プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

陸にも海にも広がる東電原発放射能汚染   警告を発し続けた京都大学の原発研究者たち

2011-05-11 20:20:13 | 政治経済

今日の朝日新聞によれば、福島第一原発事故で放射能に汚染された地域は、チェルノブイリ原発事故の強制移住対象レベルだけで、約800平方キロに上るという。東京都の面積の約4割、琵琶湖の約1.2倍に相当する広さだ。海や山への汚染も深刻だ。東京電力によると、高濃度汚染水が4月1日~6日に520トン流出、放射能は4700テラベクレルに上る。現在も40キロ沖合でセシウムやヨウ素が検出される。タケノコやシイタケ、山菜からは基準を超えるセシウムが検出されている(「朝日」2011511730分)。

原発マネーに汚染され、警告を無視して原発を推進した「原子力村」の面々はどう責任をとる積りか。
原発を推進してきた学者たちが「想定外」という言葉を繰り返すのとは対照的に、迫害され続けながらも、今日の福島第一原発のような大事故がいつか起きると警告を発し続けてきた学者グループがいる。いま注目されているのが、京都大学原子炉実験所の熊取6人組である<2008年の大阪毎日放送の深夜番組「なぜ警告を続けるのか〜京大原子炉実験所・”異端”の研究者たち〜(毎年約5千億円の特別会計が原子力利権となっている)」がインターネットでみることができる。この番組の直後、電力会社は毎日放送のすべての番組から一斉にスポンーサーを降りるという恫喝を加えたという。マスコミが原発を批判できない背景の一つである>。

 

チェルノブイリ強制移住レベル以上の汚染だけで、琵琶湖の約1・2倍に上るというのは大変なことである。朝日新聞によると、汚染面積は、日米が共同で作製した汚染地図から分かった。汚染地図は、文部科学省と米エネルギー省が4月に約150~700メートル上空から、土壌など地表1~2キロ四方で放射性物質の蓄積量を測って作った。この地図によると、半減期が約30年のセシウム137の蓄積濃度が1平方メートルあたり60万ベクレル以上に汚染された地域は約800平方キロメートルに及んでいた<チェルノブイリ事故における55.5万ベクレル/m2以上の汚染地域(強制移住の対象となった)の面積は、1.1km2(本州の5%)という>。
京都大原子炉実験所の今中哲二助教(原子炉工学)は、
328日すでに、福島県飯館村の汚染レベルが、チェルノブイリ原発事故による強制移住レベルを超えているとの試算を発表していた。今中助教は、土壌のセシウムで汚染の程度を評価した。汚染土を表面2センチの土と仮定すると1平方メートル当たり326万ベクレルで、1986年の旧ソ連チェルノブイリ 原発事故で強制移住対象とした148万ベクレルの2倍超、90年にベラルーシが決めた 移住対象レベルの55万5千ベクレルの約6倍だった。今中助教は「国は原発周辺の放射性物質を詳細に調べて分析し、ただちにデータを公開すべきだ」と話していた(「京都新聞」20110328日)。

今中さんらは、これまで「異端の研究者」と見られ、テレビや新聞でもほとんど紹介されることがなかった。それどころか、学会では長く冷や飯を喰わされ、研究費や昇進でも明らかな差別を受けてきた。「原子力村」の面々は彼らを徹底的に退けてきた。今回の事故で、そんな彼らにようやく注目が集まりつつある。原発関係者たちは、彼らのことを「熊取6人組」と呼んだ。「熊取」とは、京都大学原子炉実験所の所在地である大阪府泉南郡熊取町に由来する。つまり、「6人組」はいずれも京都大学の原発研究者として一緒に働いた仲間である。いまも同実験所に在籍しているのは先の今中氏と、小出裕章氏(61)。二人とも肩書は助教。'01年から'03年に相次いで定年退職したのは、海老澤徹氏(72歳、助教授)、小林圭二氏(71歳、講師)、川野真治氏(69歳、助教授)。そして、1994年にがんで亡くなった瀬尾健氏(享年53、助手=現在の助教)である

 


実は、私もかかわっている市民運動グループで近く開催予定の講演会に今中先生、小出先生に講師依頼を申し込んだが、お二人とも超多忙で無理とのことだった。私は、学会のことは、よく知らないが、聞くところによると、東大には「原子力村」以外の学者は一人もいないという。そういえば、安斎育郎・立命館大学国際関係学部教授からこんな話を聞いたことがある。安斎先生は東大出身で、東大の助手に採用されたのだが、原発反対派なのでずーっと助手。「ガラス張りの牢獄」に
20年間入れられたということだ。

東電は、福島原発事故の全面賠償責任を否定する要望書を原子力損害賠償紛争審査会に提出していた。史上最悪の原発放射能事故を自ら起こしながら、負担可能限度を念頭に置いて補償範囲を決めてくれと政府に迫る。なぜこのような大きな態度がとれるのか。これが、原発マネーで汚染された「原子力村」の面々のやることなのだ。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。