プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

憲法「改正」「読売」世論調査  賛否拮抗 無意味な改憲手続き法は凍結・廃止を!

2010-04-13 16:11:28 | 政治経済
改憲派の読売新聞が1981年から継続して行っている「憲法」世論調査で、昨年3月調査では「改正」賛成(52%)が反対(36%)を大きく上回っていたが、今年の調査では、反対が6㌽増加し、「改正」反対(42%)と賛成(43%)がわずか1㌽の差で拮抗していることがわかった。改正賛成派は、民主支持層で42%(昨年53%)、自民支持層でも41%(同54%)にとどまり、ともに反対派を下回った。戦争放棄などを定めた憲法9条についても、「解釈や運用で対応するのは限界なので改正する」が32%(昨年38%)に減少し、「これまで通り解釈や運用で対応する」44%(同33%)が上回った(「読売」2010年4月9日)。
このような状況下で、2007年に安倍自公政権が強引に成立させた改憲手続き法が3年間で必要な法整備をやるという「宿題」になんら手をつけないまま、5月18日に施行期日を迎える。総務省は予定どおり、5月18日に施行させようと準備に余念がない。しかし、施行しても意味のない改憲手続き法は凍結し、いったん廃止にして出直すべきだ。

 改憲派の「読売」は、自民党が1月党大会で決めた新綱領で、「日本らしい日本の姿を示し、世界に貢献できる新憲法の制定を目指す」と打ち出したにもかかわらず、「自民党支持層でも改正賛成派が減少し、わずかとはいえ改正反対派を下回った」ことを問題にする。「党勢の衰えや党執行部の弱体化などから、改憲の訴えに、力強さを欠いているためではないか」とし、憲法改正手続きを定めた国民投票法が、いよいよ来月18日に施行され、「法律上は、憲法改正原案の提出が可能になる」と述べ、「同法成立により衆参両院に設置された憲法審査会が、『18歳選挙権』などの検討(「宿題」のこと)もしないまま、3年近く休業状態にある」と嘆いている(「読売」 同上)。

 改憲手続き法の附則では、国民投票年齢や公務員法の政治活動規制の国民投票運動への適用をめぐる法整備などを、成立からの3年間で進めることを前提にしていた。この法律自体がもともと宿題つきの「未完成」な法律だったのだ。そんな「未完成」なまま法律になってしまったのは、当時の安倍内閣が「任期中の改憲」を掲げ、2011年に国民投票を実施するとして、自公の数の力を頼りに強引に押し切ろうとしたからであるところが、日米支配層が思うようには、日本国民は緊急に憲法を「改正」しなければならない必要性を感じていない。だから、その後の国会で必要な法整備は一切進まなかったのだ。

 いま、総務省は本則18歳の投票年齢を何の議論もしないまま、「20歳」と読み替え、公務員法の法整備もないまま、現行の公務員法にしたがって、5月18日に法律を施行させようとしている。18歳にするためには、民法や公選法などの改正が必要である。なんの法整備をしないで、「20歳」と読み替えることは、まったく「想定外」のことである(附則3条ノ2の読み替え規定は、法整備をしたうえで、関連法の施行日と“時間差”が出た場合の読み替え規定であり、法整備をしないことは想定していない)。現行公務員法は、あまりにも広く公務員の政治活動を禁止しており、最近も国公法・堀越事件で東京高裁が違憲判決を出したばかりである。だから、国民投票運動を適用除外にするための法整備が宿題となっていたのだ。

 現状では、改憲手続き法は、法の必要性も含めて正面から問い直すべきである。少なくとも、未整備事項を議論するためということで、3年間の施行期間を置き、衆参両院の憲法審査会での改憲原案の発議も凍結したのだから、これから改めて法整備を議論するというなら、憲法審査会での改憲原案の発議も凍結すべきであり、そして、改憲の発議ができなければ、国民投票も行われないのだから、国民投票法案を矛盾を抱えたまま、無理に施行させることもないのだ。
09年6月、安倍晋三の意向を受けついだ麻生内閣により衆議院憲法審査会「規程」が強行採決されたが、当時の野党が委員の選出にも応じなかったため、衆議院審査会はつくられず、野党多数の参議院では「規程」の議論すら行われなかった。憲法審査会は改憲手続き法成立後、2年9ヵ月、まったく始動していないのだ。
改憲派は、強引な法律施行で、憲法審査会を動かしたいのだろうが(凍結をするなら憲法審査会をと言いたいのだろうが)、まったくの邪道であり、事態は混迷するばかりである。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。