プロメテウスの政治経済コラム

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福田“共鳴”外交  日米軍事同盟はASEAN憲章の理念とは反対物

2007-11-24 19:08:50 | 政治経済
国会解散の時期が流動的な中で、福田康夫首相は初の日米首脳会談のために15―17日にとんぼ返りで訪米した後、19―22日にはシンガポールを訪問。東アジア首脳会議や、中国、韓国との首脳会談、東南アジア諸国連合(ASEAN)との会談を重ねた。来年7月の洞爺湖サミットまではなんとか持ちこたえて、一連の外交攻勢をかけ政権浮上につなげようと躍起となっている。福田首相は今回のアメリカとアジアへの歴訪のなかで、日米同盟を強化しながら、アジア政策と「共鳴」(シナジー)させるという考えを繰り返している(「しんぶん赤旗」11月24日)。しかし、アメリカが許す範囲で日米同盟を強化するということは、軍事同盟を強化するということを意味する。これは、軍事同盟への参加や外国軍への基地提供をしないことをルール化したASEAN憲章の理念とは真っ向から対立する。いくら首相が「共鳴」をいっても日本はアジアにとっては所詮真の友人ではなく、必要な限りで利用する相手でしかない。

靖国神社の参拝に固執した小泉純一郎元首相のもとで、長期にわたって首脳会談が開けないほどアジア外交は停滞し、安倍晋三前首相のもとでも、「従軍慰安婦」問題など侵略戦争の正当化が原因になってぎくしゃくしたままだった。アジアから見て、日本を利用しようにも、話し合いの場に付く気にもならない状態だった。それにくらべると、福田首相が「靖国神社に参拝しない」と表明し、「靖国」派路線をとらないことを明らかにしていることは、テーブルにつくことができるという意味でアジアから歓迎されている。日中会談では中国の温家宝首相が「両国関係を絶えず前進させたい」とのべ、日韓会談では韓国の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が「韓国国民は福田総理に大きな期待を寄せている」とのべたように、アジア諸国は福田外交に注目したのである。対北朝鮮外交での対話姿勢の強調や、日中韓首脳会談の独立開催の合意、中国との関係強化が、関係国から肯定的な反応を受けた(「しんぶん赤旗」同上)。

もともと米国は、小泉の靖国参拝も、安倍の靖国派路線も自己のアジア戦略から見て、快く思っていなかった。しかし、小泉はブッシュの“ポチ”を演じ、安倍は改憲にきわめて熱心だったから、大目に見ていたのである(「従軍慰安婦」問題は度が過ぎたので、下院決議で注意した)。日本の基地と自衛隊を自己のアジアと全世界に対する先制攻撃戦争戦略に組み込むという帝国主義的野望にとって、日本がアジアから浮き出てしまうことは、米国の利益にならない。
たしかに日本にとって対米関係は重要である。しかし、今日の日米関係は軍事同盟を軸に展開され、福田政権も「米国とともに戦争する国づくり」路線を推進しようとしている。この路線の行くつき先は、必ず、集団的自衛権、憲法改正である。日米同盟を前提に、軍事力をテコにした外交をアジアに押し付ければ、「共鳴」するどころか矛盾を広げることになるのは目に見えている。今回開かれたASEANの首脳会議が決定した「ASEAN憲章」は、「侵略、脅迫、武力による威嚇とその行使の拒絶」、「紛争の平和的解決」を軸とした平和原則を明記した。原則には(1)独立と主権の尊重(2)平和と繁栄への共同(3)侵略・脅迫・力の行使の拒絶と国際法の順守(4)紛争の平和的解決――などを掲げたほか、「全加盟国の主権、領土保全、政治的、経済的安定を脅かす、領土の使用を含むいかなる政策と行動にも参加しない(自制する)」とも規定し、軍事同盟への参加や外国軍への基地提供をしないこともルール化した(「しんぶん赤旗」同上)。

日本が政治的・外交的にもアジアの真の友人として役割を果たしていくためには、戦争放棄の憲法を堅持することが、絶対不可欠である。なぜなら、それは、日本が侵略戦争を反省しアジアとともに生きることの唯一の証しであるからだ福田氏は日米首脳会談後の共同記者発表で、「わが国唯一の同盟国である米国」と言った。父の福田赳夫元首相と親しかったシュミット元西独首相は「日本は世界で真の友人をもっていない」と繰り返し忠告した同氏は、「日本は、広いこの世界で、友であり同盟者である国を一つもっているだけ」だが、「唯一の盟友である米国との関係は、流動的であやふやな状態」だと指摘した(1995年の広島での演説)。軍事協力最優先の対米追随と侵略戦争への無反省を続けるならば、外交日程をどんなに多く組んでも、結局は、アジア近隣諸国の「共鳴」を得ることはできず、東アジア共同体の一員になることも難しいであろう(「しんぶん赤旗」同上)。

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