プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

ベトナムより帰国  ベトナム戦争の傷跡は今も

2011-05-04 21:55:25 | 政治経済

4/265/2ベトナム訪問を終え帰国した。ベトナム戦争の枯れ葉剤被害を記録したフォト・ジャーナリストとして世界的に著名な中村梧郎氏の案内でツーズー病院・平和村、戦争証跡博物館、統一会堂、ホーチミンルートの拠点の町アールオイ、ダクロン橋、米軍ケサン基地跡地、カンザー・マングローブ林、クチトンネルなどベトナム戦争ゆかりの地を訪ねた。ベトちゃん・ドクちゃんに象徴される枯れ葉剤(エージェント・オレンジ)による深刻な被害がベトナム戦争を直接経験していない世代、そのさらに子供の世代、すなわち第三世代までも苦しめている。ツーズー病院・平和村や戦争証跡博物館では、深刻な障害を持ちながら懸命に生きている多数の子どもたちに会うことができた。先月、大震災の見舞いに来日してくれたドクさんも元気に仕事に戻っていた。アメリカは、今もイラクやアフガンで劣化ウラン弾による放射能ゴミに起因すると思われる多数の異常出産、障害児を生み出し続けている。ビンラディン殺害を発表したオバマ大統領はテレビ演説の締め括りで“Justice has been done.”と言った。オバマ大統領も、ひとを殺して歓喜する米国民も、完全に頭が狂っているというほかない。

 

ツーズー病院・平和村の活動については、リハビリ科診療科長の女医さん(NHIさん)とドクさんが説明してくれた。平和村はドイツのNGOによって建てられ(運営経費の援助はない)、主に枯葉剤による障害を持つ子のリハビリ、自立支援のための活動を行っている。ホーチミン市のツーズー病院内を含めて、全国に数箇所あるということだった。階段を上がった脇の一室には、四方の壁全体に3段の棚が設えてあり、異常胎児の標本が保存されていた。ラベルを見ると、戦争終結直後の標本とみられるものから、最近のものまであった。子どもたちの部屋には、重度の障害を持つ小さい子たちが横になっている一方、動ける子どもたちは、それぞれに元気に我々の来訪を喜んで声をあげ、歓迎してくれた。学校に行けたり、少しでも自立して何らかの仕事ができるまでに回復することを祈るばかりであった。

 

ホーチミン市の南東30キロのカンザーは、世界的にも傑出したマングローブ地帯。解放戦線が森に潜み、出撃拠点としていたために、ベトナム戦争時は枯葉剤が特に重点的に散布された地域で、一時は壊滅状態になった。しかしその後地元ベトナム人や海外NGOなどにより植林がなされ、自然更新林も含めた約3万 haの森が再生、現在戦前の3/4が復活している。地中のダイオキシンが潮の満ち引きを通じて自然浄化されたということである。中村梧郎さんは、カンザー・ルンサックの森でひとりの老人にあった。彼こそ、150人で出動したテト攻撃のうちの唯一の生存者グエン・バン・タンさんだった。テト(旧正月)攻勢とは、1968130夜から展開された北ベトナム人民軍及び南ベトナム解放民族戦線(ベトコン)による大攻勢のことである。サイゴン(現ホーチミン)の米国大使館は解放戦線の小部隊によってあっという間に占拠された。タンさんたちに与えられた任務は国営放送局を奪取することであった。ベトコンは、6時間にわたって局を占領したが、サイゴン軍と米軍の増援部隊によって包囲された。重症のタンさんを近くの安全な住居に引きずり込み、介抱を続けたのは、3人の女学生であった。

中村さんの一行が訪ねてくるということで、今はリゾート地となっているカンザーの旧根拠でタンさんは、私たちを迎えてくれた。

 

ホーチミン市戦争証跡博物館では、フイン・ゴック・ヴァン館長が私たちを歓迎してくれ、枯葉剤の被害で障害を負った子どもたちが器用につくった造花飾りを一人一人の胸につけて頂いた。中村さんのモニュメント壁画の前でのお二人。国営テレビ局NTVのカメラも見える。



手芸に励む障害を持った子どもたち


アメリカによる戦争犯罪は今も世界で繰り返されている。残念ながらこの軍事大国の大罪を裁く国際法廷は、未だ開廷されていない。未来の世界人民の課題である。艱難辛苦に耐え抜き、遂にアメリカに勝利したベトナム人民のたたかいから学ぶべき教訓は汲めども尽きない。そんな思いを改めて強くしたベトナム訪問であった。


最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
9・11の報復達成?に歓呼する前に、自分達のやってきたことを (洗脳されていない日本人)
2011-05-04 23:52:34
ひとりよがりの「正義」を振りかざして、世界の何百万何千万という罪なき人々の命を、平気(兵器?)な顔をして、奪い続けているアメリカという「テロ国家」の暴走を止めるためには、
どうしたらよいのか?日本として、手始めにできること、それは即刻、「アメリカのポチ」を
やめることです!
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。