プロメテウスの政治経済コラム

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社保庁職員525人解雇処分  厚労省がリストラ名目の不当解雇

2009-12-30 18:28:17 | 政治経済
社会保険庁は28日、来年1月1日に発足する後継組織の「日本年金機構」に移れず、民間の解雇に当たる分限免職となる職員が525人に上ると発表した。消えた年金問題など、世間の社保庁職員に対する風当たりは強い。自公政権が、自らの責任を棚上げにして彼らを見せしめのように攻撃したこともあって525人が解雇処分を受けたからといって同情不要というのが、一般の社会風潮かもしれない。しかし、日本は法治国家である。年金記録を覘かれて国民保険料の不納付を指摘された政治家たちが報復的に決めた、過去一度でも懲戒処分を受けた者は一律に不採用・分限免職とするという前政権の閣議決定は、労働法制や国家公務員法に抵触する疑いが濃厚である。資本の横暴から労働者を守らなければならない厚労省が先頭に立ってリストラ名目の不当解雇を強行するのを許しておけば、明日はわが身となるかも知れないのだ。

 来月1日の「日本年金機構」発足で、社会保険庁が今月末に廃止となるのに伴い、長妻昭厚生労働相は28日、525人の職員に対して、民間企業の解雇にあたる「分限免職」を発令した。行政の公正・中立性を保障するため憲法などで身分が保障されている公務員の大量解雇は例がない(「しんぶん赤旗」2009年12月29日)。
社保庁の組織ガバナンスやコンプライアンス意識の欠如の責任をすべて個々の現場職員の資質等に誘導する政治家の策略に国民はまんまと乗せられ、社保庁批判の大合唱のなかで、「日本年金機構」が発足することになった。社保庁を解体・民営化して発足する年金機構では業務の多くが民間委託されるが、迅速で確実な業務を行うためにも、業務に精通した職員の継続雇用が不可欠だろう。制度を熟知した職員をリストラしてしまうと、年金記録問題の解決はさらに遠のくおそれがある

 国家公務員法では、組織改廃時に定員から漏れるなどした場合、分限免職となることがある(国家公務員法78条④)。今回は、社保庁の職員1万2566人のうち、1159人が同機構へ移れず、厚生労働省への配置転換などもされなかった。このうち525人が勧奨退職などに応じず、分限免職対象となった(「読売」2009年12月28日)。
分限免職者のうち最終先未定は195人。330人は再就職支援を求めていないと言うが、選別採用などに嫌気して退職を選んだ職員が多数いるのが実態である。未定者のうち懲戒処分を理由に機構に不採用とされたのは125人(「しんぶん赤旗」同上)。しかし、過去に懲戒処分を受けたといってもいろいろである。処分理由で一番多いのが「業務目的外閲覧」で、中にはスピード違反等の軽微な交通法規違反で戒告処分を受けた者もいるという。

 日本年金機構は社会保険庁の事業を承継する承継法人であり、事業承継に伴う職員の確保について採用方式をとるとしても、それは純粋な新規採用ではありえない(国家公務員法78条④に該当しない)。過去に懲戒処分を受けたことを不利益扱いの根拠とすることは、同一の非違行為を理由とする二重処分に該当し、実質的に二重の不利益処分を課すものといえ、違法無効の疑いが濃厚である(法定事由該当性、平等取り扱いの原則《同27条》及び均衡の原則《事実と処分内容との均衡、二重処分の禁止》違反)。
我が国の労働法制では、客観的合理的な理由と社会通念上の相当性がなければ、労働者の意に反してその職を失わせることは許されない(労働契約法16条)。分限免職のまえに、「整理解雇の4要件」にそった対応が必要だろう。すなわち、現職員に対する人員削減の必要性、分限免職回避努力、人選基準の合理性などを充たすことが求められる。

 免職対象者に示された雇用確保策は、年金機構の準職員あるいは厚労省の非常勤職員で、いずれも不安定な有期雇用である。しかも、準職員については再応募や懲戒処分を受けた職員は排除され、非常勤職員は年収が半減するなど、回避努力に値するものではない(日本国家公務員労働組合連合会・書記長 岡部勘市「厚労省は不当解雇(分限免職)を中止・撤回し、すべての職員の雇用を確保せよ」 2009年12月28日)。
厚労省は記録問題などで業務が増大し、概算要求で職員・準職員2840人もの増員を求めていることから、分限免職の必要性がないことは明らかであり、長妻厚労相の責任が厳しく問われるだろう(「しんぶん赤旗」同上)。

 労働者の権利と生活を守るべき厚生労働省が違法で道理のない解雇を強行したことを社保庁職員に対する個人的感情に駆られてそのまま許すなら、すべての労働者の雇用に影響すると考えなければならない。他人事ではないのだ。私たちは、労働者階級に対する理不尽な攻撃は、いついかなるものでも反対しなければならないのだ
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