プロメテウスの政治経済コラム

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ディーセントワークに程遠い日本の長時間労働  労基法改定案の異常

2008-12-04 18:24:50 | 政治経済
先月衆院で可決済みの労働基準法改定案が2日、参院厚生労働委員会で自民、公明、民主の各党の賛成で可決された。日本共産党、社民党は反対した。日本の異常な長時間労働を規制するための法改正であったが、まったくひどい内容である。資本の搾取の強さは、労働者階級の力の弱さでもある。
ディーセントワークとは、国際労働機関(ILO)のフアン・ソマヴィア事務局長が、1999年に就任した際にILOの理念・活動目標として示したものである。日本の厚生労働省も一応は、気にはしているが、何分財界が自公政治を支配するもとでは、その実現は程遠い

厚生労働省のホームページにはディーセントワークについて次のように書かれている。
ILOにおいては、「『ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)』の実現」を、ILO憲章により与えられた使命達成のための主目標の今日的な表現であると位置付けている。我が国としては、「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」を、以下のように整理している。
◎ ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)とは、人々が働きながら生活している間に抱く願望、すなわち、
(1) 働く機会があり、持続可能な生計に足る収入が得られること
(2) 労働三権などの働く上での権利が確保され、職場で発言が行いやすく、それが認められること
(3) 家庭生活と職業生活が両立でき、安全な職場環境や雇用保険、医療・年金制度などのセーフティーネットが確保され、自己の鍛錬もできること
(4) 公正な扱い、男女平等な扱いを受けることといった願望が集大成されたものである。

働きがいのある人間らしい仕事という限り、週5日、一日8時間労働で十分であろう。土日には、余暇を楽しむ余裕があり、昨日の疲労を回復して毎朝元気に仕事に出かける最低限の基準である。もちろんその労働時間で持続可能な生計に足る収入が得られることが大前提である。ところが日本では、月50~60時間の残業はざらであり、 “過労死ライン”の月80時間を超えることもしばしばである。
日本の長時間労働の原因は、資本の労働者支配力が強く、残業時間を法的に規制せず“青天井”になっていること、残業割増率も低水準で、「人を新たに雇うより残業をさせたほうが得」になっていることにある。

残業の上限は現在、大臣告示で月45時間、年360時間となっているが、「目安」に過ぎず、労基法で抜け道が用意されている。「特別の事情」があれば、この限度を超えて働かせることができる「特別条項」が労基法に設けられているのだ。トヨタは上限時間の2倍にあたる年間720時間まで働かせることができる協定を結んでいる。
残業代割増率も、アメリカ50%などに比べて極めて低い水準であり、全労連や連合もすべての残業割増を諸外国並みの50%まで引き上げるよう求めていた
今回、国会を通過した労基法改定案は、当初案が過労死ラインである月80時間を超える残業について割増賃金率を現行の25%から50%に改定するというのを自民、民主、公明の3党が80時間を60時間に修正するだけで手を打ったに過ぎない。「中小企業には当分の間、適用しない」し、「特別条項」もそのままである。50%割増賃金の代わりに、取得が困難な「代替休暇」でお茶を濁すこともできる。

1時間の残業時間から割増率を50%に引き上げること、残業時間の上限を法律で規制すること、日々の長時間労働を規制するため、EU諸国と同様に連続休息時間を24時間のうち11時間確保することなどの改正がどうしても必要であった。しかし、民主党も含めて財界に支配される自公民3党では、どうしようもない。政治革新を実現しない限り、日本の労働者階級にとってディーセントワーク(働きがいある人間らしい仕事)は遠い夢である

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