プロメテウスの政治経済コラム

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新教育基本法 政府与党週末衆院通過狙う 改悪阻止の国民世論を国会へ

2006-11-06 19:16:46 | 政治経済

前の国会の論戦で、新教育基本法案には、子どもたちの未来を奪い、憲法に反する二つの大問題があることが明らかになった。
一つは、新教育基本法案が、憲法第19条が保障した思想・良心・内心の自由をふみにじるという点である。新教基法案は、第二条「教育の目標」として、「国を愛する態度」など二十もの「徳目」を法律で決め、その「目標の達成」を義務づけ、子どもたちに強制しようとしている。
もう一つは、憲法が教育の自主性、自律性、自由を強く求めていることとの関係である。第二条「教育の方針」を全面削除し「教育の目標」に置き換えた上に、教育基本法一〇条の「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである」の「国民全体に対し直接に責任を負つて」という文言を削って「この法律及び他の法律の定めるところにより」に置き換えてしまっている国民・生徒全体に向かって行われるべき教育が上の顔色をみて法律に従って=ときの政府の意向に従っておこなわれるということだ。

削除された第二条「教育の方針」は次のようになっている「教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によって文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない。」これは教育の目的を達成するための「筋道」「心構え」「方法」を提示したものであり、単にいわゆる教育者のためのものであるにとどまらず、一般国民の心構えをのべたものである(辻田力・田中二郎監修『教育基本法の解説』1947年―國學院大學竹内常一「教育基本法をとらえかえす」『生活指導』06年10月号所収より孫引き)。
「学問と教育の結合」「実生活と教育の結合」の原則にたって「自発的精神」「自他の敬愛と協力」を基本とする「文化の創造・発展」によっておこなわれる教育の方法は、多数決原理に基づく政治的決定や法的規定に従う教育と絶対に両立しない。意見に対立があれば、すべてを認め合いながら真理に到達する学問の方法をはなれて教育はありえない。

政府・与党は国家の教育=特定の支配勢力のイデオロギーの押し付けによって何を狙おうとしているのか。
安倍首相は、「私が目指す『美しい国、日本』を実現するために、次代を背負って立つ子どもや若者の育成が不可欠」だといっている。つまり、教育の目的は、安倍首相のいう「美しい国」を実現することにあるというのだ。安倍首相のいう「美しい国」づくりとは何か。憲法九条を変えて日本が攻撃されてもいないのに「海外で戦争をする国」をつくることであり、「構造改革」のかけ声で、「弱肉強食の経済社会の国」をつくることである。そのために教育政策に新自由主義的改革を持ち込み、子どもたちを競争においたて、「勝ち組」「負け組」にふるいわけて教育投資の効率を上げるとともにアメリカのように貧困層から抜け出すためには軍隊に就職する以外にない人間をつくろうとしているのだ。

子どもたちの明るい未来を奪い、憲法に幾重にも反する新教育基本法は徹底審議の上、国民の力で廃案にするほかない。


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