プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

過労死学習交流会  資本主義国のなかでも異常な国―日本

2010-07-19 20:51:27 | 政治経済
京都市内で開かれていた過労死学習交流会(大阪過労死を考える家族の会主催)が18日、分科会、全体会を終え、閉会した(「しんぶん赤旗」2010年7月19日)。
日本型開発主義国家が高度経済成長の終焉とともに新自由主義「構造改革」に取って代わられ、長期雇用、年功処遇を柱とする企業社会も破綻した。しかし、日本の労働者は簡単に「こんなもん真面目にやっとられへん」とはならない。「日本の働きすぎの元凶は、家事労働も手伝わず、長時間のサービス残業も辞さずに、会社に能動的生活時間のすべてをささげて妻子を養う男性稼ぎ手に範をとった正社員モデル」(森岡孝二・関西大学教授)がいまも健在であることだ。日本の労働基準法には1日8時間、週40時間の標準労働時間の規定はあるが、残業時間の上限規制つまり、労働時間の法的上限規制がない。日本は労働時間に関するILO条約(18本)を一本も批准していない資本主義国のなかでも異常な国である(実はもう1つ米国も批准していない)。

 過労死学習交流会では、過労死、過労自殺によってわが子を失った父母の悲痛な思いとともに、こうしたことは誰にでも起こりうる問題だということが切々と語られた。
<兵庫県の60代の父親は、20代の息子を過労自殺で亡くしました。清涼飲料水の配送業に従事していた息子は、早朝から深夜の過酷な業務でやせていき、親子の会話をかわす時間もなくなっていったといいます。父親は「会社は、若い子の血を吸う吸血鬼みたいな連中です。息子は寄ってたかって殺された」と怒ります。「労災は認められましたが、息子は生きては帰ってきません。会社に謝罪を求めたい」と語気を強めます。
東京都の70代の母親は、マスコミ業界で働く40代の息子を、就寝中に急性心不全で失いました。職場の人員が半減されて夜勤回数が増加し、髪質はボサボサになり、色白だった顔が赤らんでいたといいます。母親は「そばにいながら死なせてしまった、最低の母親だという自責の思いが強い。今回、初参加して、経験者でないと分からないつらさを分かってもらえて、心を開くことができました」と話しました>(「しんぶん赤旗」 同上)。

 <20代の息子を亡くした別の母親は「息子の世代は就職氷河期にやっと手に職を持てたという気持ちから、無理をして仕事にしがみつかないといけない。ギリギリのところで誰もが生活しています。でも、人がいてこそ企業も社会も成り立つわけで、優秀な人材が倒れていく今の日本社会は本当に異常で悪循環としかいいようがない」と告発します。「おなかを痛めて産んだわが子が消耗品にされた者としたら、いてもたってもいられません。人間として生活できるよう最低限の保障が社会に必要だし、大きな社会問題だと思っています」と訴えました。
大阪の会顧問の岩城穣弁護士は「過労死が特殊なのではなく、規制する法律のない日本が特殊です。法律の実現へつながりを生かして行動していこう」と呼びかけました>(「しんぶん赤旗」 同上)。

 EUと日本の労働時間規制で決定的に異なるのは、労働時間の上限規制がEUにはあり、日本にはないということ、さらには、有給休暇日数がずいぶんちがうということである。
週の労働時間の上限について、EUは、残業時間を含めて、変形労働時間制の場合でも、平均して48時間を超えてはならないと定めている。1日の労働時間については、13時間を超えてはならないとする。これは、24時間について連続11時間の休息を設けなければならいという趣旨である。
これに対して、日本には、労働時間の上限規制がない。残業時間について月45時間、年360時間という一応の基準はあるが、いわゆる「36協定」の特別条項を定めることで、無制限に残業させることができるからである。

 しばしば引用されるように、「資本は、社会によって強制されるのでなければ、労働者の健康と寿命にたいし、なんらの顧慮も払わない」(マルクス『資本論』第1巻第8章労働日)。そして、企業社会の規範が支配する日本の職場では、雇用主への忠誠と労働者同士の過酷な競争に突き動かされた労働者はともすれば働き過ぎに陥る。企業別労働組合には、労働者の働き過ぎを共同で抑制する論理はない。
労働者のいのちと健康を守るためには、社会的強制(労働基準法の改正)によるほかないのだ

 同じ資本主義国でも、EUは労働者に普通の生活を保障して、それなりの成長を達成している。日本の資本主義は、労働者をとことんこき使って、それでも成長できない。成長の原理がどこかで狂っているのではないか。

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