プロメテウスの政治経済コラム

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新党「たちあがれ日本」、「みんなの党」 「民主でも自民でもない第三極」は無理 支配層の悩みは大きい

2010-04-12 19:15:51 | 政治経済
小泉・竹中新自由主義「構造改革」が調子に乗りすぎて、いざ、民主党の出番というときに、当の民主党が保守政党の枠を逸脱することによって国民の支持を獲得してしまったので、財界、大マスコミの保守二大政党制構想は、一端頓挫を余儀なくされた。自民党の敗北が見えてきた時点から、財界、大マスコミはしばらく民主党を政権につかせて、美辞麗句や単純批判ではすまない現実の厳しさのなかで、民主党の陶冶に力を入れ、実践で政権党としての自覚を促し、民主党を第二保守政党の枠内に引き戻すことを考えるほかなくなった。ところが、未曾有の経済危機のなかで、国民の暮らしがますます厳しく先行き不透明となるなかで、従来どおりの強欲を続ける財界やアメリカにモノが言えない民主党への国民の期待が急速にしぼみ、いまや「民主でも自民でもない第三極」がマスコミでも取沙汰されるようになった。財界、大マスコミにとって、「第三極」が革新政党に向かうことはなんとしても阻止しなければならない。新党「たちあがれ日本」、「みんなの党」は、支配層の期待に応えることができるか

  昨年の総選挙で、政権交代が行われ、自公政権に終止符が打たれたが、それから半年すぎて民主党連立政権の支持率が急速に落ちている。新政権の7カ月の動きをふりかえると、国民の多くが変化を望んだ肝心要の問題で、公約を裏切ったり、期待を裏切ったりすることの連続だった。たとえば、お年寄りを「姥(うば)捨て山」に追いやる後期高齢者医療制度について、(民主党は)「撤廃する」というのが公約だったにもかかわらず、4年後に先送りする。しかも代わり検討されている「新制度」は、65歳以上を別枠の制度にする――「姥捨て山」を拡大するというような案である。それから、労働者派遣法の改正では、(政府提出の法案は)「与党3党案」と比べても財界の要求で大きく後退し、抜け穴だらけの「使い捨て」労働温存法案になってしまった。普天間基地問題では、ともかくも「県外、国外」(移設)といっていたのが、結局(沖縄)「県内」に新基地を押し付けるという方向になっている。そして、「政治とカネ」の一連の問題をめぐって、何らの自浄作用も果たさないという姿勢がつづいている。鳩山首相は優柔不断で、政府・与党内のゴタゴタが目に付く。こうなると、政治の中身も、政治の体質も、自民党と変わらないということだ。

 財界、大マスコミは、民主党を陶冶し、第二保守政党の枠内に引き戻すことを考えていたが、これは、鷹揚に構えていられない状況である。民主党の支持率が低下しても、自民党の支持率が上がらない。新自由主義「構造改革」政治を再建するまえに、国民の政治意識が前に進み、革新政党に向かってしまったら大変である。そこで、「自民党には不満がいっぱいだが、民主党にも不安がいっぱい」―だと、今売り出し中の、渡辺喜美元行革担当相が代表を務める「みんなの党」への肩入れを始めたまだ勢力は大きくないが(衆院5、参院1)、「みんなの党」はもっともストレートに新自由主義「構造改革」を掲げており、財界の要求をもっとも忠実に反映する政党である。
「憲法改正と消費税増税という最悪のコンビ」と共産党・市田書記局長から酷評された「たちあがれ日本」も財界にとっては、落ち目の自民党の補完政党である。

 財界の意向を受けてマスメディアは、「みんなの党」を持ち上げ始めた。フジテレビ系「新報道2001」(3月7日)は、「政界再編の行方を左右する」として、政党党首としては、みんなの党の渡辺喜美代表だけを呼んで、同党が掲げる「脱官僚」などの主張に沿って民主、自民の代表らと討論させた。3月13日放送のTBS系番組「サタデーずばッと」では、司会のみのもんた氏が、みんなの党を支持率上昇で「第三極」に浮上したと紹介している。
渡辺氏は最近出版した自著(『民主党政治の正体』)で、「『民間にできることは民間に、地域にできることは地域に』という構造改革を」と強調。「中途半端に終った『小泉・竹中路線』の失敗を乗り越えた真の本格的改革路線を構築」することが「大事な本質」だという。「みんなの党」は、「小泉構造改革路線の唯一の継承者、郵政民営化の巻き戻しに反対する党」というとおり、「構造改革」路線を徹底するというのが、党の基本方針である。昨年の総選挙「マニフェスト(政権公約)」では、「地域主権型道州制を導入」と掲げ、「国の中央省庁の役割は、外交・安全保障、通貨、マクロ経済、社会保障のナショナルミニマムに限定し、大幅に縮小・再編」と主張。また、「成長なくして分配なし」(渡辺氏・前書)として、「強く伸びる企業を助け、時代の流れについていけなくなった弱い企業、能力の低い経営者を市場から退出促進する…伸びる産業、強い企業に、雇用、人材を移転促進していく」とし、「法人税の減税」を掲げる一方、労働分野では「正規・非正規社員間の流動性を確保」するという

 一端頓挫した新自由主義「構造改革」路線の巻き返しは、財界の悲願である。しかし、ここまで、ストレートに財界の要求に応える「みんなの党」は、自公政権に退場の審判を下した国民の意思に真っ向から逆行するものだけに、国民との深い矛盾がいずれ明らかになるだろう。支配層の悩みは大きい。

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