プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

教基法改悪 道徳を法律によって強制してどうする?

2006-05-25 19:04:30 | 政治経済
教育基本法改定案の審議が衆院特別委員会で始まりました。法案は新たに第二条「教育の目標」を創設、「国を愛する態度」など二十に及ぶ徳目を列挙し、その目標達成を法律で義務づけようとしています。道徳教育の達成度を具体的な「態度」を通じて強制しようとするものです。子どもの柔らかい心を訓練と強制で、特定の鋳型にはめることになってしまいます。子どものしつけは犬や猫をしつけることと根本的に違います。

政府・与党が道徳教育を法制化することになぜこだわるのか。
文部科学省は2002年4月から、国公立・私立を問わず全ての小・中学生に道徳教育の副教材として『心のノート』を配布し、画一的な道徳の強制をすでに始めています。しかし、学習指導要領にとどまる限り、それは「文部科学省告示」にすぎません。現憲法下で裁判で争った場合法的拘束力を問われかねません。そこで学習指導要領の「道徳」の項目を法律に格上げすることで、国家による道徳強制を狙おうというわけです。改定案第二条の「愛国心」など二十項目の徳目は、現行の学習指導要領の「道徳」の項目を法制化にあたり、若干表現を修正したものです。

「国を愛する態度」などの「徳目」について、国家が目標達成を強いることは戦前・戦中の「教育勅語」の徳目を子どもに植えつけて戦争へと追いやった過ちを持ち出すまでもなく、人間を動物のレベルに貶める犯罪行為です。人間は動物でも機械でもありません。「自由な意思」を持つことこそ人間の証です。教育とは、人間の「自由な意思」を育てる文化的営みであり、その内容を法律で規定したり、国家が特定の価値観にしたがって関与したりすることは「人間」を育てる教育ではありません。

政府・与党の狙いははっきりしています。
「国を愛する態度」について、小泉首相は16日の政府答弁で「態度は心と一体として養われるもの」と述べ、「心」に踏み込む考えを示しました。首相はまた、教員は「法令等に基づく職務上の責務として児童生徒に対する指導を行っているものであり、思想、良心の自由の侵害になるものではない」と述べました。「愛国心」教育は職務であって、教師自身の思想・信条の自由を理由に拒否すべきでないというわけです。
自民党の町村信孝元文相は21日のNHK討論で「心と態度は表裏一体だ」「内心の強制まではしないが教育には一定程度強制が入る。一定の強制力がないと教育そのものが成り立たない」とのべ、事実上、「内心の自由」にまで踏み込む狙いを隠しません。
東京都の「君が代」強制に反対する教師には「態度」は、業務命令に従え、「心」は反対でもかまわないと人格分裂を強要していまいしたが、子どもは柔らかい心から教化すれば態度は自ずから一致するというわけです。

「あなたの愛国心はA級ですよ、B級ですよ、C級ですよとランク付けされ、A級日本人になるように家で教育しなさいといわれている気がします」―福岡市の「愛国心通信表」を受け取ったある保護者の声です。
「敗戦後遺症の発想を教育界から取り除いていかないと」―自民党の町村元文科相は、24日の衆院教育基本法特別委員会で、愛国心の強制を批判する教師たちを「敗戦後遺症」と揶揄しました。
教育基本法を巡るたたかいは、日本国民が自国民310万人の命とアジア諸国民2000万人の命の犠牲のうえに獲得した自由と民主主義、平和生存権を再び支配階級が奪還しようとする企てを許すのかどうかのたたかいです。


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