プロメテウスの政治経済コラム

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改憲手続き法案公聴会日程先送り  抗議の声が与党の思惑を挫く

2007-03-10 18:26:10 | 政治経済
自民、公明両党が九条改憲に直結する改憲手続き法案の公聴会の設定を強行できなかったことは、安倍首相が改憲に向けた強硬路線をとればとるほど、国民の反対運動との矛盾を深めざるをえないことを示すものである。 法案審議が始まる前から「22日委員会採決、23日衆院通過」の日程が報道されると、衆院憲法調査特別委の理事・委員の事務所には、連日抗議や要請のファクス、電話がひっきりなしに入った。ある委員の事務所では「セットした五百枚の用紙の束が切れた」との声も聞かれた(「しんぶん赤旗」同上)。

8日強行開催の緊迫した雰囲気のなか、午前九時すぎから特別委員会室には、改憲手続き法案の強行に反対する市民らが多数傍聴につめかけた。理事会室周辺も、野党議員とマスメディア関係者でごったがえした。衆院憲法調査特別委員会では、昨年5月にそれぞれ法案を提出した与党と民主党との間で、法案の「修正」が論議されてきたが、現に提出されているのは原案だけである「修正」案もできないうちに公聴会で国民に何を聞こうというのか、まったく道理がない。国民の意見をまじめに聞く気などはじめからなく、ただ法案の採決の前提として形だけ公聴会を持とうとしているのだ(「しんぶん赤旗」同上)。

中山太郎衆院憲法調査特別委員長(自民党)は8日、同日開催を予定していた委員会が流会となったのを受けて会見し、「今月もまだ(日程には)余裕がある。今日は混乱を避けるために(流会を)決断した」とのべ、引き続き改憲手続き法案の月内衆院通過を目指す執念をみせた。
同席した保岡興治自民党筆頭理事は「一週遅れになったが22日に公聴会開催とし、15日には公聴会の日程だけでなく法案の審議も進めたい。遅れは取り戻せる」などとのべた。
船田元・理事は、与党案と民主党案の相違点はほとんどなくなっていることを強調する一方、公聴会が終われば与党単独修正案を提出する意向を示した(「しんぶん赤旗」同上)。

改憲手続き法案の作成は、国会では、自民・公明と民主党が合作で進めてきた。民主党は憲法改定という日本の進路にかかわる基本問題で、自民党と同じ流れ、違いはない。自民・公明・民主の多数で一気に法案が通される危険性は常にある。
しかし私たちはこの間、改憲勢力の狙うスケジュール、たくらみをくじいて押し返してきたこともよくみる必要がある。改憲のための手続き法案と国会での改憲案作成機関の設置は、改憲勢力の年来の野望であり、衆参に憲法調査会を設置してから7年、衆院に憲法調査特別委員会を置いてからでも1年5カ月、いまだに改憲のための手続き法案も改憲草案も実現できていない。それを阻んできたのは、国民の世論と運動なのだ。
統一地方選、参院選を前にして、昨年12月には「希望としては憲法記念日の5月3日までには国会で法律を成立させたい」といっていた民主党の枝野幸男議員が、「(安倍氏とは)憲法観がまるで違う。議論しても意味がない」と表明。別の民主党議員は、委員会開催・公聴会設定をめぐり与党と「協議に入れない」とした背景について、「大きな問題は手続き法案の議論で安倍首相が前に出過ぎていることだ」といわざるを得なくなっているのだ(「しんぶん赤旗」2007年2月19日)。

ほとんどの国民は改憲手続き法案が安倍政権にやってもらいたい優先課題などと思っていない。国民のなかでは九条守れの声が大きく広がっている。「九条の会」は、すでに六千を突破し、小学校区単位でつくられている地域もあるし、職場での「会」も急増している。自民党県連の元幹部が参加したり、保守系首長・地方議会議長なども加わった「会」も多数である。九条改憲の条件作りを狙う改憲手続き法案は、この国民世論との矛盾を激しくせざるを得ない。いま大事なことは、九条守れの声を改憲手続き法案成立阻止に結集することである。

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