プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

高校無償化 朝鮮学校除外  第三者機関で是非を判断してもらう話ではない

2010-03-13 20:48:23 | 政治経済

衆院文部科学委員会は12日、高校無償化法案を施行3年後の見直し規定を加えた上で、民主、公明、共産各党の賛成、自民党の反対で可決した。高等教育の無償化は、世界の大勢である。1979年、日本政府は国際人権A規約およびB規約(自由権規約)とも批准したが、その際、A規約第13条2項(b)および(c)については、他のいくつかの条項とあわせて、日本政府は「拘束されない権利を留保する」ことを宣言し、以来、31年近く経過した現在においてもなお留保し続けている。“高校や大学の学費無料化をめざす”という国際人権規約の条項を承認していないのは、2008年ルアンダが留保を撤回したため、批准国160国のうち、日本とマダガスカルの2カ国だけである。中国や北朝鮮の人権問題を偉そうに批判する日本であるが、「人権後進国」日本は、自分たちが知らないだけで、世界では有名な話である。これではやっぱりまずいと思ったのか、民主党は高校授業料「無償化」を看板政策の1つに掲げた。ところが、朝鮮高校だけは、除外するという。口先だけは、いろいろ言ってみるけど、ちょっと問題が出てくると自分では何も決められない鳩山首相。高校無償化の対象に朝鮮学校を含めることの是非について、内閣府か文部科学省に第三者機関を設置して対応を検討してもらうという。馬鹿じゃなかろうか。第三者機関の委員には手当ても要るだろう。原理原則をもたない政治家にいつまでも付き合っていられない。

 鳩山首相は11日、「(朝鮮学校の教育課程が)日本の高校に類する課程なのか、何らかの客観的な基準を作る必要がある。ある程度時間がかかるのではないか」と述べたという。馬鹿も休み休みに言ってもらいた。朝鮮学校は、きのう今日に始まったものではない。その教育課程は、日本の6・3・3・4制に合わせたものであり、学校教育に類する教育を行うものとして、各種学校として認定されている。
政府の高校無償化法案は、公立、私立の高校とともに、「高校課程に類する各種学校」を対象とすると明記。文科省の当初の予算案には、朝鮮学校やブラジル人の学校のほか、多国籍の子どもが通うインターナショナルスクールなども対象とすることとしていた。実際、朝鮮学校では、朝鮮史や朝鮮語の授業以外は日本の学習指導要領に準拠した教科書が使われ、国公立大学を含むほとんどの大学が朝鮮学校生徒の受験や入学を認めている。朝鮮学校の生徒の比率も、北朝鮮籍と韓国籍がほぼ半分ずつを占め、他の数%を日本人や他の国籍の生徒が占めるなど、多様な構成となっている。北朝鮮による日本人拉致問題を利用して、北朝鮮という特定の国との関係だけを理由に教育に政治を持ち込むのは、もはや理屈ではない。

 戦時中は、本来の国籍を剥奪のうえ無理やり日本国籍を押し付けられ、戦後はサンフランシスコ講和条約が発効するとともに、日本国内に残された在日韓国人・朝鮮人・台湾人は日本国籍を喪失することになった。彼らのうち、在日コリアの子孫がいまの朝鮮高校生徒である。
公立、私立、そして様々な外国人学校を含む各種学校が全て無償化されるなか、朝鮮学校のみを排除する意図は何か。北朝鮮による日本人拉致問題を利用して、自民党靖国派の凋落、民主党政権の誕生に危機感をもった、右翼保守派が過激行動を売り物にした「在日特会」らを手足に使いながら、排外主義を煽るためである

『週刊金曜日』(2010・3・12 790号)に、「在日特会」の桜井誠会長へのインタビュー記事(内容は在日外国人参政権付与問題に関するもの)が出ているが、最近の右翼の頭脳の貧困さにはあきれてしまった。まったく何の理念も論理もない。被害妄想感情に駆られ、ただ「話し合いの余地はない」と喚いているだけである。(私がとやかく言うことでないかも知れないが、「拉致被害者家族連絡会(家族会)」の皆さんが、「特定失踪者問題調査会」や「在日特会」、中井洽拉致問題担当相などを本気で頼りにできると考えているなら、当分、問題が解決しないということを覚悟するほかないものと思う)。

 『週刊金曜日』の編集長の北村肇さんが、上記790号の編集長後記で書いている。
普段から漢字(表意文字)とひらがな(表音文字)を一緒に脳で処理する日本人は、マンガを読む速度が、欧米人より格段に速いという。絵とふきだしを瞬時に認識することができるからである。ところが、米国属国の日本は、せっせと英語教育に力を入れている。そして、何とも不思議なのは、右翼保守陣営(言論界も含め)から英語排斥論が出てこない。一方で、外国人参政権問題では、「日本が滅びる」「中国に占領される」という勇ましい言葉が飛び交う。どうやら、こうした「排外主義」の主張はもっぱら中国、コリアに向けられ、米国は範疇に入らないらしい。強い者には服従し弱い者は排除する―これでは大和魂も武士道もあったものではない。
残念ながら、これが今の日本の右翼なのだ。

 高度成長が終わり、新自由主義に虐められ、暮らしはこの先、どんどん悪くなるばかりで、日本の若者には未来が見えない。鳩山政権が、在日コリアの人びとに「ゴキブリ」「キムチ臭い」などと喚いて溜飲を下げる寂しい右翼に迎合することを許すようでは、何のための政権交代だったのか。私たちは、もう一度よく考えなければならない。


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1 コメント

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Unknown (KYY)
2010-03-22 23:40:37
鳩山氏はもともと拉致問題には熱心だったから、この迎合は想定の範囲内です。

もっとも、議論のややこしい高校無償化を先行させたのがそもそもの誤りで、義務教育の完全無償化のほうが先の気がしますが。
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