プロメテウスの政治経済コラム

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『派遣村』村民の生活保護受給  これが本来の姿  法律の適正な運用を!

2009-02-02 19:20:57 | 政治経済
「年越し派遣村」に集まった人たちの生活保護申請が全員、短期間で受給できたことについて、これをあたかも「超法規的な特別扱い」のようにいう人びとがいる。しかし、これこそが生活保護法が本来予定する「あるべき姿」であって、従来の生活保護行政は生活保護法を守らない運用を行っていたということだ。これを「画期的な成果」と言わざるを得ないところに、日本の生活保護行政のけしからぬ現実がる。

日本の生活保護行政のけしからぬ現実の象徴は北九州市の3年連続の餓死者であった。しかし、生活保護法を守らない運用は、多かれ少なかれ、全国の自治体の生活保護行政の特徴である。窓口で、さまざまな理由をつけて申請を受理しないのが「水際作戦」、一端は受理するが、「辞退届」を出させ廃止等に追い込むのが「硫黄島作戦」である。
「扶養義務者に援助してもらいなさい」「65歳までは稼働年齢なので頑張って仕事を見つけなさい」「持ち家を処分しなさい」「所持金がなくなってからきなさい」などなどがその常套句である。

ところが、東京日比谷で取り組まれた「年越し派遣村」の生活保護申請者全員が短期間に相次いで受給することができ、「全国の生活保護行政の改善につながる画期的な成果だ」との声があがっている。これまでは、「派遣切り」にあっても多くの労働者が「働く能力(稼動能力)があるから」「住居が定まっていないから」との理由で「水際作戦」にあい、申請すら受け付けてもらえないというのが通例であった。しかし、今回は、「稼動能力」があっても適当な求人がない場合には、生活保護の対象とされた。また、定まった住所がないことも問題にはされなかった。申請から決定までの期間も4日以内という速さであった。

マスコミでも大きく取り上げられ、全国注視のなかで、千代田区役所も妙なことはできなかったのであろう。しかし、これが「特別扱い」などでなく、生活保護行政の「本来の姿」である。
これまで、生活保護受給者の9割以上が65歳以上の高齢者と疾病・障害者で86%。つまり「稼働能力」のある層は生活保護から排除されてきた。しかし、稼働能力があると言っても働く場所がないと働けない。住居がないと就職活動すらできない。また、アルバイトとかを見つけても給料日までの生活費、交通費はどうするのか。まず疲弊仕切った心身を回復しないと働くこともできない・・・こうした問題を放置、いや「水際作戦」と称して排除してきたのがこれまでの「生活保護」行政だった。
そういう意味で、今回の措置は、大きな転機となりうる

うっかり足を滑らせたら、最後まで滑り落ちてしまう『すべり台社会』(湯浅誠さん)のなかで、最後のセーフティネットの「生活保護」が機能不全に陥ると残るセーフティネットが、刑務所というのでは、あまりに悲しい。
生活保護法が法律の本来の姿通り、適正に運用されれば、例えば次のようになる
①「住所」がなくても利用できる。
生活保護法19条1項によれば、居住地の無い者については、その「現在地」を所菅する福祉事務所が生活保護の実施責任を負う。
②生活保護費でアパートや家財道具を確保することができる。
生活保護法30条1項は生活扶助は「居宅保護を原則」とし、住居の無い者に対しても、生活保護費からアパート等の敷金(保証金)、家具什器費、布団代、被服費などを支給することができる。
③即日でも保護決定はできる。
原則は14日以内だが(同法24条3項)、急迫状況にあるときは、速やかに職権で保護を決定しなければならない(同法25条1項)。住居も収入もなくほとんど所持金もない「派遣村」村民の保護申請にすぐに応えるのは、法の本来の「あるべき姿」なのだ。
④失業者やワーキングプアも生活保護が利用できる。
働く能力があっても、それを活用し働く場を失った失業者や最低限の生活を維持する収入が得られないワーキングプアも当然に生活保護を利用できる。

東京・日比谷公園で年末年始に行われた「年越し派遣村」の取り組みは、「命をつなぎ生存権を保障する貴い経験」となった。厳しい現実を前に、支援者に助けられ多くの人びとも、生活「保護」という用語がもつスティグマ(恥の烙印)意識を払拭するほかなかったのだろう
それにしても、派遣切りにあった若者、失業者をきちんと保護することは国、自治体の責任であるが、一方で、巨額の内部留保をためこんでいる大企業の社会的責任の放棄をただ行政が尻拭いするだけでは、多くの国民は納得できない。彼らに内部留保を吐き出させ、派遣切りの中止、雇用の確保、財政負担をきっちりやってもらわないといけない

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