プロメテウスの政治経済コラム

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政府教基法改定案第16条(教育行政)は憲法違反

2006-05-27 19:01:37 | 政治経済
26日の衆院教育基本法特別委員会でのやり取りを通じて、政府与党・教育基本法改定案には、教育への国家的介入を抑制する条項はどこにもなく、改定法案第16条は教育への権力的統制・支配を無制限に可能とするものであり、憲法違反の疑いが極めて高いことが明らかになりました。

改定法案第16条(教育行政)1項は現行第10条を次のように書換えています。
教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない
政府与党は、国民の代表が国会で定めた法律の定めに従って行われる教育は、政府の不当な支配に当たらないとしています。憲法に適合する有効な他の法律の命ずるところをそのまま執行する教育行政機関の行為なのだから、不当な支配ではないという「旭川学力テスト最高裁判決(1976年)」のいいとこ取りです。

26日の衆院教育基本法特別委員会で日本共産党の志位和夫委員長は、旭川学力テスト最高裁判決のいいとこ取りではなく、判決全体の内容を明らかにし、基本法10条を改定しようとする政府の根拠を突き崩しました。

最高裁判決は、「教育行政機関が法令に基づいて行政を行う場合は教育基本法10条にいう『不当な支配』に含まれないと解すべきかどうか」という点について、「教育行政機関がこれらの法律を運用する場合において、当該法律規定が特定的に命じていることを執行する場合を除き、教基法10条1項にいう『不当な支配』とならないように配慮しなければならない拘束を受けているものと解される」「その意味において、教基法10条1項は、いわゆる法令に基づく教育行政機関の行為にも適用があるものといわなければならない」としています。
「間違いないですね」と詰め寄る志位氏。小坂文科相は判決の別の部分をあげて反論を試みましたが、再度追及されて「(判決には)『教育基本法10条1項はいわゆる法令に基づく教育行政機関の行為にも適用があるものといわなければならない』と書いてあるので、その通りだ」と渋々認めました。

政府が最高裁判決から「国は…、教育内容についてもこれを決定する権能を有する」という文言を引用し、基本法10条改定の根拠にしていることについて、判決ではこの一文に続けて「国家的介入についてはできるだけ抑制的であることが要請される」と述べているではないかという志位氏に対し、小坂文科相は当初、判決の関係のない部分を読み上げていましたが、「政党政治において国家的介入が抑制的であることは否定はされない」と述べ、判決が教育内容に対して国家的介入は抑制的でなければならないと示していることを認めました。

「政党政治の下で多数決原理によってされる国政上の意思決定は、さまざまな政治的要因によって左右されるものであるから…教育内容に対する国家的介入についてはできるだけ抑制的であることが要請されるし、殊に…憲法の下においては、子どもが自由かつ独立の人格として成長することを妨げるような国家的介入…は、憲法26条、13条の規定上からも許されないと解することができる」
憲法26条(教育を受ける権利)に基づき、国民各自が、自己の人格を完成・実現するために必要な学習をする固有な権利を有すること、「子どもの教育は、教育を施すものの支配的権能ではなく、子どもの学習する権利に対応し、その充足をはかりうる立場にある者の責務に属する」
これが最高裁判決の結論です。

教育への権力的統制・支配を無制限に可能とする改定法案第16条は、国家は「必要かつ相当と認められる範囲において、教育内容についてもこれを決定する権能を有する」とし、国家の教育権に限定をつけた最高裁判決からしても憲法26条、13条違反です


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