硫化水素による自殺が相次いでいる。硫化水素自殺は、今年になって急増し、全国の警察などが一月以降に公表したものだけで、八十件を超えている(中国新聞5月4日)。多くは未成年や20代の、まだ若い人たちだ。今日(4日)も、神奈川県藤沢市のアパートで、2階の住民から「隣の部屋から卵の腐ったような臭いが1週間ほど前からしている」と110番があり、駆け付けた藤沢北署員と藤沢市消防本部の隊員が現場で硫化水素を検出、浴室で私立大3年の男性(24)が死亡しているのを見つけた。死因は、自殺らしい(「毎日」5月4日12時34分配信)。一体、若者たちに何が起こっているのだろうか。
相次ぐ硫化水素による自殺。北海道や鳥取など六道県であったおとといに続き、きのうも埼玉県で無職の男性が命を絶った。硫化水素は、卵の腐ったようなにおいを持つ無色透明の気体で、高濃度で吸い込むと呼吸障害を起こして死亡する危険ガスである。ガスは拡散するので、周囲に死傷者がでるなど巻き添えによる深刻な二次被害も出ている。我が子を助けようとした母親や父親が死亡したケースもある。同じ団地に住む住民らが、病院で手当てを受けたり避難したりする事態も生じている。においを感じたら近づかず、風上に避難することである(「読売」5月4日)。
ガスの発生のさせ方や張り紙など手法が似通っており、インターネット上の、いわゆる自殺サイトが、この連鎖的な現象の誘因になっている。「簡単に死ねる」など、市販の商品を使ったガスの発生法などが詳しく紹介され、主に若者たちの間で広がった。こうした中、警察庁はようやくネット情報の「規制」に乗り出した。発生法を記したネット上の書き込みを、周囲を巻き込んだ傷害行為につながるとして「有害情報」に指定。書き込みが見つかったら、民間団体を通じプロバイダーやサイト管理者に削除を促す。これまで自殺を呼びかける書き込みは有害情報とされてきたが、自殺の方法を紹介する情報までは指定されていなかった。今回は二次被害の深刻さなどから、判断したようだ(中国新聞 同上)。
ガスの発生に使われる家庭用洗剤などは届け出が必要な毒劇物ではなく、だれでも購入できる。厚労省は4月25日、関係団体に、販売のさい、不審な点があれば、身元や使用目的を確認するよう求める通知をだした。日本薬剤師会では全国の薬局に対して、大量に買う人がいた場合、用途を確認するよう呼びかけている。日本チェーンドラッグストア協会は、期限付きの販売禁止も含め対応を検討している(中国新聞 同上)。
自殺した人たちには、どんな悩みや動機があったのだろうか。
若者の状態にくわしい横浜市立大学の中西新太郎教授は「若者がそもそも『生きているのがつらい』と感じており、少しのマッチでも燃えあがるように模倣自殺が広がっているのがいまの状況だ」と指摘。「徹底して『自己責任』という感覚を押し付けられ、抜け出す道を見つけられないでいる若者に『あなたは一人ではないんだ』ということを社会が実証し、本人に理解してもらわなければ、困難な状況は解決しない」という(「しんぶん赤旗」5月3日)。
背景に「構造改革」政治によって一握りの「勝ち組」と多くの「負け組」に格差をつけられ、自助努力でどうにもないところで貧困化させられたにもかかわらず、その責任を個人の努力の多寡のせいにされ、非人間的な働かせ方で疲弊し、拝金主義で荒みきった現代の日本社会があることは明らかだ。若者の自殺が続く社会は、大人社会が病んでいるからである。しかし、こうした現状に、おとなしいと言われていた日本国民もいよいよ腹を立て、声をあげつつある。派遣労働の若者が、「ユニオンをつくって生きさせろ」と立ち上がっている。
まずは、福田・自公与党政権の大掃除から始めよう。
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