プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

菅・民主党の自民党化の背景   “七割の風呂”から出ることができるか

2010-06-28 21:38:39 | 政治経済

参院選へ向けた民主党の「政権政策」には、自民党の「政策集」にそっくりな文章や表現が随所に見られる。明らかな菅・民主党の自民党化である。しかし、昨年の総選挙で民主党が大勝したのは明らかに、構造改革政治をやめて福祉を実現してほしいという反自公政権の声であった。日本国民は、とうとう1票の力で自公政権を倒したのだ。ところが鳩山新政権は、普天間問題でも福祉でもジグザグ、裏切りを繰り返して自壊してしまった。鳩山政権のはみ出しを許さないアメリカ、財界の巻き返しに対して党としてのまとまりもなく、国民と一緒になって力を合わせ闘う姿勢がないために、国民の側も見捨ててしまったのだ。
アメリカ、財界は、国家機構のあらゆるネットワークを通じて、マスメディアも動員しながら、菅新首相に鳩山政権のはみ出しを元に戻して構造改革、日米同盟再建路線をとることを要求し、菅首相は忠実にこの要求に応えようとしている参院選へ向けた民主党の「政権政策」が、自民党の「政策集」にそっくりとなるのは、論理の必然である。構造改革政治をやめて福祉を実現してほしいという反自公政権の国民の声は今度の参議院選挙でどのように発揮されるのか。“七割のお風呂”(渡辺治・一橋大名誉教授)から出て“政治革新”を決断できるのか。まだまだ時間がかかるのか。

 鳩山政権が鳩山自身・小沢の辞任で自壊し、菅・民主党は、外交・安保、財政・経済・税制など肝心なところで自民党政治に先祖帰りしてしまった。だからといって、私は、昨年の総選挙で「政権交代」を実現させたことが、すべて徒労に帰したとは思わない。国民の力で政権を倒した経験は貴重である。平時での国民の政治意識は一挙に変わるものではない。とりわけ日本では、歴史的に階級的労働組合の力が弱く、社会を科学的に分析する学習運動もほとんどないといってよい。小沢・民主党が、「政権交代」だけを目指して、反自公政治的マニフェストを掲げて国民の関心を惹きつけ、自民党の地方の支持基盤を、過去に身につけた手管で小沢側に略奪してしまえば、民主党の選挙での大勝はある意味必然であった。しかも、300の小選挙区制効果がそれを倍増した。

 国民は、貧困と格差、セーフティーネットの破壊が自公政権の構造改革政治のせいであるということは理解していたそして、民主党の中堅議員の多くは、民主党が国会で野党第一党だったということもあって、共産党や社民党と共闘の形で、市民運動の現場にも出向き、反自公、反構造改革・福祉派として活躍した。このような状況下で、国民が、自公政権に代わる民主党に構造改革政治をやめて福祉を実現してほしいという期待をかけたとしても考えが浅いと責められない

 鳩山首相は、個人としては国民の期待をよく理解し、なんとか従来の自公政治に代わる新しい国民本位の政治へ第一歩を踏み出したいともがいたと思う。しかし、日米同盟堅持派はアメリカだけではなく、マスメディアも含めて国内支配層の多数派である。日本型企業社会をつくり上げた官僚や国家機構は、大企業へ国家的支援を注ぐことこそが、日本経済安泰の道であるという思考が染み付いている。財界が張り巡らしたネットワークは各種審議会、御用学者、御用マスコミなどあらゆる部面で健在である。支配階級は鳩山政権のはみ出しを責め、こうして、菅・民主党は国民の期待とは逆に、構造改革、日米同盟の再建という支配階級の期待を担うことになった。

 昨年、私たち国民は、「政権交代」に期待をかけた。しかし、階級社会での政治闘争についての基礎理論をもち、日本で民主党が支配階級からどのような役割を期待された政党であり、党としてまとまった綱領ももたない、浮き草のような政党であることを理解すれば、この党に多大な期待をかけるリスクを予見することは、可能であった。ところが私たちは、渡辺治・一橋大名誉教授がつとに指摘されるように、昨年のあれほど高揚した選挙においても、“七割のお風呂”を出ることはできなかった。
 下表のとおり、結局、私たちは、支配階級の要求に応えて、構造改革、日米同盟堅持の路線を自民、民主で競わせるという保守二大政党制の枠内で踊っていたのだ。

 これから、菅・民主党の国民への裏切りが、さまざまな形で出てくるだろう。
しかし、沖縄県民が辺野古新基地の日米合意で納得するはずがない。消費税増税・法人税引き下げの“大連立”も憲法改悪の“大連立”も平和で安定した国民の暮らしとは真っ向から対立する。国民は、保守二大政党では、政治の革新が不可能であることをさまざまな政治経験を通じて学ぶだろう

 私は、国民がいつまでも、“七割のお風呂”に留まっているとは思わない。“七割のお風呂”ら出ていつ“政治革新”を決断できるか。まだまだ時間がかかるのか。来月の参議院選挙が次へのステップであることだけは確かである。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。