プロメテウスの政治経済コラム

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庶民大増税の第一歩がスタート

2005-11-26 20:03:24 | 政治経済
政府税制調査会(首相の諮問機関、石弘光会長)は25日、2006年度税制「改正」答申を小泉首相に提出しました。答申は07年度からの所得税・住民税の定率減税全廃による三・三兆円の増税を盛り込みました。定率減税とは、所得税額の20%(上限25万円)、個人住民税額の15%(同4万円)をそれぞれ減額する措置。所得税・住民税の最高税率の引下げ(金持ち減税)、法人税・事業税の税率引下げ(企業減税)とあわせ、「恒久的減税」として1999年に導入されました。年間の減税規模は、所得税2.5兆円、個人住民税0.8兆円で計3.3兆円です。小泉政権は2005年度税制「改正」で既に、減税幅を半分に圧縮することを決めています(半減の時期は、所得税は06年1月、個人住民税は同年6月徴収分から)。今回の政府税調の答申を受け、来年度税制「改正」をめぐる今後の議論は、自民党税制調査会に移り、12月中旬に与党税制「改正」大綱が決定されます。その後、来年一月に政府が06年度税制「改正」の要綱を決定。通常国会で各税制「改正」法案が審議されることになります。このままでは、定率減税の残り半分はそれぞれ一年後に廃止されます。年収800万円の標準世帯で月額約一万円の増税となります。所得課税については、今後さらに、扶養控除、給与所得控除等の整理・縮小、国税から地方税への税源移譲、所得区分の見直し、金融所得課税の優遇などが、予定されています。定率減税の廃止は中堅勤労所得者(庶民)大増税のまさに第一歩です。07年度には、消費税率引上げも計画されています。定率減税の廃止について、「景気の現状」と「導入時の議論」を踏まえるなら廃止してさしつかえない、と石弘光・政府税調会長は説明していますが、本当にそうでしょうか(「赤旗」05.11.26)。
景気が良くなったと言いますが、バブル期を上回る史上空前の利益を上げている大企業とは対照的に、民間サラリーマンの給与総額は減り続けています。国税庁の「民間給与の実態」によると、サラリーマンの給与総額は定率減税を導入した1999年以降、6年連続でマイナスとなり、98年の水準から21兆円も落ち込みました。厚労省の国民生活基礎調査によると「生活が苦しい」と答えた世帯は過去最悪の55.8%に上っています。家計部門は定率減税の導入時よりむしろ悪化し回復とは程遠い冷え込みが続いています。景気の実態は定率減税を継続する理由となることはあっても廃止する理由にはなりえません。
谷垣財務相は、「定率減税は、小渕内閣の時に当時の経済状況を受けて異例の措置としてやったもの」と言っていますが、定率減税は、それ以前の特別減税のように一年限りの時限措置ではなく、「期限を定めないという意味でまさに恒久的な減税」(当時の小渕首相答弁)として導入されました。
「景気の現状」からみても、「導入時の議論」にてらしても、石会長の言い分は、まったく事実を無視した発言です。
所得税・住民税の最高税率の引下げ(金持ち減税)、法人税・事業税の税率引下げ(企業減税)は恒久的措置として扱い、定率減税だけを廃止する措置は許されません。おとなしいサラリーマンをバカにした話です。
いま企業部門は余剰資金が82兆円(04年末)に達するほど、史上空前の利益の使い道に困っています。税や賃金で社会還元すべきではないでしょうか。
庶民増税を中止に追い込み、税制の不公平を是正させるために、あらゆるルートで反対の声をあげましょう。

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