プロメテウスの政治経済コラム

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普天間基地問題   首相「お礼」発言、米「感謝」決議   県民・国民の神経を逆撫で

2010-06-26 20:54:46 | 政治経済
現在、全国どこも6月定例議会中である。沖縄県議会では25日、あの大人しい仲井真弘多知事が怒った。米軍基地を過重に負担していることに対する菅直人首相の「お礼」発言と米下院の「感謝決議」に対してである。
知事は共産、社大議員への答弁で、「沖縄の基地負担の現状に対する理解や、今回の日米共同発表が招いた県民の失望に対する認識が不足している」、「基地の過剰負担、事件事故、地位協定の改定、基地の整理縮小など、日米両政府に要求してきたことをそのままに感謝と言われてもいかがか。きちっと取り組んでほしい」と述べ、強い不快感を示した。
本土の人びとも他人事ではない。日本政府が沖縄を含む日本に米軍基地を提供することによって、米軍の「強固な前方展開」(米下院決議)を保障するということは、ベトナム、アフガン、イラクの人びとに対する米軍の加害責任の一端をわれわれも負っている、ということだ罪もない無辜の民衆に塗炭の苦しみを与えている米軍の前方展開は、日本の基地からの出撃に依存しないでは成り立たない。

 さすが、首相になった途端に自己の政権維持のためには過去の言説も簡単にひっくり返し、政治家として当然と開き直る菅氏。所信表明演説で沖縄県民の基地負担に「感謝」するといって顰蹙を買ったばかりなのに、よりによって沖縄戦の戦没者追悼日に沖縄入りして、沖縄県民の「基地負担がアジア太平洋の平和・安定につながってきた」と、またまた「お礼」を表明した。沖縄の地元紙・琉球新報の社説(12日付)が「謝罪ならまだしも感謝とは理解に苦しむ。感謝の言外に『今後とも負担をよろしく』と聞こえてならない。県民が求めているのは感謝の言葉などではない。これ以上犠牲や痛みを出さないという抜本的な政策の立案、実行である」と批判していたところである
アメリカ議会で「感謝」決議があがるので、右に倣えという菅首相の対米従属の根深さと無神経さは歴代首相のなかでもなかなかのものだ。マスメディアも、ただ追随報道をするのではなく、沖縄県民の神経を逆撫でしたというぐらいは、きちっと伝えるべきである。

 「沖縄の人々に感謝を表明する」-。24日、米下院が採択した沖縄の基地負担に対する「感謝決議」に対しても、沖縄県民は「基地を押し付けておいて『感謝』とは県民をばかにしている」と怒りの声を上げている。
4・25県民大会で共同代表を務めた県婦人連合会長の大城節子さん(76)は「感謝するくらいなら早く基地を撤去して」と怒った。決議に対し「県民大会で示した基地撤去を求める沖縄の声が米国に伝わっていない。県民の感情を逆なでしている」と怒りで声を震わせた。米軍普天間飛行場の県外移設を目指し運動を展開している「カマドゥー小たちの集い」のメンバー、知念ウシさん(43)=那覇市=は「一言で言えばノーサンキュー。沖縄での基地移設反対の動きをアメリカ側は『ちょっとまずいかも』と思っているのではないか」と、米国側の危機意識の表れという見方を示した(琉球新報2010年6月26日)。

 琉球大国際沖縄研究所の我部政明所長は、菅直人首相が23日の沖縄全戦没者追悼式で沖縄の基地負担に「おわび申し上げる」と陳謝したことと米下院の感謝決議は「同じこと」と指摘する。「どちらも(陳謝や感謝はするが)『今後も基地を引き受けてほしい』という意味」とその意図を語った(琉球新報 同上)。
沖縄に基地を置き続ようとする米国、首相になった途端にそれに屈従する菅首相。仲井真知事は、「県民としてストンと胸に落ちない。沖縄が日米両政府に長い間、要請してきた事件・事故や地位協定の改定、基地の整理縮小など、基地の過重負担をそのままにしたままで、『感謝』と言われてもいかがなものか」と強い不満を表明。「そういうことにきちっと取り組んでいただければ、むしろ私どもから感謝申し上げたい心境ですらある」と皮肉る気持ちがよくわかる

今なお、枯葉剤の後遺症に苦しむベトナムの人びと、毎日、難民キャンプで過酷な生活を強いられているアフガン、イラクの人びとが沖縄の米軍基地に感謝するアメリカ議会、お礼を言う日本政府の首相のことを知ったら、どう思うか。

 私たちは、北ベトナムへの爆撃開始直後の65年3月、南ベトナムのダナンに最初に上陸した地上部隊が沖縄の第3海兵師団の5000人だったとことを忘れてはならない。海兵隊の増派部隊はすべて沖縄で訓練を受けた。嘉手納からはB52爆撃機が月平均でのべ350機出撃した。
アフガン戦争では横須賀所属の艦船11隻中9隻が01年10月からの「不朽の自由」作戦に参加。キティホーク艦載機、岩国所属機も空爆に参加。沖縄海兵隊は、常時500~1000人規模でカンダハルやパキスタン国境地帯に投入されている。
イラク戦争開戦時には、在日米軍基地から約1万人が参加。ミサイル巡洋艦カウペンスは、イラクへの第一撃となるトマホークを発射。04年のファルージャ虐殺の主役を果たしたのは、沖縄の第3海兵師団及び31海兵遠征隊であった。

 もし私が、ベトナム人であり、アフガン、イラク人だったら、米軍の沖縄基地に感謝する日本政府の首相を決して許さないだろう。

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1 コメント

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Unknown (黄色いバスター)
2013-01-20 10:29:22
基地負担を感謝されてもうれしくねーやい!それより謝罪して、基地を減らせ!
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