18:40:15 | 政治経済
額賀防衛庁長官と島袋沖縄県名護市長は、キャンプ・シュワブ沿岸部(名護市)での新基地計画について、着陸用と離陸用の滑走路を二本つくることで合意しました。沿岸案反対の立場で当選した島袋市長が政府と「合意」したことは、市民に対する裏切り行為だという怒りの声があがる一方で、合意を評価し、新基地建設を推進することを迫る大手全国紙の論調はまことに異常といわざるを得ません。

各紙は社説でこの問題を取り上げました。「朝日」が「沖縄の苦衷はなお続く」としているぐらいで、「読売」=「早期移設へ着実に作業を進めよ」、「毎日」=「名護市の決断重く受け止めよ」、「日経」=「稲嶺知事は額賀・島袋合意に協力を」、「産経」=「沖縄県も現実対応さぐれ」などはいずれも、沖縄県に新基地建設を迫るものでした(「しんぶん赤旗」マスメディア時評06.4.11)。

これらの全国紙がほとんど唯一の根拠にしているのは、現在の米軍普天間基地が住民の安全を脅かしているという現実です。たとえば「毎日」は「普天間飛行場は宜野湾市の住宅地の真ん中に位置し、かねて航空機事故の危険性が指摘されてきた」とのべ、「沖縄にとっても、放置していい問題ではないはずだ」と、県の対応を迫っています。
しかし、普天間基地が周辺住民の暮らしと安全を脅かしているからといって、名護市への「移設」を認めるように迫るのは論理の飛躍以外のなにものでもありません。沖縄県民が求めているのは、普天間基地を名護市に移設することではなく、米軍基地を撤去・縮小し、実際に基地負担を軽減してほしいということです。
「根本的に問題になっていたのは、基地の危険除去のはずである」「政府は、県外・国外移設をどれほど真剣に検討したのだろうか」という「琉球新報」の立場こそ正論です

沖縄での新基地建設推進の立場に立つ全国紙は、三月におこなわれた山口・岩国での米軍艦載機の移転に反対する住民投票の際も、「それでも在日米軍再編は必要だ」(「読売」)「国の安全はどうするのか」(「産経」)と、住民投票の結果に反対し移転を受け入れるよう主張しました。

在日米軍再編成や新基地建設を押し付けようという全国紙の主張の根本には、無批判的な米国追随、日米同盟最優先の立場があります。たとえば「読売」社説は露骨です
「日米同盟の安定と強化という観点からも、政府は地元の理解を得つつ、移設を早期に実現しなければならない」「日本や地域の平和のために日米同盟を強化する上でも、政府は、責任を持って問題解決を急がねばならない」

現実を批判的に見るのではなく、盲目的に迎合し国民に思考停止を要求する新聞は、戦前、大本営発表の宣伝機関に成り下がった自己の苦い教訓を投げ捨てるものです。なぜ「日米同盟強化」なのか大手全国紙は何も答えない。

1951年サンフランシスコ講和条約のあともアメリカ軍は対ソ戦略前線基地として日本に居座り続け、沖縄を含めた北緯29度以南の南西諸島・小笠原諸島は、無期限かつ無制限に米軍の支配下に置かれました。ソ連崩壊後、対ソ戦略前線基地としての日本からの脱却の道を進むどころか自公政府は、周辺事態法、有事関連法などを成立させ、いまや日本のほとんどの空港、鉄道、港湾はいつでもアメリカ軍に提供しなければならない状況がつくりだされました。沖縄をはじめ日本列島全体がアメリカの全世界に対する強力な前線基地とされてしまったのです。これ以上「日米同盟を強化」してどうしろというのか。

靖国参拝を批判する国々に「内政干渉だ」と怒る前に「基地を提供しろ」「自衛隊を出せ」「もっと規制緩和しろ」「もっと米(コメ)や肉を買え」と迫るアメリカに飼い犬のように従順な小泉・竹中などの自民党幹部を批判の対象とすることこそ新聞の役割でしょう。



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1 コメント

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かの戦中と同じような全国紙、テレビ (tai532sho6)
2006-04-11 19:58:07
今日は。はじめまして。失礼します。



全国紙、テレビ等は本質的には戦前、戦中の政府報道部のような状態に成り下がっております。



戦争直後、あの侵略戦争に協力し、国民ををマインドコントロールし、戦争に協力させ、途端の苦しみに陥れ、ジャーナリズムとしては崩壊したことを忸怩たるものがあると反省したのにです。



ジャーナリズムの精神を失い、同じ過ちを犯している現在の彼らの末路は哀れでしょう。



庶民の手で、草の根から、根を張った民主的な情報を形成して行きたいと思っております。インターネットの存在には戦前の状況とは違って、民主的な庶民情報の形成を可能にする条件があると思います。



もちろん、既存の良心的な真のジャーナリズ精神を発揮しているメディアを活用し、支援して行くことには吝かではありません。



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