プロメテウスの政治経済コラム

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胡錦濤主席 明日来日  何故まとまらない東シナ海ガス田問題

2008-05-05 19:11:42 | 政治経済
中国の胡錦濤国家主席が6日から中国国家元首として10年ぶりに日本を公式訪問し、7日に福田康夫首相と首脳会談を行う。訪日を「暖かい春の旅」と名付け、日中間の「『戦略的互恵関係』を全面的に推進したい」と語った。しかし、懸案の東シナ海ガス田開発問題は、今回も合意先送りとなりそうだ。なぜ、東シナ海ガス田問題は、なかなか話がまとまらないのか。それは、問題となっているガス田は両国の排他的経済水域内にあり、このような場合の両国の権益の範囲についての国際基準がわかったようなわからない曖昧なものだかからである。

胡主席はあす6日、国賓として5日間の日程で来日する。中国国家元首の来日は1998年11月の江沢民氏以来で、約10年ぶりの歴史的な訪問となる。胡主席は今回の訪日を「暖かい春の旅」と表現し、訪日の目的について、「友好を強化、協力を深め、戦略的互恵関係を全面的に推進することだ。良き成果を得たい」と述べた。しかしガス田開発問題については、「共同の努力で双方が受け入れ可能な解決案をみつけ適切に解決できると信じる」と改めて強調するにとどまった。今回の訪日で合意を得るのは難しいということを示したものだ。中国製冷凍ギョーザ中毒事件に関しても、「(この事件を)高度に重視している。双方が引き続き調査と協力を強化、一日も早く真相を解明するよう望んでいる」と述べるにとどめ、解決まで長い期間がかかることをほのめかした(「産經」5月5日8時1分配信)。

東シナ海ガス田開発ではなにが問題になっているのか。何故話し合いが長引くのか。
問題となっている海域には中国側の調査で春暁、断橋、天外天、平湖、冷泉、龍井の6ガス田が確認されているが、春暁、断橋においてはその埋蔵地域が日中中間線の日本側海域に掛かっているため日本側からすれば、日本にも当然に権益があるということになる。さらに、日本政府は天外天、龍井についても資源が中間線を越えて広がっている可能性があるとして、中国単独の開発に待ったをかけている。
東シナ海ガス田問題をめぐる両国の主張を、簡単に要約すると以下のようになる。日本政府は、中国が開発しているガス田が、日本と中国の大陸棚・経済水域の中間線をまたいだ場所にあり(中間線説)、中国側海域で生産がおこなわれたとしても、日本側のガスまで中国側に流れ込み、吸い取られかねないのだと主張している。一方、中国政府は、ガス田のある地域を含め大陸棚の縁(沖縄トラフの手前)までが中国の経済主権の範囲なのだから(大陸棚説)、いま開発しているのは、日本とは何の争いもない中国側部分のガス田だと強調している(松竹伸幸「東シナ海ガス田問題を考える4 」3月18日)。

話をややこしくしているのが、国連海洋法条約が200海里の排他的経済水域を越えて大陸棚に対する沿岸国の権利というわけの分からない規定をおいたことである(同条約77-1は、大陸棚の開発権を認める)。領土が自然に延長する部分が大陸棚と定義しても、、海底のどこまでが自然延長なのか境界に切りがない。双方の200海里の排他的経済水域が重なる場合は、海岸線から等距離・中間線で分割するのが自然だろう。
しかし、国連海洋法条約にはたしかに、大陸棚の規定もあり、中国の主張がまったく根拠がないということでもない。国際司法裁判所の判決のなかにも、それを正当化するものがある。1969年、北海周辺で向かい合う海岸を有するドイツ、デンマーク、オランダの間で争いがあり、裁判所は大陸棚を分割する基準について判決を下した。そこでは、等距離・中間線説を退け、それよりは沿岸国の領土の自然の延長原則が優位性をもつとしたのである。しかし、最近では基本的には、まず中間線を引き、そのうえで「特別の事情」を考慮して修正するというやり方が定着しているようだ(松竹 同上)。

中国側は日本の抗議に対し大陸棚説を修正して、日中中間線より日本側の領域については日中共同開発を提案しているが、日本政府の日中中間線をまたぐ春暁など4ガス田に限って共同開発するという提案をまったく拒否している。境界をまたがって本当に鉱床があるというなら、共同で開発するというのが筋だろう。それが、国際慣例である。

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