プロメテウスの政治経済コラム

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臨時国会  補正予算案で自公に擦り寄る菅政権  似通う政策 媒介項は財界

2010-09-27 18:48:50 | 政治経済
菅首相が民主党代表に再選されて改造内閣が発足した。「有言実行内閣」と自らを命名したが、問題は、「実行」する政策の中身である。政権交代から1年。小沢、鳩山と二代にわたる保守政党の枠を踏み越える試みは、マスコミを使った財界、アメリカの圧力で今やすっかりと影をひそめ、菅改造内閣は、「米国・財界 歓迎内閣」(市田共産党書記局長)にまで堕してしまった。政権交代を目指す必要のないズル菅は、「米国・財界」の心強い支援を受けて野党の自民党や公明党に擦り寄りながらネジレ国会を乗り切り、長期安定政権を目指す。政権交代で新しい政治を期待した国民は踏んだり蹴ったりである。

菅内閣の特質については、菅氏の続投について代表選の前から財界幹部が異例の支持表明をし、大手マスコミも小沢ネガティブキャンペーンまで張って応援してきたことが端的に示している。沖縄の米軍普天間基地問題、消費税の増税問題、経済対策、いずれをとっても自民党時代に戻った。自民党の石破茂政調会長が、菅首相を「抱きつきお化け」に譬えたのは、梅雨の最中だった。自民が参院選の公約に消費税10%への増税を打ち出したら、菅首相が「参考にさせていただく」と寄りかかってきた。季節は移り、自民党の新しい幹事長、石原伸晃氏はいう。「(菅さんに)抱きつかれてもいい」。菅首相が続投となったら、「財政」などをめぐり民主党との話し合いに応じる、というわけだ。政策では「菅さんに近い」と認める。もはや、菅首相はお化けではないということだ。

「有言実行内閣」というが、国民のために具体的に何をするかについては何も言っていない。はっきりしているのは、法人税減税と消費税増税の方向を打ち出していることや、普天間基地の「県内たらい回し」だ。労働者派遣法の抜本改正や後期高齢者医療制度の廃止などは、代表選の間もほとんど話題にもならなかった。厚生労働相に就任した細川律夫氏は、製造業や登録型派遣の禁止に大穴を開けた「改正案」を取りまとめた張本人である。岡田克也外相の後任に国土交通相から横滑りした前原誠司氏はアメリカの信頼も厚い「親米タカ派」で有名だ。岡田新幹事長がまず始動した先は、財界3団体(日本経団連、経済同友会、日本商工会議所)だった。直嶋正行氏に代わって経済産業相に就任した大畠章宏氏は早速、「法人税の5%程度の引き下げを決断する時期」だと語っている。直嶋氏はトヨタ労組出身、大畠氏は日立労組出身である。経団連は、9月14日に発表した「税制改正提言」で、消費税については、「少なくとも10%に早期に引き上げるべきである」と鳩山政権時代の伝聞調、哀願調から一転して、命令調で求めた。菅内閣はすっかり財界の支配下と言わんばかりだ。

菅政権は、10月1日召集予定の臨時国会で補正予算を成立させる考えを示しながら、まずは野党の意見を聞いてから案をまとめたいといっている。菅首相は9月21日、自民党の谷垣禎一総裁と国会内で会談し、自民党が打ち出した約5兆円規模の経済政策案について「前向きに対応できるようにしたい」とまず自民党に秋波を送った。この会談に先立つ17日、菅首相は改造内閣発足にあたっての記者会見で「自民党や公明党、野党からも景気対策の提案をいただいた」と自公両党を持ち上げ、「話し合いの場は何らかの形でできるのではないか。景気対策、補正という限定的な中身であれば、野党との合意形成も可能性は十分にある」と発言。補正予算案の内容や規模について自公などと事前に協議した上で提出し、成立を図る考えを表明した。国民にとって不幸なのは、キャスチングボートを握るのが、公明党であり、野党第一党が自民党であるということだ。

与党と自公両党の「共通点」は何か。菅・民主党政権の目玉である「新成長戦略」は、大企業目線で「強い経済、強い財政、強い社会保障」の一体的実現をうたい、「強い経済」の目玉として法人税率引き下げ、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の構築を位置づけ、消費税の増税を狙うものである。自民党は、補正予算を前提にした経済政策案を発表しているが、経済政策の柱として「法人税の引き下げ」を迫るとともに、「消費税を含む税制抜本改革の実施」を求める。日本農業のことなどお構いなしに、EPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)の構築ということも、民主党の「新成長戦略」と同じである。なぜ同じか。日本経団連がベースを書いているからである。与党と自民党との媒介項は財界なのだ。
菅首相は26日、公明党の支持母体・創価学会の池田大作SGI(創価学会インタナショナル)会長が設立した東京富士美術館(八王子市)を訪問し、特別展を鑑賞した。臨時国会召集を前に、菅首相が「ねじれ国会」対策で公明党に秋波?ーというのがもっぱらの噂である。公明党は創価学会員にご利益を与えないともたない政党である。ご利益のためには政権与党に協力するのが一番である。

国民の暮らしよりも財界応援のために「法人税引き下げ」、「消費税増税」に突き進む菅政権の「有言実行」ぶりだけが浮き彫りになるようなことになれば、政権交代を実現した国民は踏んだり蹴ったりである。


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