プロメテウスの政治経済コラム

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ウィキリークスが暴露した外務官僚の裏切り  米政府が鳩山、小沢を嫌ったわけ

2011-05-05 20:18:48 | 政治経済

アフガニスタン戦争や米外交をめぐり、衝撃的事実を明らかにしてきた内部告発サイト「ウィキリークス」(WL)の波が、日本外交に及んできた。WLより「朝日新聞」が入手した膨大な日米関係の公電の一部が暴露された(「朝日」2011年5月4日)。浮かび上がった問題の深刻さは、日本政府には外交交渉の能力も資格もないということだ。つまり通常の意味での政府というものを日本は有していないのだ。日本にあるのは管轄領域によってコントロールの度合いの異なる、各省庁からなる行政の中枢だけである。日本は、政府が政治的な責任所在の中枢であるような一人前の国ではないのだ。ジャパンハンドラーズの有力者マイケル・グリーンが、鳩山、小沢を目の敵にしたのは、反官僚、政治主導を過度に主張したからである。

 

米軍普天間飛行場をめぐる2009年10月12日の日米協議が象徴的だ。移設先について「最低でも県外」と述べた鳩山由紀夫氏が首相に就いて初の正式交渉だったが、この場で防衛省の高見沢将林防衛政策局長は「米政府はあまり早計に柔軟さを見せるべきではない」と米側の立場で助言した。自公政府が従来、説明してきた「移設先は沖縄県内しかない」という結論がひっくり返されると、宗主国―保護国という外務官僚が戦後一貫して追求してきた米日関係に傷がつくからである。外務官僚が、選挙の洗礼を経た政治家を飛び越え、有権者から託された民意と正反対のことを述べる。政治家よりも政治家に託した有権者の民意よりも、米国に媚びへつらうばかりの官僚たちが、日米外交交渉の主役なのだこうして、ジャパンハンドラーズの霞が関を使ったクーデターによって、鳩山、小沢は政治の中枢から引き摺り降ろされ、後釜に菅が据えられた。菅が震災対応でも無能、無責任なのは、日本が、通常の意味での中央政府というものを有していないことの当然の帰結であった。

 

政府(実体は外務、防衛などの官僚)が米軍再編を日本国民の前で、都合よく進めるために、情報を意図的に隠したり「イメージ」操作を行ったことが、「ウィキリークス」が公開した米公電によって明らかになった

在沖海兵隊のグアム移転費について、関連費用を水増しして日本側の負担比率を見かけ上、減らす操作を行った。米軍が不要な軍用道路建設費10億ドルをグアム移転経費に水増しして計上。移転経費102億ドルのうち日本側負担比率を59%と60%を切るかのように見せかけた。水増し分を除けば、日本側負担は66%を占める。

沖縄の負担軽減の政治的効果を狙って、沖縄海兵隊の駐留数が実際には1万3千人しかいないのに、公式定員1万8千のうち隊員8千人と家族9千人がグアムに移駐するとした。共産党などが、数字の辻褄が合わないと追及していた通りである。沖縄に1万人程度残留するから、グアムへの移転人数は3千人程度なのに、8千人とその家族分の施設、住居を日本国民の税金で建設することになる。沖縄だけではなくハワイからの移転分も日本に面倒を見させようとする腹である。

 

日米関係に関わる外務・防衛官僚が、日米交渉の相手役に対し日本政府を裏切って米側が有利になるように入れ知恵する。例えば、斎木アジア大洋州局長はキャンベル米国務次官補に対し「民主党(の鳩山、小沢)は官僚を抑え、米国に挑戦する大胆な外交のイメージを打ち出す必要を感じているようだ」が、「愚か」だ。「やがて彼らも学ぶだろう」などと発言。高見沢・防衛省防衛政策局長は先に述べた通り、「米政府は(中略)あまり早期に柔軟さを見せるべきではない」と助言する。そして、国民の代表であることの自覚のない政治家が霞が関の役人に従う。
いずれにせよ、文書に登場する官僚や政治家たちに外交交渉を任せ続けるとどうなるか。この国は事実上、米国の属国、保護国として世界史に刻まれることになる。21世紀の外交を、もはや彼らには任せられない。

 

日米両政府が、在日米軍再編合意でグアムに移転する在沖米海兵隊員の人数や移転費を水増ししていたことが、内部告発サイト・ウィキリークスの入手公電で明らかになったことについて、沖縄の平和団体などからは「主権者をだます手法」「米国こそ『ゆすりとたかりの名人』」と非難が相次いだ。これまでも海兵隊の人数への疑念を指摘していた沖縄県統一連の新垣繁信代表幹事は「主権者である国民を欺く手法は沖縄返還密約と同じ構造で、日米両政府の戦後の在り方をはっきり表している。安保条約をなくさない限り、国民は主権を確立できない」と話した。ヘリ基地反対協議会の安次富浩代表委員は「民主党は沖縄を侮辱している。日本のために沖縄を犠牲にするという考えだ。沖縄の将来を決める際に日米両政府に期待してはいけない。沖縄の将来は沖縄が決めなければいけない」と訴えた。宜野湾市周辺に住む主婦らでつくる「カマドゥー小たちの集い」の国政美恵さんは「沖縄の事情を全く無視した交渉。沖縄の側は費用負担や人数の多い、少ないを問題にしているのではなく、基地の存在そのものを拒否している。沖縄の事情を言い続ける必要がある」と指摘した(琉球新報201155日)。

 


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