プロメテウスの政治経済コラム

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米艦の民間港寄港急増  着々と進む有事体制準備

2006-05-26 18:12:26 | 政治経済
今年1一5月の米軍艦船による日本の民間港への寄港がのべ16隻にのぼり、すでに昨年一年分(のべ17隻)の水準に近づいています。在日米軍再編に関する日米合意は、米軍がアジア太平洋地域に軍事介入する際などの日米共同作戦計画の検討を拡大すると強調。緊急時の米軍による日本の民間港湾や民間空港の優先使用を定めた有事法制(2004年)を具体化するために「一般及び自衛隊の飛行場及び港湾の詳細な調査を実施」すると明記しています。有事に日本の民間港湾を日米共同軍事作戦に組み込む準備が着々と進められています。

今年の米軍艦船による日本の民間港への寄港は、24日の高知県宿毛湾港へのミサイル駆逐艦ラッセルの入港、26日の同型艦のシャウプが静岡県清水港に寄港を予定しているのを含めて、のべ16隻になります。寄港した港の数は12にのぼります(「しんぶん赤旗」06.5.26)。
米艦船の寄港は最近、太平洋側で目立っています。イージス艦寄港のラッシュです。2月長崎港に「ステザム」、鹿児島港に「ジョン・S・マッケイン」、5月和歌山県下津港に「カウペンス」が寄港。宿毛湾港、清水港への寄港などと続きます。

米軍艦船の寄港は、「国際親善」「乗組員の休養」などの表看板が目的ではありません。港湾が米艦船にとって使い勝手がいいのかどうかを調査することが大きな目的です。米艦船は民間港湾に寄港したさい港湾状況を詳細に調査しデータとして活用しています。反復寄港時にはデータ更新もしています。調査結果は、米太平洋艦隊情報センターの報告書にまとめられ、有事の際の民間港湾利用計画に役立つようにしています。

民間港湾の調査項目は、港湾能力(停泊地の数、深さ、収容能力)、潮流や天候状況、埠頭(ふとう)の深さや長さ、数、燃料補給施設、荷役労働者、給水施設などから、周辺陸地の医療施設、食料品、ごみ処理、バー・レストランなどにおよびます

なぜ、いま、民間湾港に手を伸ばすのか。2月に米国防総省が公表したQDR(=「四年ごとの国防計画見直し」)は、中東、中央アジアなどの動きを「流動的」「懸念」とみなすとともに、中国について「利害共有者」(ステークホルダー)になるようすすめる一方で、「いずれ伝統的な米国の軍事的優位を相殺しかねない」と危機意識を表明しています。米軍は、こうしたアジア太平洋地域を念頭においた軍事戦略のために、日本の太平洋側で自由に使える基地の確保を狙っているのです。九州をはじめ四国の民間港湾を重視するのは、世界のどこでも迅速に米軍“殴りこみ”部隊を送り込む足場をより多く確保するためです。

米イージス艦「ラッセル」(ミサイル駆逐艦、母港ハワイ・パールハーバー、8315トン)が24日午前8時半、予定を一日遅れて高知県宿毛市の「宿毛湾港」に接岸しました。
艦内で会見したジェームズ・W・キルビー艦長は「米国が日本やアジアにいかに『コミット』しているかを示すことが、入港の第一目的だ」としました。「コミットするとはどういう意味か」との質問に艦長は、「永続的に続く日米同盟の中で、日米が共同して、グローバルな世界に展開するという意味だ」と説明。米の世界戦略に日米一体で関与しようという意図を隠しませんでした。

2004年の有事法制によって、首相が「武力攻撃事態」と宣言すれば、「地方公共団体」は「必要な措置を実施する責務を有する」(武力攻撃事態法第5条)ことになります。たとえ自治体長が港湾の軍事利用に反対しても首相が代執行することによって、港湾が軍事利用される(武力攻撃事態法案第15条)仕組みが作られました。民間港湾や民間空港は、米軍や自衛隊の出撃基地と同時に兵站基地と化すことになります。
民間港湾を戦争の足場にしようとする動きに対し、反対の声を広げることが求められています。





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