プロメテウスの政治経済コラム

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浜岡原発一時停止  今問われているのは、理念の大転換

2011-05-10 20:21:37 | 政治経済

浜岡原発の運転休止が決まった。菅首相が、浜岡原発の全原子炉の運転停止を中部電力に要請、中部電力がこれを受け入れた。しかし、水野明久社長が、「総理の要請は重い」と言いながら、あたかも被害者のように政府の支援、受け入れ条件を並べ立てたことに見られるように、根本的な反省をしてのことではない。一方、全面停止すると突然発表して胸を張ってみせた菅首相も、2~3年後に防潮堤が新設されたら、また再開すると言っているのだから、本気で浜岡原発を危険視はしていない。人気取りだけを狙った、いつものその場しのぎのマヤカシなのだ。いまの原発の技術は本質的に未完成で危険を孕んだものだということについて、われわれは、どこまで自覚しているのか。原子力を安全に制御できる技術を獲得しているのか。地震多発国日本は原発と共存できるのか。真摯に検証した上で、今問われているのは、理念の大転換である。

 

菅首相の浜岡原発停止要請は、何が狙いか。グズグズしていては、今週から永田町では「菅不要論」「菅降ろし」の嵐が一気に吹き荒れることが予想された。そこで、連休の谷間の6日に、突然、浜岡原発停止を打ち上げ、支持率回復を狙い、「菅降ろし」を封じることを狙ったのだ。「悪いところは、関係閣僚会議に諮らず、中部電力やトヨタとも協議せず、いきなり総理が決めたことです。地元は混乱し、経済活動にも影響が出る問題なのだから、議論してから決断すればよかった話なのです。ところが40分前に中部電力に通達し、30分前に記者会見を設定し、意外感を出そうとした。原発政策は、そんなドタバタで決める話ではないはずなのに、私が決めましたということを強調したいのです。その私が、私がというところに国民はウンザリし、最悪の首相だと見ているのに、何も分かっていない。」(政治ジャーナリストの泉宏氏Gendai.Net201159日)。

 

中部電力の水野社長は、(要請を受け入れたのは)「2~3年後の運転再開へのめどが立ち、菅政権から電力供給などの支援の確約も得られたと判断したためだ」と語っている。つまり、今回の全炉停止は2~3年後の再開を前提にしたもので政業官学の「原子力村」の連中は、福島原発事故から何も学んでいないである枝野官房長官が9日の会見で「原発政策の基本は変わっていない」といい、仙谷官房副長官が「戦略、政策としては原発を堅持する」と発言しているように、菅・民主党政権には、原子力政策について新たな方向性を本気で検討する気はないそれどころか、経済産業省の内部では、「原発の緊急安全対策を進めて『安全宣言』を早期に行うことで既設の原発からの電力供給を確保し、203050年には『世界最高レベルの安全性に支えられた原子力』をエネルギー政策の3本柱の一つとする」と危機に乗じて一層原発を推進するということが、公然と囁かれているのである

 

かつて、民主党の03年の衆院選マニフェストには「風力や太陽、バイオマス、波力・海洋エネルギーなどの再生可能エネルギーの開発普及のため、新エネルギーに関連する予算を現行より倍増させます」と書かれていた。ところが、官僚のクーデターによって、米国・財界に取り込まれた09年マニフェストでは、「国民の理解と信頼を得ながら着実に取り組みます」と原発推進に転換。その後は、原発輸出を「国家戦略プロジェクト」にするなど、自民党政権以上に原発政策に肩入れすることになった。ここでも、長年の自民党政権下で米国・財界という2つの支配階級に奉仕することに慣れ親しんだ官僚どもを総入替えしない限り、真の政権交代の実現は難しいということを示している。

 

東日本大震災で起きた福島第1原発事故の最大の教訓は、世界有数の地震国、津波国の日本に、技術に本質的な危険をはらむ原発を集中立地することがいかに無謀なことであるかということだ。予測不能な大地震だけでも日本が抱えるリスクは大きい。その海岸沿いに54基の原発が建ち並ぶ。良心的な科学者は、これまで何度も警告を発してきたにもかかわらず、原発マネーに取り込まれた「原子力村」の面々は原発の「安全神話」を作り上げ、良心的な科学者を少数派として退けた。多くの国民もまんまと神話に騙されてきた。その帰結が今、私たちが直面する東京電力福島第1原発の深刻な事故である。今後の地震活動が予測できない以上、今後どこまで安全装置を重ねても絶対の安全はなく、過酷事故対策も原子力を完全に制御できないということだ。被爆をして被害を受けてから損害賠償しても後の祭りである。いつ放射能をまき散らす「怪物」に変貌するか分からない原発は、核兵器とともに永久に追放されるべきなのだ。今問われているのは、理念の大転換である


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