プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

楽天・TBS問題―放送・通信融合のゆくえ

2005-11-27 18:13:46 | トピックス
インターネット企業の楽天がTBS株を取得、経営統合を迫って、話題となっています。放送のデジタル化が進むにつれ、テレビ側はインターネットを通じての配信を狙い、ネット側はテレビのコンテンツ制作能力の獲得をめざして、双方が接近するのは、ある意味で避けがたい傾向でしょう。問題は、放送を「グローバル市場においても勝ち抜く」(楽天からTBSへの申し入れ書)というIT資本の論理にゆだねて本当にいいのだろうかということです。
放送は、電波という資源をひとしく誰もが享受するということで、公共性が求められます。ネットで見たいものを見たい者だけが見るのとは、わけが違います。「教養、教育、報道、娯楽」を総合的にとりあげることが求められます。また放送法によって「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」が義務付けられています。放送には、対立するものを幅広くとりあげる社会的使命があるのです。「お金を持っていれば、誰でも放送局が買える。そんな市場の論理と相容れないものが、放送の仕事にはあります。」(高木盛正・TBS労組委員長)
もともと郵政省は、外部資本の放送事業への介入や、特定企業による独占的な支配を防ぐ目的で、株式の上場禁止や、メディア支配の集中排除を指導して来ました(66年以前に開局していた5局はそのまま上場)。ところが、新時代における放送事業の積極的展開を図る目的で1994年に株式上場を解禁しました。フジテレビが97年、テレビ朝日が2000年、テレビ東京が今年株式を上場しました。ライブドアや楽天の暗躍の背景にはデジタル化へ向けた放送事業の規制緩和があります。今月末に予定されているTBS側から楽天への回答が注目されるところです。

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