プロメテウスの政治経済コラム

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米国軍事一辺倒路線に変化  中東大戦争は回避されるか

2007-03-11 19:17:32 | 政治経済
イラク戦争で深刻な行き詰まりに直面しながらブッシュ政権は、先の駐留米軍2万2千増派に続いて、最近も数千人の追加増派を決定するなど、軍事解決路線に依然固執する一方で、他の一連の問題では外交にも力を入れる姿勢が目立ってきた。
最近の大きな変化は、対北朝鮮政策である。ブッシュ政権は、北朝鮮核問題に六カ国協議の枠組みで対処する路線を2003年に開始したが、北朝鮮との本格的な直接対話は拒否する姿勢を貫いていた。しかし昨年末から、この姿勢を転換させ、直接交渉を開始。今年2月の六カ国協議の進展の大きな要因のひとつとなった(「しんぶん赤旗」同上)。

対イラン政策でも、軍事的圧力を強め、イラクに続いて、イスラエルも巻き込みながらイランへ戦線を拡大する中東大戦争の危機が高まっていた。ところが、ライス国務長官は2月27日、イランも参加して10日にイラク政府主催で開かれるイラク周辺国会議に米国も参加すると表明。イランとの直接対話を拒否していた従来の路線を改め、同会議でイラン、シリアとも同席する立場に転じた(しんぶん赤旗」同上)。
イラク安定化への道筋を討議するため、10日、バグダッドでの国際会議に出席した米政府代表のハリルザド駐イラク大使は会議終了後、敵対するイラン、シリア両国代表と直接接触したことを明らかにした。米国は、実質的に対話の道を閉ざしてきた両国に対する「関与政策」の開始に向けて最初の一歩を踏み出した(時事通信3月11日14時0分配信)。

 この変化の背景の一つには、ブッシュ政権内での力関係の変化がある。好戦的な新保守主義(ネオコン)派は依然、政権の重要部署を占めているが、アフガン、イラク戦争の行き詰まりとともに、ネオコン派や以前からの軍事力優先の保守派の要人が政権から離脱した。外交的対応を重視する国際協調派と軍事優先のネオコン派との力関係が米国軍事一辺倒路線の破綻が誰の目にも明らかになるもとで、一定の変化を余儀なくされているのだ(しんぶん赤旗」同上)。

ボルトン米国連大使の昨年12月の辞任は、ブッシュ政権の行き詰まりを改めて印象付ける出来事であった。ボルトン氏は、国際ルールを蔑視する単独行動主義を体現した人物であった。ボルトン氏は、一期目ブッシュ政権では国務次官を務め、戦争犯罪などを働いた個人を裁く国際刑事裁判所(ICC)から米国が離脱し、それを空洞化する動きの先頭に立った。イラク、イラン、北朝鮮に対する強硬策を主張。台湾ロビーとしても知られている。同氏は、2月に北朝鮮問題六カ国協議の合意が成立すると「北朝鮮への過大な譲歩だ」と非難。5~6日に行われた米朝国交正常化作業部会についても、「拉致問題が解決するまでは、米政府による北朝鮮のテロ支援国指定解除は交渉すらすべきでない」「米国は拉致問題を見捨てた」などと北朝鮮の核問題をめぐる6か国協議の交渉を厳しく批判した(読売新聞3月11日13時53分配信 )。
これに対して六カ国協議米首席代表のヒル国務次官補は、「言いたい放題の民間人と論争する気はない」と一蹴。その発言の調子の強さは、従来の両者の緊張関係をうかがわせた(しんぶん赤旗」同上)。

これで中東大戦争は回避されるのだろうか。フリーのジャーナリストの田中宇さんは、イスラエルの強硬派のシオニストが「このまま戦争を誘発せずに、アラブ諸国やイランの台頭を容認するとは考えにくい。また、パキスタンの諜報機関のハミド・グル元長官によると、先日パキスタンを訪問したチェイニー米副大統領は、ムシャラフ大統領に、アメリカがイランと戦争することになったら、米軍をパキスタンからイランに侵攻させてほしいと頼んだという。これらのことを考えると、中東大戦争の問題は、まだ決着がついたとは私には思えない」としている(田中宇「中東大戦争は回避されるか」2007年3月8日)。

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