プロメテウスの政治経済コラム

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大銀行 史上最高決算 日本型金融コングロマリットのゆくえ

2006-05-24 21:26:58 | 政治経済
大手銀行6グループの06年3月期決算が23日、出そろいました。税金などを払った後の純利益は、6グループ合計で前期比4・2倍の3兆1212億円に達し、バブル期を上回り過去最高を更新しました(表参照)。公的資金の注入を受け、国民に異常なゼロ金利を押し付け、従業員や地域経済の犠牲の上に達成された好決算でした。

三菱UFJフィナンシャル・グループの最終利益は1兆1817円に達し、国内トップのトヨタ自動車に迫る水準です。三菱UFJの利益を大きく膨らませた要因の一つは、過去に不良債権の焦付きに備えて積んでいた貸倒引当金取崩しによる「戻し益」です。融資先の経営が再建されたために不要になり戻ってきたものです。
旧UFJ銀行は、ダイエーなど七つの大口融資先の不良債権処理を公的資金も使って強引に進めてきました。大幅なリストラや地域経済への犠牲を伴った処理の結果、ダイエーなどは黒字に転換。旧UFJが貸し倒れに備えた引当金は不要になりました。三菱UFJの場合、その額は6089億円にものぼります。

また、大銀行は人件費と店舗を減らすリストラを強引に進めました。
三井住友銀行の場合、国内の店舗数は、01年に578あったものが05年には412店舗に。従業員数は01年の2万7千人から05年には2万1千人に減らされています。行員のいないATMコーナーだけの店舗も増えました。
三菱UFJの畔柳信雄社長が「国民にお礼の気持ちを持たないといけない」と言ったことに対し、右派ジャーナリズムの読売まで「『国民へのお礼』は口先だけでなく、サービス向上に真正面から取り組むべきだ」と指摘しています(5月24日読売社説)。

重化学工業化の高度経済成長政策のもとで日本の大手銀は、預金貸出業務を中心とした伝統的銀行業務で「ジャパン・アズ・No.1」を謳歌してきました。しかし、産業構造の変化、バブル経済の崩壊やグローバル化が重なり、不況深刻化と不良債権の新規発生という悪循環の中で、淘汰されるか合併等を通じて生き残るかの選択を迫られました。金融当局は、国際金融機関の統合再編に遅れてはならじと、大手銀の収益力回復を不良債権処理の徹底と銀行、証券、保険等の「垣根」撤廃による金融コングロマリット化で一気に実現しようとしてきました。

銀行が金融コングロマリット化する一方で、先進国では、経済成長期を過ぎているため資金需要が細り、貸出難の状況となってきています。一部の富裕層と銀行がファンド(投資信託)を形成して証券、商品、外国為替の先物の投機を行うなど金融投機化の傾向を強めています。中小企業向け融資に参入し、地銀、第二地銀の経営を圧迫し、大手サラ金との提携を強め高金利で稼ぐこともやっています。日本でもM&Aが日常茶飯事となり、そのための資金の出し手は大銀行とファンドです。メガバンクという強い立場を悪用した悪徳商法も表面化しています。三井住友は中小企業への融資の見返りに金融派生商品の購入を強要し、金融庁から処分を受けました。
銀行の本来業務の先細りで、この3月期決算でも本業のもうけを示す実質業務純益は、6グループ合計で減りました。その一方で、投資信託などの手数料収入を含む「非金利収益」の増加は、各銀行とも顕著になっています。

日本型金融コングロマリットは、顧客に対する優越的地位の高まりや金融商品の複雑化に乗じ、抱き合わせ販売や利益相反行為によって顧客の被害を拡大する危険を強めています。大銀行の金融コングロマリット化は、金融資本の腐朽化と寄生性をさらに深めるように思えてなりません




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