プロメテウスの政治経済コラム

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米ビッグ3 国にすがる  新自由主義本家の米国で産業保護政策か!?

2008-12-05 17:04:36 | 政治経済
これまで一世紀にわたって世界一の自動車企業として君臨してきたGM(ゼネラル・モーターズ)が、経営破綻の危機に瀕している。米自動車大手3社「ビッグ3」は2日、経営再建計画を米議会に提出した。政府に3社合計で計340億ドル(約3兆2000億円)の公的資金による緊急融資の早急な決定を求めている。「新自由主義」の市場任せの本家米国で、公的資金投入による私的事業会社の救済が問題となっている。もし米国が自動車産業の救済という産業保護政策を国内で選択するならば、WTO(世界貿易機関)の貿易交渉などで、他国の「保護主義」を批判し、「市場原理主義」を押しつけてきた貿易政策も根本的に見直すことが必要だろう。自国は「保護主義」で、他国には「市場原理主義」を強要するというのでは、まったく筋がとおらない。

米11月新車販売台数は、GMおよびクライスラーがともに40%以上減少、フォードが31%減となり、米自動車業界全体が需要低迷に苦しんでいる。米議会は自動車業界への250億ドル(約2兆3300億円)の緊急融資枠(「環境対応車」への研究開発費というのが大義名分)を含む救済法案を現在審議中。いずれにしても、資産の売却、工場閉鎖、労働者への過酷なリストラなどの「再建計画」が求められるのだろう。再建計画を踏まえて今月4、5両日に公聴会を開き、週明けに採決するかどうか決める。
公聴会で、GMのワゴナー最高経営責任者(CEO)は、クライスラーとの合併について、「大幅なコスト削減につながるため、真剣に検討する用意がある」と表明した。GMはクライスラーとの交渉前に、フォードとの合併を検討したともいわれている。合併が実現すると、「ゼネラル・フォード・クライスラー・モーターズ」といった、ものすごく長い名の自動車メーカーが誕生するかもしれない。

米ビッグ3の経営不振の背景には、短期的な利益を追求し、経営者と株主への利益配分を最優先する米国流経営の行き詰まりがある。利益の大きい大型車に過度に依存し、日本や韓国、中国、インドなどの新興国も加わった激しい新車開発競争に敗北したのだ。ビッグスリーが将来をかけるには環境対応車の開発を急ぐしかない。米ビッグ3のエコカー戦略は、電気自動車や燃料電池車、クリーンディーゼル車などのエコカーの開発で日本メーカーに明らかに遅れをとっている
先進国では車がすでに行き渡り、台数増はあまり望めないだろう。新興国はこれからだが、環境面からの脱石油の要請と原油価格の上昇が、自動車産業に構造転換を迫っている。21世紀も自動車産業が世界をリードするかどうかは、新しい局面に適応する自己変革力が鍵を握る。その意味で、脱石油を徹底的に追求した環境対応車の開発が決定的に重要である。これにより新しい需要を獲得すると同時に、超コンパクトカーや超低価格車など新しいタイプの車を生み、新興国へも基盤を広げていくことが求められている。

米議会は救済に向けた選択肢をいろいろ検討しているようだ(「ロイター」12月5日14時50分配信)。
・ 議会は何も措置をとらず、ゼネラル・モーターズとクライスラーは連邦破産法11条の適用を申請する。
・ 議会は何も措置をとらず、メーカーは、債権者などすべての利害関係者が破産法申請にあらかじめ賛成する必要がある「プレパッケージ・チャプター11」と呼ばれる破産法の適用を申請する。
・ 財務省の不良資産救済プログラム(TARP)の7000億ドルから救済資金を拠出。
・ 議会はGMとクライスラー存続のため3月末までの短期融資を承認。その後、再生計画の進み具合で追加支援を実施するに値するかどうかを判断する。
・ 米連邦準備理事会(FRB)がビッグスリーの資金需要に対応する。
・ 既に承認されている燃料技術向上のための資金250億ドルをつなぎ融資として活用する法案を可決させる。
・ 自動車メーカーの金融機関からの借り入れを切り離し、政府が引き受ける。債務と引き換えに政府は株式を受け取ることも。

いま米国は、ビッグ3が破産した場合の米国経済への深刻な影響を考え産業保護政策をとるのか、「新自由主義」の市場任せの産業政策のどちらを選ぶのかに深刻に悩んでいる。

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